LAを拠点に活動し、これまでに30カ国300公演以上のライブと6度のワールドツアーを成功させているMIYAVI。木村拓哉主演の映画『無限の住人』に主題歌『Live to Die Another Day-存在証明-』を提供したり、自身も映画『不屈の男 アンブロークン』や『キングコング:髑髏島の巨神』に俳優として出演するなど、その幅広い活躍は近年めざましい。アメリカの人気テレビ番組『エレンの部屋』への出演や、アンジェリーナ・ジョリーがフェイバリット・アーティストにMIYAVIをあげるなど、世界的な評価が高まっている。
そんなMIYAVIのデビュー15周年を記念した対バンライブ『NTT DOCOMO presents MIYAVI 15th Anniversary Live “NEO TOKYO 15”』のファイナルが6月29日、東京・新木場STUDIO COASTで行われた。5月21日に赤坂BLITZで行われたTHE ORAL CIGARETTESとの対バンを皮切りに、GLIM SPANKY、氣志團、ゆるめるモ!、SiM、OKAMOTO’S、Charisma.com、ちゃんみな、ACIDMANなど、様々なジャンルのアーティストを迎えて、東京都内で約一ヶ月間、計15本行われたツアー。本記事では、三浦大知とKREVAを迎えたファイナルの様子をレポートします。
Text_Sotaro Yamada
Edit_司馬ゆいか
ファイナルのゲストは三浦大知
ファイナルの対バン相手に選ばれたのは三浦大知。彼は昨年、ダンスパフォーマンスがすごいアーティストとして(再び)広く世間に認知された、いまもっとも注目を集めているダンスボーカリストだ。MIYAVIとは昨年末のFNS歌謡祭で見せたコラボが記憶に新しいが、今回のファイナルで、二人のコラボはあるのだろうか?
DJと4人のダンサーを引き連れてステージ現れた三浦大知。大声援の中、『I’m On Fire』や『Right Now』でオーディエンスを沸かす。ダンサーたちと息の合ったキレのあるダンスは、やはり見ていて惚れ惚れする。
三浦大知『Right Now』MV
「MIYAVIさん15周年おめでとうございます! ラストに呼んでいただけて本当に嬉しく思います。今日はジャンルやファンの壁をとっぱらって最高のFEVERを作っていきたいと思います!」と初々しく叫び、『Fever』などの人気曲で会場の熱気をあげていく。
ダンスの凄さで世間に認知されている三浦大知だが、彼の凄さはダンスだけにあるのではない。むしろ、彼はその類まれな歌唱力で最初の名声を手に入れたのだった。現在のリスナーには馴染みが薄いかもしれないが、三浦大知が最初に世間に認知されたのは、彼がまだ9歳の頃。いまや日本を代表する女優として活躍する満島ひかりさえバックに追いやる圧倒的な歌唱力で、Folderというグループの中心にいたのが、三浦大知だった。その歌声はジャクソン5を彷彿とさせると言われ、将来を嘱望されていたものだ。変声期を迎え、一度は活動を休止した三浦大知だが、音楽に選ばれた人間は数年後にこうしてまた日本の音楽シーンを牽引することになった。
かつての圧倒的な歌唱力はさらに磨かれ、この日『ふれあうだけで〜Always with you〜』の冒頭部分をアカペラで歌った時には、さっきまで黄色い声をあげていたオーディエンスが息を呑んでその美しい歌声に聴き入ることになった。
その後は『EXCITE』や『(RE)PLAY』といった人気曲で盛り上げ、「最高のテンションのままMIYAVIさんのライブに繋げたいと思います!」という言葉通りのパフォーマンスでバトンをタッチした。
三浦大知『EXCITE』MV
MIYAVI登場!
やがて場内には、スマートフォンのアプリを起動するようアナウンスが流れる。本ツアーでMIYAVIとNTT DOCOMOは、新たな試みとして2つのアプリをリリースしている。
1つ目が、360°VR映像をリアルタイム配信する『MIYAVIライブVRアプリ』。最近はLINE LIVEなどでライブのリアルタイム中継をするアーティストが増えてきたが、このアプリでは、VR機能を付け加えることによってマルチアングルで臨場感たっぷりにライブを遠方からも堪能でき、VRゴーグルがあればMIYAVIと同じステージに立っているかのような感覚を味わうこともできる。
2つ目のアプリは、MIYAVIの演奏に合わせて一緒に「演奏」できる『MIYAVI NEO TOKYOアプリ』。目の前で演奏されているMIYAVIの楽曲と同期し、楽曲タイトルなどの情報サポートや、画面の色を切り替えてサイリウムのような役割を果たしたりする。
『MIYAVI NEO TOKYOアプリ』を起動すると、MIYAVIのデビューから現在までのダイジェスト映像が音楽とともに流れる。
ムービーが終了すると、BOBO(Dr.)、JOHNNEY(DJ)、そしてMIYAVIが現れ、『What’s My Name?(Original)』からスタート。代名詞であるスラップ奏法をいきなり披露し、オーディエンスを魅了する。
続く『So On It』、『In Crowd』では、BOBOとJOHNNEYの繰り出すダンサブルなビートがMIYAVIのギターと絡み合い、オーディエンスを踊らせ、踊るオーディエンスの振動で会場が揺れる。STUDIO COASTが海外の巨大クラブと化したかのような様相で、まるでイビザ島のクラブにいるような錯覚に陥ってしまう。
『Fire Bird』では、ステージ奥のスクリーンに手塚治虫『火の鳥』とコラボしたMVが映し出され、光輝く火の鳥が羽ばたいた。
MIYAVI『Fire Bird』MV
KREVAも登場!
そしてこの日のスペシャルゲスト、KREVAが登場。袖から悠々と姿を現し、黒いサングラスをかけたままステージで仁王立ちする姿は、この国のラップミュージックの礎を築いてきた男、「HIP HOPソロアーティスト初」という言葉が常に枕詞として使われる男にふさわしい、王者の風格を感じさせるものだった。
そんなKREVAとMIYAVIによる『Strong』は、この日もっとも観る価値のある瞬間の一つになった。
汗を散らしながらギターの弦を弾き叩くMIYAVIと、激しくラップするKREVA。
向き合う二人が
「BE STRONG 弱さ受け入れ生きる だってそれも俺の一部 向き合って向き合って 手に入れた強さは打ち出してく」
と歌う様は観る者の心を強く揺さぶる。
言葉ではなくギターとラップで会話する二人のあいだには、他者の関与を許さないような、それでいて外に開かれているような、一流の者同士にしか生み出せない独特な間や空気が生まれているように思われた。日本一のギタリストと日本一のラッパーがポジティブな火花を散らす最高のセッションにオーディエンスは酔いしれ、会場の熱気はさらに上がっていった。
MIYAVI vs KREVA『STRONG』MV
KREVAが去るとMIYAVIは、「世界中でいろんなことが起こっているけど、音楽をやってる時は国籍も肌の色も人種も、本気で越えられると思ってる」と『The Others』、『Day 1』、『Horizen』を演奏し、本編を締めた。
アンコールではサプライズ連発!
アンコールではまず、有志の仔雅(こみやび:MIYAVIのファン)によるメッセージフラッグが客席からMIYAVIに渡される。ぎっしりとメッセージの書かれた大きな日の丸の旗を掲げたMIYAVIは、この粋な計らいに感極まっているように見えた。そうして木村拓哉主演の映画『無限の住人』主題歌である『Live to Die Another Day-存在証明-』を演奏。スクリーンには映画のシーンと目の前で繰り広げられるライブ映像が重ねて映し出された。
また、続く『Wonderful World』では、ギターを背負ってハンドマイクで熱唱。オーディエンスは様々な人種で構成されていたが、この曲では日本語での大合唱が起きた。
さらに三浦大知を呼び込み、昨年末のFNS歌謡祭の再現となる『Cry & Fight』も披露。楽しそうにセッションする二人の表情が印象的だった。
【📡動画】(再生時間:01分47秒)
先日OAされたフジテレビ #FNS歌謡祭 番組放送を見逃した方のため特別にお届け!
〜MIYAVI × 三浦大知「Cry & Fight」その2編〜
(03/03) pic.twitter.com/76BeYwafXe— MIYAVI STAFF【公式】 (@MIYAVI_STAFF) 2016年12月15日
サプライズはまだ終わらない。
「次の一手もいろいろ考えているんですけど……」と三浦大知の横で話し始めるMIYAVI。続いた言葉は、誰もが予想しなかった言葉だった。
MIYAVI「俺たち結婚します」
三浦大知「みんなごめんね〜!」
MIYAVI「なんで謝んの?」
三浦大知「いやあ、みんなのMIYAVIさんをとっちゃって悪いな〜と思って」
MIYAVI「そこ?笑」
もちろんこれは冗談。
この二人、実は現在、一緒に曲を作っているらしく、まだ未完成のその曲をこの日は特別に披露するという。「次の一手」とは、三浦大知との新曲のことだった。オーディエンスからは大きな歓声が沸き起こる。新曲は未完成ver.でも相当踊れるクオリティの高いダンスミュージック。初めて聴くはずのオーディエンスも大盛り上がりで身体を揺らす。
三浦大知が「これは楽しいですね!最高です!」と言うと、MIYAVIも「早く完成させよう!」と、新婚らしく(?)楽しそうに盛り上がる。
そして最後のサプライズはもちろんKREVA!!
「結婚おめでとー! 間違えた、15周年おめでとー! ていうか、完成したら908フェスでやればいいじゃん?」と、8月19日に大阪城ホールで開催される908フェスでの再演も匂わせつつ、3人で『What’s My Name Day 2 Mix』を演奏。ギター:MIYAVI、歌&ダンス:三浦大知、ラップ:KREVAという贅沢なステージに、この日最大の歓声が響きわたった。
3人のパフォーマンスが素晴らしいのは当然だが、なんといっても、全身から喜びが溢れ出るように楽しそうにしていたのが強く印象に残った。特にKREVAは、MIYAVIのギターの弦を叩き鳴らしたり、三浦大知と肩を組んで歌ったりと、この時ばかりは王者も少年の顔を見せた。
こうして熱狂の中、MIYAVIの15周年記念ライブツアーは幕を閉じた。
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