ネットを中心に話題となり、2016年9月に両A面シングル『スターダスト/宿り星』でメジャーデビュー、12月にはCOUNT DOWN JAPANにも出演した2人組音楽ユニット「イトヲカシ」。そんな彼らが2月8日、早くもメジャーデビュー2作目となる両A面シングル『さいごまで/カナデアイ』をリリースします。『さいごまで』はネスレ“キットカット”2017年度受験生応援ソング、そして河合塾2017年度CMタイアップソングにも追加決定ということで、そちらを知っている読者の方も多いかもしれません。今回ミーティアでは、その制作秘話から、2人の受験にまつわる思い出、そして楽曲制作の意外なルーツまで、幅広く聞いてまいりました!
Interview_Sotaro Yamada、Arato Kuju
Edit_Milk Takanashi、Sotaro Yamada
https://youtu.be/T7ndvA1gErM
(『さいごまで』MV。素晴らしい未来へ!)
イトヲカシ・インタビュー
――9月にメジャーデビューされて約半年経ちますが、デビュー前後でなにか変化はありましたか?
伊東歌詞太郎(以下 歌詞太郎):変化したことと、変化しないことがあると思います。いろんな方から「一緒にやろうぜ」と言ってもらえる場面が増えたことで、やりがいや責任感がより芽生えて、「しっかりみんなでイトヲカシをでっかくしていこうぜ」という気持ちになったのは変化です。一方で、メジャーデビューする前から「デビューしても基本的なことは変わらないんだろうな」という気持ちも持っていたんですよ。もちろん、自分たちの力だけではなくて色々な人が関わって下さるということは想像していました。でも僕らはミュージシャンとして、当然、良い曲を作って良いライブをしなきゃいけないわけですよね。この点においては変わらないですね。
宮田“レフティ”リョウ(以下 レフティ):メジャーデビューをきっかけに、今まで僕らの音楽に触れてこなかった人たちにも聴いてもらえるようになりました。リリースイベントで「初めて聴いたんですけど好きになりました!」って言ってもらえたりとか。こういう機会が増えたのは大きかったですね。もちろんこれまで付いてきてくれたみんなも大事ですし、今は、その輪をどんどん大きくしていきたいという気持ちです。
――今回のシングル『さいごまで/カナデアイ』は、前回の『スターダスト/宿り星』と同じように両A面シングルです。どのような過程を経て作られた楽曲でしょうか?
歌詞太郎:両A面シングルについては、一生そうしていくと思います。僕らは自分たちの楽曲を全部愛しているので、順位が付けられないんですよね。
――順番的には『カナデアイ/さいごまで』でも良かったですか?
歌詞太郎:そうですね、むしろBってなんだ!?っていう(笑)。だから今後も両A面で出したいですね。『さいごまで』は、ネスレ“キットカット”2017年度受験生応援アーティストに任命されて作らせていただきました。『カナデアイ』は、前回TVアニメ『双星の陰陽師』のエンディングを担当させていただいたんですけど、今回はオープニングソングに選んでいただいて。『さいごまで』も『カナデアイ』も、その趣旨を輝かせるためにある曲だと思って、全力で作らせていただきました!
いじめられた経験は宝物
――『さいごまで』は受験生への力強い応援ソングです。歌詞太郎さんは塾講師の経験もあるそうですね。2人の受験にまつわるエピソードをお伺いしたいです。
レフティ:僕は実は、受験してないんですよね。いわゆる「お受験」として幼稚園受験を経験しました。だから本当の意味では受験生の気持ちを体感したとは言えないかもしれない。でも、受験っていろんなことに置き換えられると思うんですよね。受験というのは試練であって、試練というのは人生で何度も訪れるもので。そういう時、僕はいつも音楽に支えられて来ました。ほんと音楽少年だったんですよね。だから自分たちもそういう存在になりたいなと思います。ちなみに一番聴いてたのは、リアルタイムじゃないんですけど、尾崎豊さんだと思います。図書館でCD借りて聴いてました。『Forget-me-not』とか『15の夜』が特に好きでした。
歌詞太郎:僕は中学受験を経験しました。というのも、小学校の6年間でひどいいじめにあっていたんですね。だから「絶対に他の学校に行ってやるんだ!」いう気持ちが強くあって、それで受験しました。いじめにあっていた小学校の6年間はずっと音楽に支えられてましたね。昼休みにはいつも音楽準備室のピアノの下に逃げていて。そこが学校内で唯一鍵がかかる部屋だったからです。外にいると目について、標的にされてしまうので……。そこで、音楽準備室内にあった童謡集に載っていた『グリーン・グリーン』とか『小さな木の実』とかを、楽譜を見て歌ってたんです。それが音楽との出会いでもあります。
ただ、今となっては、いじめられた経験は僕にとっての宝物だと思っています。いじめられた人の気持ちをわからないまま生きていたら、もっと人に優しくできない人間になっていたと思うんです。その思いは塾講師時代にも活かされたと思います。受験生自身が自分で辛い経験を乗り越えないと、その子の人生が止まっちゃう。そんなふうに考えていて、その後押しを講師として出来ないか探っていました。だからタイアップのお話が来た時は「しめたっ!」って気持ちになりました(笑)。
あと、路上ライブがイトヲカシにとっては凄く大切な活動なんですけど、受験生ぐらいの年齢の子がメインで来てくれるんですよね。その場で「受験生なんです~!」って言われると「マジかよ~あと2か月だよ本番~!」みたいに喋ったりしますね。それはすごく楽しいです。それでその子が頑張って良い結果出したら、もう僕ら万々歳です。
必要なものはその時に与えられる
――中学受験をしたから歌詞太郎さんとレフティさんは出会えたわけですし、その点でも受験は大きい出来事ですね。
歌詞太郎:やっぱり大きかったですね。僕がそこの学校を受験しないで他の学校行っていたら、レフティとは会っていなかったので。だからやっぱりいじめられてよかったなって。結局、巡り合わせだと思います。先ほども言った通り、いじめにあったことで人の痛みを知ることが出来たし、それで受験をすることが出来たので。必要なものはその時に与えられるんだと思います。何も与えられていないと感じる時は、まだその時期じゃないのかなって。ここ2年ぐらいは本当に強くそう思います。ちなみにレフティと再会したのは2012年なんですが、すぐにイトヲカシの活動は出来なかったんですよ。2人とも前向きに「もっと成長してから一緒にやった方が良い」「いつかじゃぁそのタイミングまでお互いの活動を頑張ろう」と思っていたので。
レフティ:2人とも活動自体はしていたんですけど、こういう形でスタートを切るタイミングっていうのはまだだねという話をしていました。再会については、音楽の神なのかわかんないですけど、感謝ですね……。
――もう1つ勉強の話なんですが、歴史は好きですか?
レフティ:歴史?
歌詞太郎:あっ! 名前ですか?
――そうです!(※歌詞太郎という名前は、新撰組の参謀であり文学師範であった伊東甲子太郎という人物に由来する。……ここはたぶん受験には出ません)
歌詞太郎:そうなんです。大学に入ってからめっちゃ本を読むようになって、歴史が好きになりました。
――ちなみに、どういう本を?
歌詞太郎:僕ねえ、実用書以外は全部読むんですよ。純文学も大好きです。夏目漱石をアーティストとして一番尊敬しているんです。
――おお! アーティストとして一番尊敬しているのが夏目漱石とは、少し意外な気がします。漱石のどんなところが好きなんですか?
歌詞太郎:それは『こころ』っていう作品に尽きますね。すべての人が良いと思う作品なんてない、みたいなことってよく言われるじゃないですか? でも、100点満点に近いものを出しちゃった芸術作品が世の中にはいくつかあると思ってるんです。その1つが漱石の『こころ』だと思うんです。『こころ』には人間の心の闇が見事に描かれているんですよ。
――他の漱石の作品と比べても、『こころ』が1番ですか?
歌詞太郎:『こころ』がやっぱり1番ですね。漱石は、描きたいものがはっきりとしています。他にも川端康成や宮沢賢治も好きだなぁ~。文学はイトヲカシの音楽にすごく影響を与えています。
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