LOVE PSYCHEDELICO。音楽とともに、ひとつずつ踏みしめて歩いた20年
LOVE PSYCHEDELICO(ラブ・サイケデリコ)がデビューしたのは2000年4月のこと。つまり今年でデビュー20周年となる。彼らの20年はいったいどのようなものだったのか。プロフィールとともに、その足跡を振り返りたい。
LOVE PSYCHEDELICOが歩んできた道のり
LOVE PSYCHEDELICOは、ボーカル・KUMIとギター・NAOKIからなるロックユニット。大学の音楽サークルで出会い、当初はバンド形態で活動をしていたが、メンバーの脱退などを経て2人組になったのが1997年。新たなバンドを組むまでに制作したデモテープが関係者の目に留まり、デビューへと至った。
1stシングル「LADY MADONNA 〜憂鬱なるスパイダー〜」は、このデモテープをほぼそのままの形でCD化し、リリースされている。同シングルはデビュー作ながらアパレルメーカーのCMソングに起用された。洋楽オールドロックを思わせるギターリフが印象的な“J-POPらしからぬ”ナンバーだ。当時彼らはプロになるつもりなど毛頭なく、オケに打ち込まれたドラムもバンドメンバーが見つかったら生へと差し替えるつもりだったのだそう。思わぬ形でデモテープが全国流通の音源となり、LOVE PSYCHEDELICOは音楽の道のプロである“アーティスト”となった。
その後もコンスタントにリリースは続く。デビューから約3か月後の2000年7月には2ndシングル「Your Song」を発売。同シングルは前作のオリコン最高順位を大幅に更新し、トップ20へとランクインした。さらに約4か月後の3rdシングル「Last Smile」は2作連続でのロングヒットを記録。大きな知名度を獲得し、彼らの人気はより確かなものとなる。満を持してリリースされた1stアルバム「THE GREATEST HITS」は、文字通りダブルミリオンの大ヒットとなり、LOVE PSYCHEDELICOは一躍トップアーティストの仲間入りを果たした。
以降は、オリコンTOP10入りを成し遂げたシングル「Free World」「I will be with you」、2作連続でのミリオンセールスを記録した2ndアルバム「LOVE PSYCHEDELIC ORCHESTRA」のリリースを経て、ライブ活動へと傾倒。アメリカの世界的音楽フェス・SXSWへの出演を皮切りに、海外での活動も本格化させている。特にアジア圏では絶大な人気を誇り、2015年には香港の音楽フェス・Clockenflapにおいてヘッドライナーに選出された。彼らのステージは当日の最高観客動員を記録。その時間帯に会場にいたゲストの70%以上がLOVE PSYCHEDELICO(香港では「愛的魔幻」と呼ばれる)のアクトを観るという異例の出来事となった。
これまでに7作のオリジナルアルバムを国内で発売。2008年には念願だった全米でのリリースも果たしている。デビューから20年が経ち、なお質の高い音楽活動を続けているのがLOVE PSYCHEDELICOの2人だ。
LOVE PSYCHEDELICOの20年を彩るマストナンバーたち
Last Smile
LOVE PSYCHEDELICOといえば、この曲をイメージする人も多いのではないだろうか。
「Last Smile」は2000年11月発売の彼らの3rdシングル。1stアルバム「THE GREATEST HITS」に収録されている。
そのスタイリッシュなサウンドメイクからタイアップの多い彼らのシングル曲にあって、同曲はノンタイアップながら息の長いヒットを記録した。当時の2人はまだ露出がほとんどなかったため、単純に楽曲の魅力だけで認められた珍しいケースとなっている。
「印象的なギターリフ」「日英を織り交ぜた独特のリリック」「バンドスタイルでは珍しい打ち込みをつかったサウンド」「オーガニックなムード」といったLOVE PSYCHEDELICOを構成する音楽的特徴の多くを含んでいる。名実ともに彼らの代表曲であることは間違いない。
Freedom
一方で、4thアルバム「GOLDEN GRAPEFRUIT」のリードトラックでは別の顔も見せる。「Freedom」はシングル化されていない楽曲ながら、各方面からタイアップを獲得し、20年の中期を代表する1曲としてファンに広く支持されるナンバーとなった。
同曲では、「Last Smile」にあった「オーガニックなムード」が息を潜めつつも、また別の特徴である「オールドロックのフレーバー」が台頭している。疾走感のあるメロディやギターを下支えするのは、クラブミュージックからの影響を感じさせる4つ打ちのリズムだ。彼らが“ただの懐古的なロックユニット”で終わらない理由は、幅広いジャンルのエッセンスを柔軟に吸収し独自の感覚で制作へと昇華する、類まれなセンスにあるのだろう。2曲をピックアップするだけで、その先に無限のバックボーンを感じることができる。
This Moment
「This Moment」は、2017年発売の7thアルバム「LOVE YOUR LOVE」に収録されている1曲。20年のなかでも後期の作品にあたるこの楽曲では、前期・中期とはまた違う、フォーキーでシンガーソングライター的なアプローチが光る。その背景にあるのは、2014年よりスタートした弾き語りスタイルによるアコースティックライブツアー「TWO OF US」の影響だ。
彼らは過去のインタビューで「以前よりお互いのギターの音を注意深く聴くようになった」と話している。これまでのような印象的なギターリフやバンドアンサンブルありきのアレンジから、よりミニマムな2人だけの世界を核とした、メロディとコード中心の引き算のアレンジへ。制作への接し方を変えたのがこのアルバムということになる。同曲はそうしたスタイルの変化を如実にあらわしている。
過去の楽曲がローリング・ストーンズ、ビートルズ的アプローチだとするならば、「This Moment」は、キャロル・キングやカーペンターズ、サイモン&ガーファンクル的。ロックユニット・LOVE PSYCHEDELICOのエバーグリーンな世界を今まで以上に堪能させてくれる1曲となっている。
4/15には1年4か月ぶりの新曲「Swingin’」を配信リリース
そんなLOVE PSYCHEDELICOは、来たる2020年4月15日に1年4か月ぶりの新曲「Swingin’」を配信リリースした。シンプルさのなかにさまざまなエッセンスを忍ばせた、彼ららしい爽やかなナンバーだ。やはりここでも目を引くのは、「日英を織り交ぜた独特のリリック」が紡ぐ軽快なメロディライン、スライドギターを多用した「印象的なギターリフ」、リズム隊が醸す「オーガニックなムード」となっている。ドラムにはNAOKIがプロデュースを手がけ、長年親交を深めてきたOKAMOTO’S・オカモトレイジをフィーチャー。20年の活動を経てアップデートされてきたLOVE PSYCHEDELICOの真髄を余すことなく味わえる1曲が、アニバーサリーイヤーに誕生した。
また同曲は、4月20日(月)スタート、鈴木京香主演のテレビ東京系ドラマBiz「行列の女神~らーめん才遊記~」のOPテーマに起用されている。LOVE PSYCHEDELICOの楽曲がドラマタイアップを得るのは、13thシングル「It’s You」以来、実に9年ぶりのこと。彼らのサウンドとドラマの世界が織りなすシナジーからも目が離せない。
LOVE PSYCHEDELICOが21年目に踏み出す一歩
3月末には20周年を記念したフルリマスター4枚組のコンプリートシングル集「Complete Singles 2000-2019」をリリースした2人。20年の記念碑を打ち立てて見据える先には、どのような風景が広がっているのだろうか。
ひとりのアーティストから、シーンを代表するリビングレジェンドへ。ミレニアム生まれのロックユニットがまた新たな一歩を踏み出した。
LOVE PSYCHEDELICO
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