いま自分が歌いたいことを詰め込んだ新作『音楽の行方』
――8月21日に発売となった新作『音楽の行方』についても伺っていきますが、流れを整理すると、『ヨルノカタスミ』、『アケユク ヨル ニ』、『ヨル ヲ ムカエニ』という三部作から、今年1月に発表した1stフルアルバム『零になって』は一旦ゼロにした作品とお話されてましたよね。『音楽の行方』はどういった立ち位置になるんでしょうか?
佐藤 : いつでもスタートラインに立っていたいというのが自分たちのスタンスなんですけど、この『音楽の行方』は『零になって』から少し外れた部分の路線にいると思ってて。
――koboreが進んでいく中で、スピンオフといったら言い過ぎかもしれませんが、今、作ったおきたかった1枚だと。
佐藤 : 本当にそうですね。『零になって』は誰かに向けて、とかだったんですけど、今回は自分勝手というか、自分の歌いたいことをひたすらに込めたんです。
――全体的な印象として、肩肘張らず、背伸びせず、自然体で言葉を紡ぎ、音を鳴らしてると感じました。
佐藤 : そう言ってもらえると嬉しいです。そこを目指していたので。
――また、koboreは夜が似合うバンドというイメージも強いですけど、「ダイヤモンド」のMVは青空の下で撮影もされてますね。
佐藤 : MVは余裕さというか、koboreとして広くなったところを見せたかったんです。加えて、フレッシュさを出そうと、抜けが良い映像にもしたんですけど、みんなこれまでの流れも知ってるからか「koboreは夜も昼も似合うね」みたいないい捉え方をしてくれて(笑)。
――結成からの年数を考えれば、まだまだフレッシュといっていいバンドですけどね(笑)。
佐藤 : ちゃんとバンドをやってからは3年ぐらいですしね。
――いかにこの3年が濃かったか。
佐藤 : そうですね。よくバンドを続けてられるなと思ってます。
伊藤 : 本当にそう。
――どうして、ここまで濃密に続けてこられたんでしょうか?
佐藤 : やっぱり、悔しさが根底にあるし……酔ってやらかしたことも含めて、その濃いモノがなくなってしまうのがもったいないというか、嫌だなって。地元の人たちも続けてる人間に対してはすげえ熱く背中を押してくれるし、中途半端に辞めたバンドみたくなりたくないなっていう。
――『音楽の行方』へ話を戻すと、「辛いけど頑張ろう」とか「進めば光がある」とかじゃなく、”今の日常”を肯定してますよね。
佐藤 : 「それでいいんだよ」みたいな音楽ができあがったなと。それも意図的じゃなくて、自分の歌いたいところだったというか、曲ができて「今、自分ってこういうポジションにいるのか」と初めて気づいたし。肯定の人間になりつつあるんですかね。
――冒頭を飾るタイトル曲「音楽の行方」では、ゆったりと歌い上げてから一気に加速する展開が刺さったんですけど、当初からあったアイデアなんですか?
佐藤 : これは「1曲目みたいな曲を作りたいね」という話から、今までやったことがないスローテンポ始まりで作ってみたんです。ただ、あまりにも遅すぎて、途中からテンポを上げていったらああいう形になって。
――新しいアプローチを入れてみようとした名残がいいバランスで残ってるような。
佐藤 : そういう感じですね。
――平凡の大切さを綴った「ミディオーカー」は、歌詞もテンポもニュアンスも全部が一体となってる曲ですよね。ただ、歌詞って綺麗事や強がりがにじみ出ることも多いのに、どうして平凡な日々が好きだと歌ったのかが気になってまして。
佐藤 : この曲って、ベランダで作ってて。ジャケットにもなってるんですけど、あれは実家のベランダなんです。タバコを吸いながらアコギを弾いてたら、結構それが良くて。
――ベランダって、外だから開放感はあるけど、スペースとしては広いわけじゃないから、ちょっとした閉塞感もある場所ですよね。
佐藤 : それが心地よかったんです。ずっと開放でもなく、ずっと閉塞でもない。その感じを歌にしようと、目についたモノを全部入れたんです。散歩してる人だったり、自分のタバコの吸い殻だったり、部屋のカーテンだったり。そうしたら、普通の曲ができるんじゃないかなと。だから、作り方が関係してる1曲ですね。だいたいのメロディーもあったから、歌詞を書き上げてバンドで合わせたら、決まってなかったサビもスッと決まって、すんなりと形になりました。
――そういう時は歌詞もメンバーに見せたり?
佐藤 : いや、この曲に限らずですけど、歌詞はあんまり見せないですね。
伊藤 : 僕は歌詞カードができ上がって、初めてちゃんとした歌詞を知ります(笑)。
佐藤 : メンバーみんなナルシストなんで、自分のフレーズをどれだけ出しつつバンドへ食い込めるか、というところにフォーカスしてて。ちょっとでもはみ出たら切られるし、抑え過ぎても自分が出てこないし。だから、歌詞は後々でもいいというか。(バンドで)合わせるときも、「これが歌詞になるかはわからないけど」と適当に歌って、「メロディー、良くない?」みたいなところから始まるし。
伊藤 : そのメロディーを破壊するかしないかの、瀬戸際を攻めるのが大好きですね(笑)。
――「ミッドナイトブルー」は、長めのイントロがいい味を出してますよね。
佐藤 : イントロが長い曲って、勇気がいるじゃないですか。だから、「これはいいメロディーがくるな」と感じてもらう為、いかにいいフレーズを出せるかを意識しましたね。
安藤 : イントロは2コードだけど、アウトロでは4コードになってて。曲の始まりから終わりでカラフルになってるのもめちゃくちゃいいなと思ってます。
――そして、「拝啓」の直球っぷりには驚きもあったんです。ロックバンドがここまで親や友人に感謝を歌うこともあんまりない気がして。
佐藤 : 逆に、そう凝り固まってるからこそ、開いていきたいなという気持ちもありましたね。
――こういう感謝って、普段から言えます?
佐藤 : いや、無理っす。言えないから歌詞にしたところもあるし。
伊藤 : オレは言えますね。
安藤 : オレはまず、親と会わないんですよ。生活リズムが違うから。
佐藤 : そこはもうちょっと頑張ろうよ(笑)。
――それに、こういう感謝を綴った曲はバラード調なことも多いですけど、速めのテンポで歌ったのは?
佐藤 : なんか、バラード調だと照れくさいじゃないですか。今の自分が歌えるテンポで、今の自分が歌える歌詞をのせた方が背伸びもしてないし。急に、売れてめちゃくちゃ稼いでます系のテンポでやらなくてもいいかなって。
――ゆっくりしたテンポが、売れてます系というのはどうなんですかね(笑)。
佐藤 : いや、僕の中であるんですよ、稼いでるテンポが(笑)。
伊藤 : なんか余裕があるみたいな?
佐藤 : そうそう。僕ら、まだまだ余裕なんかないし。全然、まだ何も恩返しはできてないけど、頑張ってるという感じは、ゆっくりした曲調では出ないなと。もうちょっと突っ走ってる感じ、必死にやってる感じを出したくて、このテンポにしたところもありますね。
――そして、10月から全23本にわたるリリースツアーも始まります。近年はツアーの本数を絞るバンドが多い中、各地へ足を伸ばす理由は?
佐藤 : 最近、何も観てない人にとやかく言われることが多くなってきて。Twitterのフォロワーの数で「koboreって人気なんだ?」とか、YouTubeの再生回数で「あっ、バズってる!」とか、すっげえ嫌なんです。もし、そんなことで良し悪しが決まっちゃうんだとしたら、「もう行くしかないでしょ」と。あとは僕らが単純に寂しがりやっていう(笑)。各地に会いたい、好きな人がたくさんいるんです。
――やっぱり、バンドにとって、人と出会いがモチベーションですよね。
佐藤 : そうなりますし、それがまた音楽になって、次の作品にもつながって。ライブをやってないと不安なってしまうという謎の病なところもありますけどね(笑)。
――ハハハハ(笑)。実際、最近のスケジュールを振り返っても、リリースがあろうがツアーがあろうが、お構いなしにライブをしてますよね。普通ならもうちょっと絞ったりしますけど。
安藤 : そういうの苦手なんです(笑)。
佐藤 : 何かがあるからって、それがライブを削る理由にはならないでしょ、と(笑)。期間なんか空けなくたって、いつでもツアーの準備はできてますから。
伊藤 : 気持ちとしては、いつでもツアー中みたいな。
――そんなkoboreにとって、もっとライブでこうしていきたいという点はありますか?
伊藤 : 最近はフェスにも出させてもらって、いろんな先輩バンドを目の当たりにすると、もうひとつ上にいきたいなと感じます。
佐藤 : フェスの現場だと、ライヴハウスとは規模も全然違うんで、最前にいるお客さんへ歌っても奥までは届かないんですよ。その認識をパッと切り替えられるようにしたいし。真面目な課題はそこですね。
――ふざけた課題だと?
佐藤 : もう少し、ケータリングに精を出す!
安藤 : そうだね!
佐藤 : いっぱい有名な人がいるからって、躊躇しないこと。フェスに出始めの頃って、先輩もいるし、ハムの串焼きを1本だけ食えればいいみたいな感じで。しかもそれを楽屋まで持って行って食ってたんです。そういうのもライブに出ちゃうから。
――串焼きを2本取ることに遠慮してて、いいライブができるかと。
佐藤 : だから、ばっちり食って、ばっちりライブして、ばっちり食おう、みたいな(笑)。
――その躊躇しないのがkoboreには似合ってると思いますよ(笑)。では、ツアーへ向けての意気込みをお願いします。
伊藤 : いつもツアーではひと回り成長したいなと考えてるんですけど、試行錯誤しながらも決めるところはしっかり決めて、バチッとやっていきたいです。
安藤 : 「koboreのライヴは熱いね」といってもらえるんですけど、ただガムシャラなだけじゃなく、どっしりと構えて、余裕のある熱さを伝えていきたいですね。
佐藤 : 口だけでいってるバンドにはなりたくないんで、自分たちが各地へ赴いて「こういうバンドをやってるんだぜ!」と、すべてを表現できるツアーになれば、またひとつ大きくなって、その次のツアーもまわれるだろうし。だから、発信したモノがそのままみんなに届けられるツアーにしたいですね。
kobore「ダイヤモンドTOUR2019」
10月18日(金)千葉 千葉LOOK
10月22日(火/祝)神奈川 横浜F.A.D
10月24日(木)静岡 静岡UMBER
10月25日(金)岡山 岡山CRAZYMAMA 2nd Room
10月27日(日)高知 高知X-pt.
10月28日(月)兵庫 神戸太陽と虎
10月30日(水)京都 京都GROWLY
10月31日(木)広島 広島Cave-Be
11月2日(土)熊本 熊本Django
1月3日(日)大分 大分SPOT
11月6日(水)石川 金沢vanvanV4
11月8日(金)長野 松本ALECX
11月9日(土)新潟 新潟CLUB RIVERST
11月12日(火)福島 郡山#9
11月13日(水)宮城 仙台MACANA
11月15日(金)北海道 札幌BESSIE HALL
11月18日(月)岩手 盛岡CLUB CHANGE WAVE
11月19日(火)茨城 水戸LIGHT HOUSE
11月21日(木)福岡 福岡Queblick
11月22日(金)香川 高松DIME
11月29日(金)東京 渋谷WWW X
12月5日(木)大阪 梅田Shangri-La
12月7日(土)愛知 名古屋RAD HALL
【チケット詳細はコチラから!】
https://l-tike.com/kobore/
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