『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』で脚光を浴び、この時代のフィメールラッパーとして一躍トップランカーに躍り出たちゃんみな。その後、音源のリリースだけでなくTV出演なども精力的に行い、若い世代から圧倒的な支持を集め続けている。2月1日には配信シングル『FXXKER』でメジャーデビューし、3月8日にはついにメジャー1stアルバム『未成年』をリリースした。
そんな「今キテる」JKラッパーちゃんみなにミーティアが突撃! アルバムのこと、メジャーデビューのことなど、色々な話を聞いて来た。
ついに登場したFrom Japanの本物ラッパー、世界一Microphoneが似合うPrincessのインタビュー!
Interview & Text_Sotaro Yamada
Photo_Hiroyuki Dozono
ちゃんみなメジャー1stアルバム『未成年』
――1stアルバム『未成年』には、多ジャンルに渡った曲が収録されています。『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』やこれまでに発表してきた音源などからイメージされる「ちゃんみな像」を良い意味で裏切るアルバムで、すごく面白いと思いました。
ちゃんみな:本当ですか!? 嬉しい。
――アルバム全体としてはどういうことを心がけて作ったんですか?
ちゃんみな:今本当にやりたいことをそのまま詰め込みました。なので、私の「今」が全部詰まってる。しかも結構短期間で作ったので、よりぎゅっと詰まってると思います。
――個別の曲についていくつか聞いていきたいのですが、まずは『FXXKER』について聞かせてください。この曲では、「FXXK」という言葉にこだわったと伺っています。それはなぜでしょう?
ちゃんみな:はじめは「FXXK YOU」って言葉を入れようと思ってたんです。でも「さすがにそれは……」って言われて「FXXKER」にしたんですけど(笑)。
この「FXXKER」っていう言葉は、私の意思表示です。メジャーに行くことに関して、ファンの方から心配の声がたくさんあったんです。「メジャーに行ったら丸くなるんじゃないか」とか「本当に作りたい曲が作れなくなるんじゃないか」とか。
でも私自身は、メジャーに行くからって何か大きく変わるわけじゃない。メジャーインディー関係なく、これからも私らしく、私自身がやりたいことをやる。だからこういう言葉だってどんどん言っていくぞと。そういう意思を、この「FXXKER」という言葉に込めました。
――「FXXKER」という言葉を、意味というよりは象徴として使っているわけですね。
ちゃんみな:そうです。だからファンのみんなは安心してほしい。メジャーデビューしても、私は私のままだから。
――「FXXK」という言葉は、文脈によって意味が変わる言葉ですよね。
ちゃんみな:そうなんですよ! 「FXXK」っていう言葉にはいろんな意味があります。もちろんFワードだけど、「最高!」とか「すごい!」って意味だってあるし。
――「最高!」という意味だと考えて『FXXKER』という曲を見ると、また別の解釈もできますね。
ちゃんみな:そうなんです。私にとって、ミュージシャンになることは子供の頃からの夢でした。この人生でずっと抱いていた夢がやっと叶う、それって「最高!」なんですよ。だから『FXXKER』は、自分で自分を祝福する歌でもあるんです。
さらに、よく聴くとわかるんですけど、いろんな声で「FXXKER」って言ってるんですね。すごく低い声を使ったりしてる。これにも意味があって、いろんな人が「最高!」って言ってるっていう。
――リリックの最後の部分は「やっと日本から出てきた From Japanの本物」ですが、リスナーが「本物」の到来を「FXXK」=「最高!」と喜ぶ、そういう意味ですか?
ちゃんみな:そう、その通りです!
――二重、三重の意味が隠されていると。つまり『FXXKER』という曲は、ちゃんみなさんのアティテュードを示す曲であると同時に、夢を叶えた自分を祝う曲でもあり、「From Japanの本物」の登場を祝う、喜びの曲でもあるわけですね。
(ちゃんみな『FXXKER』MV。インタビューを読んだ後にもう一度この曲を聴いてほしい)
ヒップホップとは「姿勢」や「精神」のこと
――『FXXKER』のMVは、ちゃんみなさん自身で内容を考えたと伺いました。二人のオネエダンサーが非常に印象的ですが、この二人を起用したのはなぜですか?
ちゃんみな:まず、そもそもオネエ系の人が好きなんですよ。友達にもそういう人が多くて、純粋に好きって気持ちがあります。それとダンス面で言えば、オネエの人には、男にも女にも出せないカッコ良さやセクシーさがあるんですよね。それが今回は欲しかった。私が女一人で男のダンサーたちに囲まれるのも、私が女ダンサーを引き連れてるような感じになるのも、どっちも嫌だった。もっと強いインパクトが欲しくて、だからこの二人にお願いしました。結果として、すごくインパクトがあって、かつ、バランスの取れた、素敵なMVになったと思います。
――MV冒頭で、ちゃんみなさんが手錠をかけられているのはなぜですか?
ちゃんみな:実はMVの内容は、ジャケット写真から想像を膨らませていったんです。このジャケット写真って、刑務所に入所する時の写真ですよね。受刑者番号のプレートを持っていて、後ろの壁の数字は身長を表してる。これをうまく使えないかなあと。
そう考えた時に、ヒップホップの人がメジャーになった時によく言われがちな言葉を思い出したんです。それは「メジャーになるのは、牢屋に入れられるようなもんだ」って言葉です。
ヒップホップって元々アンダーグランドな文化とつながりが深いし、放送コードに引っかかるようなリリックも結構多いじゃないですか。そういうのはメジャーではなかなかやりにくい。そうすると本当に作りたい曲が作れなくなる、だから「牢屋に入れられるようなもんだ」と。
この言葉を思い出して、「メジャー」=「牢屋」っていう図式を使いました。
――でも、その手錠はすぐに外されると。
ちゃんみな:それが大事なところです。さっき話した、「FXXKER」って言葉を使う理由と同じなんですけど、これが私の意思表示ですね。
このMVって、結構細かく作ってあるんですよね。ジャケット写真もMVの中で使ってるし、指紋付きの身分帳(受刑者の個人記録)を作ったりとか。
――MVのラストでその身分帳を燃やしますよね。これもすごく象徴的です。
ちゃんみな:この曲はすべてが私の意思表示ですね。
――他の曲についても聞かせてください。『She’s Gone』は、自分の内面をすごく正直に打ち明けた自伝的な内容だと思いましたが、ちゃんみなさんのアルバムにこういった曲が収録されるのは、かなり意外でした。
ちゃんみな:これは自分の過去を振り返って、実際にあったことや思ったことを赤裸々に書いた曲です。
――「自信が持てなくて強がりで怯えてたLittle Girl」という歌詞もありますね。『未成年 feat. めっし』や『Princess』などの音源や、『BAZOOKA!!! 高校生RAP選手権』はじめその他のTV番組などから想像するちゃんみなさんのイメージとは、かなり離れた曲です。こういった曲を入れることには、勇気が必要だったんじゃないですか?
ちゃんみな:勇気は必要でした。でもこの曲はたしかに私の一部を表してるし、作ってみたら評価してくれる人もたくさんいたんですよね。アルバムに入れるかどうか、はじめは少し迷いましたけど、やっぱりいろんな私を知ってもらいたいし、入れることにしました。
――『LADY』という曲は、『未成年 feat. めっし』と真逆のような内容の曲ですね。
ちゃんみな:この曲はライブでやりがいのある曲ですね。歌モノだし、しっとりした失恋の曲でもある。それまですごく盛り上がってたお客さんが一気に静かになるんですよね。MVもすごく良い出来になりました。MVを見ると、誰に歌っている曲なのかわかると思うので、ぜひ見てほしいです。
(ちゃんみな『LADY』MV。この曲の中でちゃんみなが最後に出会うのは……)
――他にも『BEST BOY FRIEND』や『OVER』はトロピカル・ハウスっぽいし、『UR like Me』を初めて聴いた時は、テイラー・スウィフトの曲を聴いているような高揚感がありました。このままテラスハウスが始まってもおかしくないような(笑)。
ちゃんみな:えっ、そうですか? 嬉しいけど、それは初めて言われた(笑)。
――これまでのちゃんみなさんのイメージを覆すような曲でアルバムの半分が占められていることがすごく面白いと思います。また、ヒップホップという音楽ジャンルにとらわれない姿勢も面白いと感じました。
ちゃんみな:よく思うんですけど、ヒップホップって何なんですかね? 何となく音楽を聴いて「これヒップホップだね」って思うことはあるんですけど、どう定義したらいいかよくわからない。メロディに乗せて歌うと「そんなんヒップホップじゃねーよ」とか言われることもあるけど、それって変だなと思います。ヒップホップってそういうものじゃないでしょと。
――ヒップホップは、「姿勢」や「精神」のことだと思いますか?
ちゃんみな:あ、そうです、それが言いたかった。
――今話を聞いていて、SKY-HIさんに行ったインタビューを思い出しました。彼は“「こうでなきゃいけない」って言うことは一番ヒップホップじゃない”と言ってます。そういった「こうでなきゃいけない」を壊して、色々なものを取り込んで成長してきた文化こそがヒップホップなんだと。
ちゃんみな:おおお、すごい。さすがSKY-HIさんですね。
――SKY-HIさんが言ってることと、ちゃんみなさんが考えてることはかなり近いですよね。今回のアルバム『未成年』は、そういう意味で、まさにヒップホップ的なアルバムだと思います。
次のページは「将来的には韓国語でもアルバムを/どこにいても外国人っていう意識がある」。
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