＜インタビュー＞ササノマリイが『タカラバコ』の中に込めたもの

表題曲の『タカラバコ』は作品の世界観にあわせるため、できるかぎり電子音を使わないようにした

――今回シングルには『タカラバコ (chill out still out)』という表題曲のアレンジバージョンも収録されます。こちらはビート感もまた違ったアレンジになっていますが、どんな感じで仕上げていったんでしょうか？

ササノマリイ：『タカラバコ』は『夏目友人帳』に使っていただけるというところで、できるかぎり作品の世界観にあわせたかったんです。なので、できるかぎり電子音を使わないようにしたんです。同じ曲だけど違う顔ができるよ、というのがやっぱり好きで、『タカラバコ』をもうひとつ違う顔にするんだったらこうするよっていうのを入れておこうと思って。

『夏目友人帳 伍』キービジュアル (c)緑川ゆき・白泉社 / 「夏目友人帳」製作委員会

――2曲目の『透明なコメット』はササノマリイさんらしいリバースサウンドやキックの音色がとても気持ちよかったんですが、こちらはどのように仕上げていったんですか？

ササノマリイ：これは、自分が好きなものをとにかく詰め込んだ曲です。サウンドのつくり方も今までのやり方でつくっていきました。

――1曲目の『タカラバコ』よりも、歌詞の部分でよりササノマリイさんの感情が強く表に出ているなと感じました。

ササノマリイ：オケを聴きながら出てくる言葉を止めずにバッと書いてそれを整えていった感じです。歌詞はけっこう詰まるほうなんです(笑)。もともと口下手なもので、普通にしゃべってると支離滅裂になっていくんですね。自分でそのときに感じていた思いを前は濁すことが多かったんですよ、できるかぎりわかりにくい歌詞にしようとしていた。でも思ったことをできるかぎりそのまま書いてしまおうというのが今回はあって。

――それはすごく歌詞から伝わってきます。ちなみに「彗星」をモチーフにしようと思ったのはなぜ？

ササノマリイ：音を聴いて思ったんですよね。透き通っていて暗くて遠いみたいなイメージ。手が届かないんですよね、彗星たちは。

――彗星って、手の届かなさや、一瞬で消えてしまう儚さ、願いの象徴でもありますよね。

ササノマリイ：安直な言葉でいうならば「儚さ」ですね。『透明なコメット』には音づくりからテーマまで自分の好きなものを詰め込んじゃったんですよ。なので「透明なコメット」という言葉にも自分の好きな、綺麗なものを込めています。

――3曲目の『バイバイ』は3拍子の曲で。昔の曲でいうとねこぼーろ名義の『ライア』とかが3拍子の曲ですね。

ササノマリイ：僕の中では3拍子が普通なんです。プロジェクトで一番最初に立ち上がるプリセットも実は3拍子になっていて。『バイバイ』は他の曲とつくり方が違って、最初弾き語りの形でつくったんです。ピアノを弾きながらそのまま歌ったものを録っておいて。だから自分の中で一番シンガーソングライター的なつくり方だと思います。ほぼ即興なので、その分自分の直感に近いものになっているかなと。

――今回期間生産限定盤にはピアノ即興バージョンの音源も付くじゃないですか、やっぱりインストで聴いても素晴らしいなと感じました。

ササノマリイ：本当に即興だったので、最近すごく1曲に時間をかけている自分としてはいいのかなとも思ったりもしたんですけど(笑)。ピアノ即興のWeb配信をたまにするんですけど、僕のピアノが良いと言ってくれる声もたくさんあったので、その感じも入れたいなと思って、『タカラバコ』『透明なコメット』『バイバイ』3曲分のモチーフを使ってつくりあげました。

『タカラバコ』期間限定盤には収録曲のピアノ即興バージョンも収録される。

――即興の話でいうと、これからライブをどうしていくのかなというのも気になります。

ササノマリイ：ライブはライブだからこそできることをやっていきたいと思っています。できるかぎりアレンジはライブ用のものでまた新しくやりたいなと。前は一人がいいなと思っていたんですけど、バンドの人が入ることによって、ライブでやるならこうしたいという表現ができるんですよね。かつ、その人のもっている味やセンスが自分に力を貸してくれるんです。そうしてもらったほうが聴いてくれる人は楽しんでくれるかなって思って。何よりも聴きに来てくれた人たちに楽しんでもらいたいので、バンド編成で力を貸してもらう形が面白いかなと今は思っています。

――遊び心を大事にされているから、ライブの表現とかもすごくいろいろ考えているのかなと思ったり(笑)。

ササノマリイ：電子音楽をやってきた人間が生でライブをやるとして、どうやったら面白いものになるかなというところは模索していきたいなと思っています。ササノマリイの活動を始めてから、自分だけじゃ絶対こうはならなかったなっていう体験が数多くあるので、人と一緒にやることで新しいことができている今がとても楽しいです。

――今、ササノマリイさんにとって音楽はどんな存在ですか？

ササノマリイ：眼鏡みたいなものですね。ほぼ生活必需品、語弊を恐れないで言うのであれば僕にとってのラーメンです。なくても生きていける人はいるんですよ、そんなにお金を使うのがわからないってラーメンも言われる。でもそれがあるから、自分が生きてるなって感じられるんですよね。ラーメンは食べたときに自分が生きていると感じるし、音楽は聴いているときに生きてるなって思う。

――ラーメンも音楽と一緒で中毒性が高いですからね(笑)。

ササノマリイ：本当に似ているなと思います。ラーメンも頑張れば自分でもつくれますしね(笑)。

■ササノマリイ 1st Single『タカラバコ』

2016.11.30 Release

○初回生産限定盤 CD+DVD AICL 3220~1 ￥1,500(tax out) 特殊三方背ケース、DVD
CD
1.タカラバコ
2.透明なコメット
3.バイバイ
4.タカラバコ (chill out still out)
5.タカラバコ instrumental
6.透明なコメットinstrumental
7.バイバイ instrumental
DVD
1.M(OTHER) MV
2.Re:verb MV

○期間限定生産盤(アニメ仕様) CD+CD AICL 32231~4 ￥1,500(tax out) 特殊三方背ケース、アニメジェット 即興ピアノインスト CD
CD
1.タカラバコ
2.透明なコメット
3.バイバイ
4.タカラバコ (chill out still out)
5.タカラバコ instrumental
6.透明なコメット instrumental
7.バイバイ instrumental
CD2
タカラバコ ピアノ即興曲
1.タカラバコ the murmur of piano forte
2.透明なコメット the murmur of piano forte
3.バイバイピアノ the murmur of piano forte

○通常盤 CD AICL 3222 ￥1,250(tax out)
CD
1.タカラバコ
2.透明なコメット
3.バイバイ
4.タカラバコ (chill out still out)