田名網敬一氏の未発表コラージュ作品集『Dream Fragment(夢のかけら)』と『Fragrance of Kogiku(小菊の香り)』が現在発売中です。
1968〜’70年に制作された未完作品を修復。50年の時を経たコラージュ作品集
田名網敬一氏といえば、横尾忠則氏や篠原有司男氏らと並び、’60年代のポップ・アートに大きな影響を与えた巨人。1936年に東京で生まれ、「編集」というデザインの方法論を用いてアニメーション、実験映画、絵画、立体作品などあらゆるメディアやジャンルの枠を横断した作品を生み出し続けています。80歳を超えた現在もそのインスピレーションはとどまることを知りません。
今回ご紹介するコラージュ作品集『Dream Fragment(夢のかけら)』と『Fragrance of Kogiku(小菊の香り)』は、昨年の11月16日に東京・表参道のGALLERY360°で行われた『DREAMFRAGMENT』に併せて刊行されたもの。
2012年に、世田谷にあるご自身の倉庫から発掘されたコラージュ作品と未完の作品たち。それらは1968〜’70年にかけて制作されたものだったそうです。それらをスタジオに持ち帰った田名網敬一氏は、1点1点を検品、剥がれた部分を再度糊付、破れた箇所は持ち帰った素材の中から選び貼り直し、およそ3年かけて修復。50年の時間を飛び越えて2冊のコラージュ作品集が完成したというわけです。
「切り抜かれたどんなちっぽけな写真にも、歴史的背景や、その写真が内包する固有の意味が存在する。そして、まったく異なる歴史を背負った写真と対比することで、想像外の異世界が出現する。コラージュする醍醐味は、ひとつの画面で間断なく繰り返される無数の対立や戦いや調和なのだが、ときとして無残な荒廃のまま放置することで、より説得力のある画面が出現する場合もある」(『Dream Fragment(夢のかけら)』より)
当時のアメリカと日本の大衆文化が凝縮されたあらゆる印刷物を切り抜き、1枚の画にコラージュすることで生まれる唯一無二の世界は、曼荼羅的であり宇宙的。完全数量限定の作品集、なくなる前に買うべきですよ。ちなみにこれらコラージュ作品の多くは、MOMA、ウォーカー・アート・センター、シカゴ美術館などの著名な美術館への収蔵が決定しているそうです。
田名網敬一 プロフィール
たなあみ・けいいち / 武蔵野美術大学卒業。1991 年より京都造形芸術大学教授。1960 年代からメディアやジャンルの境界を横断して、アニメーション、実験映画そして絵画、立体作品まで幅広く手掛け、現代の可変的なアーティスト像の先駆者として世界中の若いアーティストたちに大きな影響を与えている。特に、アンディ・ウォーホルとの出会いに触発され、現在に至るまで「編集」というデザインの方法論を用いながら、「アートとデザイン」、「アートと商品」、「日常と美の関係」といった今日の現代美術が抱える主要な問題に対して実験的な挑戦を試み続けている。
2015 年、アメリカとイギリスで開かれた二つの大規模な展覧会に招待され、ようやくその重要性が本格的に認められる。
アメリカで開催された「International Pop」展は、ミネアポリスにある現代美術館、ウォーカー・アート・センターが主催し、その後、ダラス美術館、フィラデルフィア美術館へと巡回したポップ・アートの大回顧展で、ウォーホルやリキテンシュタイン、ジャスパー・ジョーンズらの歴史的傑作とともに、田名網が1960 年代半ばから70 年代半ばにかけて制作した十数点ものコラージュ作品が展示された。また、ロンドンのテート・モダンで開かれた「The World Goes Pop」展では、田名網が70 年代に制作した2 本のアニメーション作品《COMMERCIAL WAR》(1971 年)と《CRAYON ANGEL》(1975 年)が展示され、ポップ・アートの英米以外への影響を示す作品として高い評価を得た。
2015 年から16 年を振り返ってみるだけでも、「Collages」展(2015 年、Corbett vs.Dempsey、シカゴ)、「空中回廊(1975‒1993)」展(2015 年、NANZUKA、東京)、「Visible Darkness, Invisible Darkness」展(2016年、Sikkema Jenkins & Co.、ニューヨーク)、「New Paintings」展(2016 年、Karma International、チューリッヒ)などの個展をこなし、「Unorthodox」展(2015~16 年、ジューイッシュ・ミュージアム、ニューヨーク)、「Passion:Fan Behavior and Art」展(2015~16年に巡回:クンストラーハウス・ベタニエン、ベルリン/クンストハウス・ニュルンベルク/ルートヴィヒ現代美術館、ブタペスト)、「MYSTIFIERS」展(2016 年、国立現代美術センター、モスクワ)など、世界各地の美術館の展覧会に新旧の作品が招待された。
また、ここ数年、ニューヨーク近代美術館[MoMA]、ウォーカー・アート・センター(ミネアポリス)、シカゴ美術館、M+(香港)、ナショナル・ポートレート・ギャラリー(ワシントン)、ハンブルガー・バーンホフ現代美術館(ベルリン)といった名だたる著名美術館が、新たに田名網作品の収蔵を決めている。今年10月スイスのジュネーブで開催された国際アニメーション映画祭で「笑う蜘蛛」が審査員特別賞を受賞している。
出典:GALLERY360°
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