ソーシャル上を含めて各所で大きな話題を呼んでいるアニメーション映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』。映画自体は、1990年代に公開された岩井俊二監督の同名テレビドラマ、実写映画が原作になっています。筆者はリアルタイムでは原作を見れなかったのですが、岩井作品にはまる中手に取り何度も見返しました。今でも数々のシーンの記憶が頭に残っています。
今回この記事ではそんなアニメーション映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の「音楽」にフォーカスをあてていきたいと思います。ネタバレはないので未見の方も安心してご覧ください!
夏のエモーショナルさを詰め込んだ、DAOKO×米津玄師による主題歌『打上花火』
映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』ポスタービジュアル (c)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』の主題歌は、
DAOKO×
米津玄師名義で発表された楽曲『
打上花火』です。映画プロデューサーの川村元気によって引き合わされた二人の楽曲は見事にこの映画の世界観を彩ることに成功しています。
DAOKO×米津玄師『打上花火』(Official Video)
おそらくこの映画と必ず比較されるのが昨年夏に公開されたアニメーション映画『君の名は。』でしょう。主題歌のRADWIMPS『前前前世』はどちらかというとBPM速めのエモーショナルなロックチューンでしたが、本作の主題歌『打上花火』はゆったりとしたバラード。『前前前世』とはまた違った角度で情景、心情が浮かんでくるような
「夏の切なさ」、「夏のエモーショナルさ」が表現されています。
米津玄師はハチ名義でボーカロイドの楽曲を手がけていることも広く知られていますが、今回個人的に「エモい」と思ったのは、現在のボーカロイドシーンで強い影響力を持つn-buna楽曲の「夏の切なさ」に通ずるものを『打上花火』から感じたことです。n-bunaのヒット作の一つである『夜明けと蛍』はプールが情景として描かれていますが、そこでもこの映画とのシンクロを感じずにはいられませんでした。
n-buna『夜明けと蛍』(Official Video)
ちなみに、n-bunaはヨルシカというバンドも結成していて『靴の花火』という楽曲も発表しています。『打上花火』を聴いて惹かれた人に、また岩井作品が好きな人にはぜひおすすめしたい楽曲です。
「夏の切なさ」、「夏のエモーショナルさ」は日本独特なもので、日本人にしか出せないサウンド、歌詞世界観ともいえるでしょう。それが日本が誇る一大コンテンツ「アニメーション」と組み合わさる…そんな日本の良さが存分に詰め込まれた作品、それがアニメーション映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』です。
ヨルシカ『靴の花火』(Official Video)
また、かなり昔から米津玄師(ハチ)の楽曲を聴いてきていたというDAOKOの歌声、米津玄師との掛け合いも本当に素晴らしいです。DAOKOの楽曲は基本的に打ち込みが主体なので、今回のバンドサウンドとの溶け込み具合も新鮮で驚かされました。どこまでも透き通っていて、切なくて、心情を揺さぶられる、そんな強さが彼女の歌声にはあります。単体で聴くのはもちろん、映画館で聴くと、よりエモーショナルさを体感できるのでぜひ劇場で体感してみてください。
DAOKO
米津玄師
神前暁が手がける劇半にも注目しよう
映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』オリジナル・サウンドトラックジャケット (c)2017「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」製作委員会さて、映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』で注目すべきは主題歌だけではありません。
劇半(劇中で流れる音楽)にもぜひ注目していただきたいです。手がけているのは『涼宮ハルヒの憂鬱』、『らき☆すた』などの楽曲で知られる
神前暁。現在まで続くアニソン楽曲の流れを方向付けた人物といっても過言ではないお方です。
映画『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』オリジナル・サウンドトラック全曲試聴動画
時にストリングスを使い伸びやかに、時に岩井作品らしいピアノを使い切なく…まさに「神前サウンド」と呼べる見事な仕上がりでした。特に『典道となずなの世界』という楽曲の壮大さ、感動はひとしおで、鳥肌が立ってしまうこと間違いなし。こちらも非常に「エモい」です…! 上のYouTubeでサウンドトラックをまとめて視聴することができるのでぜひチェックしてみてください。
美しい情景描写が注目されがちな映画ですが、流れてくる音楽、的確に配置された効果音など、音の一つ一つを感じながら観るとさらに楽しめる映画であることは間違いありません。非常に文学的ともいえる作品なので、目で、そして耳で、全ての感覚を総動員して映画館に出かけましょう。きっと夏の良い記憶のひとつになるはずです。
DAOKO × 米津玄師『打上花火』実写MV