12月17日(土)に開催された、『バンもん!Fes. Winter 2016~雪降る夜にフェスして~』東京公演!
渋谷WWW、WWW Xの二会場を使用し、主宰・バンドじゃないもん!、NIGO®、渡辺淳之介プロデュース、元BiSのファーストサマーウイカ、ヒラノノゾミらが所属するBILLIE IDLE®、Czecho No Republicらが出演した同イベント。ハードコアな音像とずば抜けたDJ、ライブスキルで会場を沸かせたチップチューン・アーティスト、TORIENA、そして心地よいノイズで会場を包み込んだテンテンコのアクトに注目し、レポをお届けしたい。
Throbbing Gristle生まれ、非常階段育ち!テンテンコのDJプレイ
バンもん!Fes.・WWW会場の特色は、向かって前方、そして会場の中段の二箇所にステージが用意されていることだ。
前方のステージのライブの最中に、中段で次のアーティストが準備を進め、一つ前のアーティストの出番が終わると同時に曲が始まる。バンもん!Fes.・WWW会場は途切れることのない音の波に身を任せて盛り上がる、さながらノンストップMIXの様相を呈していた。
16時50分。小沢健二 featuring スチャダラパーや岡村靖幸、『SMAP 007 ~Gold Singer~』期のゴージャスなバックトラックで歌っていた頃のSMAPを彷彿とさせるような、90年代サウンドを奏でるONIGAWARAの二人に続き、ノンストップでライブをスタートしたのはテンテンコ!
――(略)ノイズも昔から好きだったんですか?
「自分ではそれをノイズだって認識してなかったんですけど、高校生の時に通ってたレコード屋でThrobbing Gristleを聴いたのが最初かな……ノイズともちょっと違うんですけど、メロディがあってリズムがあってAメロBメロがあって、っていうのじゃない音楽の入口がそれでした」
――ミュージシャン、テンテンコの真っ直ぐさ #2~「最後めちゃくちゃにして終わるの好き」~
と語るテンテンコ。2016年2月には非常階段のT.美川とのユニット・MikaTenとしてアルバム『Angel Noise』をリリース。
Throbbing Gristle生まれ、非常階段育ちとでも言うべき彼女のDJプレイはもうなんだか容赦がない。ぱいぱいでか美がハロプロ、バンドじゃないもん!がロック調の曲やファンクで温め、ONIGAWARAらが繋いだステージに堂々と轟音ノイズを響かせ、つまみを回し、会場の雰囲気を一変させる。
テンテンコの手元にはCDJの他、サンプラーが置かれ、パッドには「チチッ」「ザザー」「ツッ」というように音の強弱や響き、音色が異なるノイズが割り当てられていた。
彼女は多種多様なノイズを曲中、何かに取り憑かれたかのように鳴らし続け、場の空気を確認しながら更に中低音域の音量を押し上げ、空間をノイズで満たしていく。
バンドじゃないもん!や恵比寿★マスカッツなどこの日登場する他のグループのグッズに身を包んだ男女らの目が段々とトロンとしはじめ、ダウナーな響きに身体をゆったりと揺らしだす様を筆者は目にした。
卓上に登ったテンテンコは機材を手に卓上に登り、アルバム『工業製品』より「それぞれの心の中の次郎を思い浮かべてください」と『次郎』、そして、『放課後シンパシー』を披露。途中、機材からケーブルが抜けるトラブルの際「あれ……?抜けちゃった」とつぶやくと、その声色のキュートさに「可愛い……」と会場からは声が上がっていた。
(テンテンコ『次郎』MV)
最後は残り時間を使い切るまで、目一杯会場にギュインギュインつまみを回しまくり、ノイズを出しまくったテンテンコ。
非常階段の血を受け継ぎながらも、Throbbing Gristle仕込みのポップネスを忘れず、ボアダムスのプリミティブさやHair Stylisticsの予測不可能さとは異なるノイズの魅力を提示し、敬愛する戸川純を想起させるような歌謡曲的なメロディーラインの楽曲もセットリストに組み込む。
バランス感覚とミクスチャー感覚、そしてノイズに満ちたテンテンコのDJプレイはある種の円熟味と勢いに満ちていて、しかも似たようなことをしているアーティストが他に思いつかない。ちょっとでも興味があれば、いま見ておくべきDJの一人だ。カッコいいし、可愛いし、ノイズが気持ち良いので。
(テンテンコ『放課後シンパシー』MV)
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