去る11月8日、トランプ氏の当選が決まった米大統領選挙。その選挙が行われる少し前からNYの地下鉄駅構内に一風変わった「お悩み相談所」が出現し、話題になりました。
14th Street/6th Avenue駅の乗り換え地点に設けられた「お悩み相談所」の名前は「Subway Therapy」。そこにあるのは、簡素なアウトドア用テーブルと木製の椅子が2脚。机の上には、ポストイットとペンが置いてあるだけ。
ポストイットに綴られた「誰かの言葉」が教えてくれること
たったそれだけ、にもかかわらず、わずか一日で1500枚ものポストイットが集まり、壁一面を「誰かが書いたメッセージ」が埋め尽くしました。
EXPRESS YOURSELF = 「あなた自身を表現してください」
ポストイットに書くメッセージのお題は「LOVE(愛)について」。壁には大きく「EXPRESS YOUR SELF」=「あなた自身を表現してください」と書かれています。この「お悩み相談所」は、誰かに話を聞いてもらうのではなく、ただ1枚のポストイットに自分の胸の内を書いて、壁に貼るというもの。
それでどんなメッセージ集まったか、というと、こんな感じ↓
引用元:SUBWAY THERAPHY
そこには、誰が書いたかなど名前は記されていません。「夜明けはもうすぐやってくるよ」などの自分と他人を励ます言葉や「僕は白人で、妻はアジア人。正直、(トランプが当選したときのことを思うと)怖いよ」などなど、
ポジティブやネガティブなだけではない、ニューヨークに生きる人々の「生の声」が綴られています。
はじめたのは、1人の男性
この「SUBWAY THERAPHY」をはじめたのは、Leveeさんという一人の男性です。公式サイトに、はじめたときのきっかけが綴られています。
「数年前から”道に机とテーブルを出して、人々と語り合いたい”という思いを抱いていました。なぜだかわからないけど、どうしてもそれをやりたいと思っていたのです。(中略)人は、どうやって、落ち込んでいる状態から立ち直るのか?私はとても幸運なことに、自分の悩み事や話をきいてくれる家族・友人に恵まれています。居場所があります。だけど、相談できる家族や友人がそばにいない人は、どうやって立ち直ればいいのか?何のコミュニティにも属していなかったら、行き場はどこにあるのか?これは複雑な問題です。どうしたらいいかわからなかったけど、何か貢献したいと思っていました」
引用元:SUBWAY THERAPHY
9ヶ月前のある日、Leveeさんは人々が「秘密」を書き込める本を用意して、机と椅子を並べてみました。「ここに書いた秘密は、誰にも教えないから」という約束つきで。すると不思議なことに、椅子に座った人はみんな悩みや相談事をLeveeさんに話すようになり、「気持ちがとても軽くなったよ!これはまるでセラピーだね」とその椅子に座った人がみんな笑顔になっていきました。何かを書く行為が会話を活発化させ、その人の気持ちを軽くすることを学んだLeveeさん。その体感を経て、「ポストイットに愛のメッセージを書いてもらう」今のカタチに行き着いたのです。
「人々の感情が溢れ出すときに、気持ちのチャンネルが少しでもいい方に向かう手助けがしたい」
この取り組みは、今もLeveeさんのプロジェクトとして続いています(これまでに集まったメッセージは1万枚以上!)アメリカの各メディアもLeveeさんのことを取り上げていて、インタビューの中で彼は「僕は道具を用意しているだけですよ」と答えています。
インタビュー上では謙虚ですが、ウェブサイトにはしっかりとその思いが書かれています。
「気持ちが溢れ出ることはとても大切なことで、その情熱自体はすばらしいものです。ただし、その溢れ出たものが誰かを手助けするものになるようチャンネルを調整する必要があります。(中略)一方的に話すのではなく、話し合いましょう。憎しみに対して、憎しみをぶつけて戦うことはできません」
このメッセージは、大統領選でふたつに割れたアメリカの人々に向けられたものですが、日本人である僕たちにも響くものがあります。
芸術家やアーティストでなくても、誰だって何かを考えているし表現したい。だけどその方法がわからないし、今はその最適な場所がないような気がしませんか?Twitterに愚痴や意見を書いたって、反対にポジティブな言葉を書いたって「評論家ズラかよ」みたいなことで顔も見たことない人からディスられたりして。
そこに、ただポストイットに言葉を書いて、壁に貼る。ただそれだけで、気持ちが軽くなること。すごく、わかる気がします。すぐに日本の地下鉄でも真似しよう!というのは難しそうですが、まずは自分の部屋や会社内などの仲間内で試してみると良いかもしれませんね!
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