She, in the hazeの音楽を聴くと、あまりに美しくて、あまりに切なくて泣きそうになる。……こんな感覚は初めだ。5月17日に1stEP「Paranoid」をリリースするということで、全曲の作詞作曲を手がけるyu-ki(Vo)にインタビューを敢行した。
彼は話す「今は生きていて苦しいし、満たされないって状況だから音楽をやっている」と。
彼は話す「僕は自分が幸せになった時に音楽を引退すると思う」……と。
なぜそこまで、孤独や苦しみと戦い続けなければならないのか? その真意に迫った。
text_SHINKAI
Edit_司馬ゆいか
学生時代から歪んでいたんだと思います
――前作「Mama said」の反響はいかがでしたか?
yu-ki : 初の全国流通盤ということで、今まで知らなかった人にも聴いてもらえたのは「良かったなあ」と思いました。
――意外な反応ってありました?
yu-ki : She, in the hazeを聴いて「エレクトロっぽい」という人もいるし、「シューゲイザーっぽい」という人もいて、人それぞれ自由に汲み取ってくれているんだなって感じましたね。
――今作の1stEP「Paranoid」には、どんなテーマが込められているんでしょうか?
yu-ki : 特に全体のテーマはないですね。1曲1曲にはありますけど、今出したい曲を出しました。
――なるほど。前作では実在する連続殺人犯をモチーフに楽曲制作をされたそうですが、今回もモデルとなった人はいるんですか?
yu-ki :
――可哀想?
yu-ki : 劇中に背中に大きな刺青が入っている人が登場するんですけど、孤独な感じというか、そんな風に受け取りました。
――勝手にShe, in the hazeの音楽ってレクターシリーズにある、不穏な雰囲気を感じてたんですよ。やっぱり、お好きなんですね?
yu-ki : そうですね。あのシリーズは一応全部観てます。サイコ系の映画は好きだと思いますね。
――曲の題材ってどこから見つけるんですか?
yu-ki : 映画をヒントにすることもありますし、本もあります。あとは、実際に起きているニュースを見て、自分で感じ取ったものを物語にして曲を作ることもあります。
――歌詞だったり、過去のインタビューを読んでいると表裏一体の捉え方しているなって思ってて。「楽しいことは楽しくないことを知っているから」とか、「幸せを感じるのは不幸なことを知っているから」、みたいな。そういう視点はいつから?
yu-ki : もしかしたら、学生時代から歪んでいたのかもしれません。なんか、学校って1つの社会じゃないですか。集団の中で自分の立ち居地を探す必要がある上で、周りをしっかり見ないといけない。小さい頃から冷静に人を見ていたりとか、物事を斜めに見ていたと思うので多分そこから根付いていると思います。
――学生時代から人前に立って、演奏をしてたんですか?
yu-ki : いや、してないですね。中学生の頃に友達からギターをもらって、1人でギターを弾いてるだけでした。
――当時はどんな音楽を弾いていたんですか?
yu-ki :
――
yu-ki : それは中学1年生の頃。ギターを持つよりも前ですね。
――中学生の頃って歌モノの分かりやすい音楽に惹かれると思うんですよ。特にギターをやっていないなら尚更。どうしてPANTERAに惹かれたんですか?
yu-ki :
自分が幸せになった時に音楽を引退すると思うんですよ
――今作についても話をお聞きしていきますね。まず1曲目の「Paranoid」はどんなことをイメージしたんですか?
yu-ki : 『レッド・ドラゴン』そのものなんですけど、虐待されて愛することも愛されることも知らないまま育った子供が悪魔に魂を売って、それで自分の人間性を保っていたと。ある時、自分を1人の存在として認めてくれる人物が現れて、初めて愛というものに気付くんです。でも、悪魔に魂を売ってしまったので、人間として1人の女性を愛せない主人公は葛藤するわけです。「じゃあ、その女性に対する愛はなんだろう」って思った時、自分が彼女の前から姿を消すことだった……という悲しみの部分を描きました。
――3曲目の「Calling」はどんなことを意識して作ったんですか?
yu-ki : すごくピュアな若いカップルを題材にして書きました。彼女が死んでしまって、残された主人公が彼女の幻影を追いかけるって内容で、生きている間は2人で1つだったのに、1人になってしまったことで「自分の居場所はここじゃない、好きな人の所へ追いかけに行くよ」っていう。
――「Calling」、「Paranoid」もそうですけど、She, in the hazeの曲に出てくる主人公って破滅的な一途を辿るじゃないですか。ハッピーエンドを求めたくなる時はないですか?
yu-ki : ……どうですかね。僕は自分が幸せになった時に音楽を引退すると思うんですよ。今は「生きていて苦しいし、満たされない」って状況だから音楽を続けているのかもしれません。ハッピーなら、その現実だけで満足できるので曲を作る気もなくなるし。ただ、僕にとっては全ての曲が破滅的な一途を辿っているわけではない気がします。表面上ではそう感じるかもしれませんが、ある意味それがその主人公にとってはハッピーエンドである気もするからです。幸せの形やゴールの場所はその人によってそれぞれですから。
――曲を書くことで、満たされていない穴は埋まってますか?
yu-ki : どうなんですかね? 埋まってるかは分からないですけど、もしかしたら曲を作ることで減っていってるかもしれないですね。
――では、2曲目の「Doubt」はどんな曲ですか?
yu-ki : 物事って必ず二面性があると思うんですよ。表の良い部分だけを見て、裏を知らないと結局やられる側で終わってしまう。だから、あえて表だけを見て信じ切って墜落していく主人公を描きました。二面性というところでかけているわけじゃないですけど、それが表向きのコンセプト。
――表向きって?
yu-ki : 裏にもコンセプトがあるんですけど、それは言わないです。自分だけに持っておきたいことなので。
――「Doubt」の歌詞を読んで、狂気的な部分を感じました。本人を前に恐縮ですけど……サイコな部分があるなって
yu-ki : そうかもしれないですね(笑)。
――自分でも自覚してるんですね(笑)。
yu-ki : 自覚はありますけど、何をサイコと呼ぶかだと思うんですよ。自分はShe, in the hazeの作品って見方によっては意外とまともだと思ってて。むしろ、心にもないのにキレイごとを満面な笑みで歌うことの方がよっぽどサイコに感じます。人の感情や今ある世界は、決してキレイごとで出来上がっていないと思うので。
――確かに、そっちの方が人間味はありますよね。
yu-ki : 人間ってそんなもんだと思うんです。元々、汚いし醜い生き物だと思うので。そこをキレイな鎧で隠す方が僕は「怖いな」って思います。
――4曲目の「Teddy」はよくライブの最後に演奏したり、前作のアルバムでも収録されてましたよね。これはどんな曲なんでしょうか?
yu-ki : 緊張が唯一、解ける曲だと思います。解放されるような曲なので、やっぱりそれを前半には持ってこれないというか。
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