続いてステージに現れたのは、スーツ姿の男性が1人。「歌いそうなんですけど、一切歌いません」と言って、この人は誰だろう?という視線を向ける観客を前に男は自分の名前を発した。「My name is Joey Tee」。
アメリカ・ロサンゼルスで育ち、ダンサーとして絶大な支持を集めながら、国内外の映画やドラマに俳優としても活躍するJoey。スピーカーからクラブミュージックが流れると、しなやかな動きでダンスを披露。まるで海を泳ぐ魚のように、その動きは人間離れをしていて、ライブ目当てで来た観客も思わず息をのむ。わずか5分間であったが、Joeyのパフォーマンスは大きな拍手を起こした。
そして4組目に登場したのは、札幌を拠点に活動しているSULLIVAN’s FUN CLUB。2016年にスリーピース・バンドとして結成し、2017年に現在の4人編成となった。ヨシダレオ(Vo&Gt)は19歳で、ヨシダカズマ(Gt)、ヤダニイナ(Ba)、タダカズキ(Dr)は18歳。今年は「SUMMER SONIC 2019」に出演して、「マイナビ未確認フェスティバル2019」ではグランプリを受賞した、期待のバンドである。
——ステージに現れた4人は、観客に挨拶をすることなく爆音を鳴らした。「踏切を越えて君の街」の出だしを聴いた瞬間から、観る者の体中を襲う衝撃音。彼らの音楽を聴きながら2000年代始めの“青春パンク”と呼ばれた、あの時代の景色を思い出した。激しいんだけど、メロディはキレイで、生き急いでる感じ。調べると銀杏BOYZやTHE BLUE HEARTSに影響を受けているそう。
「未だ見ぬ正義」「SEN KOHANA BI」を演奏したあと、「あのぅ……北海道の札幌市という、ほぼ国外から来ました。今日はあと3曲よろしくお願いします」と言って「DOOR」を弾いた。ヨシダレオがふと天井を見上げると、前髪で隠れていた甘いマスクをのぞかせた。再びマイクに顔を近づけたとき、瞳孔が大きく開いて、まるで猛獣のような表情にゾクゾクした。MVにもなっている「FAST LIFE SONG」は、あまりの音量に頭が割れるかと思うほど。彼らが袖へはけたあとも耳鳴りがこびりついていた。
この日、イベントのトリを飾ったのはShe,in the haze。去年はヨーロッパツアーを敢行し、ベルギーで開催された10万人規模の大型フェス「MADE IN ASIA」に出演するなど、国内外問わず多くのファンを持つ。yu-ki(Vo/G)、an(key)、tomo(dr)の3人は全身白い衣装に身を包み異様な雰囲気をまとっていた。挨拶代わりに披露された「Doubt」は、メランコリックな音像で開始早々に神秘的な世界へ観客を誘った。
続く2曲目の「Paranoid」ではステージ全体をスモークが包み、スクリーンには演奏に合わせて自然の風景や1stEPのジャケットに使われた寂しげな子供の映像が流れる。まるで天に召されるような、あの何とも言えない感覚は“幻想的”としか表しようがない。かつてyu-kiにインタビューをしたとき「僕の曲は苦しみの集大成かもしれません」と話していたが、人間の憂いをこうも繊細に、悲しくではなく、哀しく映すバンドは類を見ない。MCをすることなく、「Hallelujah」「Alive」と次から次へ楽曲が紡がれていった。
そして最後の曲を演奏する前、yu-kiはフロアへ言葉を向けた。「これからも、たくさん良い音をみなさん見つけてください。素敵な時間をライブハウスで過ごしてください。とても幸せでした……また、どこかで会いましょう」。そう言って演奏された「Stars」は、まるで夜空に浮かぶ星の下にいるような不思議な時間を過ごしているようだったーー。
こうして2時間に及ぶ「New Blood」は幕を閉じた。出口へとつながる階段を上がると、natsumeのメンバーが無料でCDを配布していた。「CD頂いても良いですか?」と声をかけたのは、先ほど彼らのライブで踊っていた中年男性だ。「ありがとうございます! 目の前で観てくださってましたよね!」と真田が笑顔でCDを手渡す。きっと、あの男性はnatsumeのライブにまた足を運ぶだろうなと思ったら、「New Blood」の存在意義はしっかり果たされる気がして嬉しくなった。
「New Blood VOL.2」の開催が決定!
2020/2/25(火) @SPACE ODD
出演アーティスト
UMEILO
..and more
チケット情報はコチラから!
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