(インタビュー直後のSKY-HIによるMEETIA独占コメント!)
SKY-HIの勢いが止まらない。
7月に『ナナイロホリデー』、10月にSALUとの共作『Say Hello to My Minions』をリリース。そして12月14日にはシングル『Double Down』を発売。年明け1月には傑作『カタルシス』に次ぐ、待望のサード・アルバムの発売が控える。
新曲の発売に先駆け、MEETIAでは波に乗るSKY-HIを直撃。
ギャンブル用語をタイトルに据えた、勝つためのシングル曲『Double Down』の話題を中心にインタビューを行った。
Interview&Text_ARATO KUJU、SOTARO YAMADA
Edit_ARATO KUJU、MICHIRO FUKUDA
ロックフェス仕様、ロックフェスで勝つためのシングル曲
――新曲の『Double Down』ですが、タイトルの「ダブルダウン」はギャンブル用語で“倍賭け”って意味だと思います。“賭け”をテーマに制作しようと思った背景には何がありますか?
SKY-HI:いくつかあって。ダブルダウンってとある国のカジノで、ブラックジャックやってたら隣に座ってたお金持ちに教えてもらったんですけど(笑)。もともとギャンブルってあんまり好きじゃなくて。麻雀とか将棋とか、そういうのはすごい好きなんですけど。だからカジノ行ってもいくらって決めて、やって。残ってたら最後全部出して、ゼロにするまで帰らない、っていう風にして帰る。
ダブルダウンってベットがダブルで、ダブルダウンなんですけど、10ドルを賭けて負けたら、20ドルを次賭けてもう一回やる。で、負けたら40ドル。倍にして賭けていってってやると、理論上は1回勝ったらトントンだから、負けがないっていう生兵法。タブーでもある兵法なんだけど、それのことをダブルダウンって言うらしくて。まあ、理論上可能だけど絶対不可能な兵法として。
で、俺自身がそれだったなと思って。負けるまでやめなかったから、結果いくつか勝てたっていうか。今年の夏フェス、特にJAPAN(ROCK IN JAPAN FESTIVAL)とかは、3年前テント(DJ BOOTH)で呼んでもらって、その時はやっぱりいろんな色眼鏡がすごくて。俺のことを元から知ってる人は、「ああ、AAAが何かやってるんでしょ」ってもう来てくれないし、ライブ始まっても、「YOYOチェケラッチョ系の人が何かやってるっぽいね」みたいな感じで結局来ないし。『愛ブルーム』を最後にやった時にやっとちょろっとお客さん来たくらい。まあだから、フェス用語で言ったら「惨敗」みたいな。芳しくはない結果で、そうなるとやっぱり3年くらい遠ざけられるじゃないですか、そういうシーンからは。それでもそこに対する挑戦っていうのは意識としてはずっとあって。で、あれやこれやっていう試みを経て、今年のアルバム、『カタルシス』と、そのあとのホールツアーで音楽業界の風向きっていうのがちょっと変わって。オセロみたいなもんで、一個ひっくり返るとこんなにコロコロいろんなところが変わっていくのかっていうのが今年だったんですけど。まさに、倍賭けで少し当たった状態だったんだけど、それでやっと今年もう一回JAPANとかにも呼んでもらえて。それで自信満々で臨むところなんだけど……。
4月に喉の手術をして、それの影響で夏くらいまで引っ張っちゃって。ジストニア、精神的な影響で声がすぐに裏返っちゃう。で、夏くらいまで長引いちゃって。8月4日に出たa-nationは自分的には納得できなくて。で、6日がJAPANだったから、「いやいや、明日JAPANだけど」って。ずっと一緒にやってきたスタッフと、「さて、我々は戦い続けてやっと3年前のリベンジの舞台に明日立てるけど、これで明日俺ボロボロだったらどうする?」って言ったら、「そうしたらもう3年頑張るしかないね~」って言われて(笑)。
――(笑)
SKY-HI:「本当だ、それでいいや」って思って。それで何か開き直ってステージ立って。そしたら不思議と声がちゃんと出た。とは言え、クオリティは今の俺からすると、まだまだ出だしだなっていう感じなんだけど。でもちゃんと出たっていうのはでかくて、結構衝撃的で。綱渡りみたいなところだったけど、よくやって来れたなと思ったのと、勝つまでやめなかったから、負けたってことになんねーなと思って。で、その時に編集長とかと話して、「冬(COUNTDOWN JAPAN)もお願いします」って一応言ってくれたから、口約束だったかも知れないけど、「言ったな!」と(笑)。だから冬も出る気満々で、お呼びかかったからよかったんですけど。次に冬もう一回出るまでに今の状態じゃなくて、直近のシングルでそこに勝負賭けにいこうって。ロックフェス仕様、ロックフェスで勝つためのシングル曲を作って、そこでもう一回ダブルベットしにいこうって。それで作ったのが『Double Down』。
(『Double Down』公式MV)
――歌詞の中に、「一番高いオッズからいつだってひっくり返してきた」というフレーズがあります。ファーストアルバムのコピー「さぁ、この人生(ゲーム)をひっくり返そう」を連想しました。“ひっくり返す”とはご自身にとって大事なテーマなのでしょうか。
SKY-HI:大事なテーマなんですけど、その理由には2個あって。1個は、ひっくり返さざるを得なかった、っていう。スタートがもうプレーンな状態でやれないし。今後もそうで。もうしょうがないから、それは。いいことも悪いことも含めて、「AAAとしてもやられてて」みたいな話とか、もしくはヒップホッパーって言っても、「AAAなのに頑張ってる」とか、「AAAなのに、あのZeebraも認めていて」とか「あのKREVAも」とか。もういろんな偏見と色眼鏡がずっと付いてくるんですよ。もうでもしょうがないじゃないですか。俺は、それこそ閃光ライオット出身、みたいな子たちとは戦えないんですよ。いろんなバイアスが掛かって掛かってしょうがないから。それでやめるってなったら、ちょっと命を絶って、来世で……(笑)。まあ、でもそれほど愚かなことはなくて。全然いまの状態で戦って、それはひっくり返せばいいだけで。で、ひっくり返すとなったらオッズ高いから、リターンでかくて、その分。だから全然嬉しいことだと思ってる。
もうひとつは、そうやってきたからこそ、人に歌える角度が増えたかな。ファーストアルバムとか、セカンドアルバムもそうなんだけど、「死にたい」を「生きててよかった」にひっくり返そうと思って作ってたから。そういう価値観を意図的に倒錯させるっていうか、ネガティブであることを逆に利用するとか。なんかそういうのって本当に実生活に応用できることもたくさんあって。普通の主婦がね、あんまりにも家事が嫌いで、洗濯ネット発明したりとか(笑)。ともすると、人によってはデメリットと捉えられかねないモノとかをメリットでしかないモノだって自分で決めるところからひっくり返しが始まっていたから。それはやっぱりおのずと、自分が変わると接する人の見る目が変わるから。そうなると接する人が変わるし。接する人がどんどん変わってったら自分がいる社会が変わるし。こういう風にいろんなメディアが扱ってくれるとか、ステージに立つとか、そういう存在でいた場合ってそれの規模が少しだけ広がるっていうか。触れる社会の人数が多い人数になるって可能性を持っているから。その分たくさんのひっくり返りを見てきたし。本当にいい意味で言うんだけど、たくさんの手のひら返しをたくさん見てきたし。本当にいい意味なんだけど(笑)。嬉しいことだと思ってるし。手のひらが最初返ってないのはしょうがないから。だから、人に対してメッセージを伝えるときの根っこの部分のひとつとして、人が持ってるネガティブなバイブスをそのまんまポジティブにひっくり返す。ネガティブの中にしかポジティブは絶対ないから。無条件でポジティブってあんまりないよね、大人になっていくと。だから、ネガティブを結果的に愛することを自分はできたし。自分に何かを求めてくれる人、音楽だったり言葉を求めてくれる人に対しては、それがどうやったら、”俺の言葉がリスナーの言葉になるか”っていうのを考えていく。すると、そういうテーマみたいなのがついてまわるっぽいですね。
――『ナナイロホリデー』に続き、今回もMVでギターの演奏を披露されていました。他にもバックバンドの方がホーンやシンセサイザーを演奏しています。人の手で演奏することへのこだわりを感じるのですが、いかがでしょう?
SKY-HI:そうですね。今回(の新曲)にもあるんだけど、次のアルバム自体に生命力とかパワー、オーガニックな質感や「人が生み出すモノ」みたいなものが全体にあるから。サウンド面ではそういう感じ。
――シングルに収録されている『Dungeon Survivors』についてもお聞かせください。この曲はやはり『フリースタイル・ダンジョン』を強く連想させる仕上がりですね。
SKY-HI:いや、連想もなにも、主題歌。完全に献上曲ですもん。自分の曲っていう意識すら薄いです。『Enter The Dungeon』のときとかは、自分の曲でもあるということを大事にしてたけど、season2以降の『Welcome To The Dungeon』と『Dungeon Survivors』は、もうある種自分の曲から切り離して考えてるっていう。リスペクトも込めて。『Enter The Dungeon』を頑張ったおかげでずっとお話も貰えてるっていうのは嬉しいんだけど、貰えている以上はちゃんとそっちに完全に寄せて。自分の曲の中で合いそうなのを渡す、っていう考え方は一切ない。『フリースタイル・ダンジョン』のための曲を書く。だから、『Welcome To The Dungeon』でモンスターの名前を歌詞に入れ込んだりとか。『フリースタイル・ダンジョン』のことでしかない曲をちゃんと書いて、それをちゃんと献上するのが俺の番組をやってる人たちに対するリスペクトとか。あと、必要としてくれていることに対する感謝とか。
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