“原点回帰”の4thアルバム「Sparkle」
SIRUPのブレイクとともに終わりを告げた2010年代。長らく続いてきたクラブミュージック全盛の時代がこれから先どうなっていくのか、その行き先を占う上で最重要とも言えるひとりのシンガーソングライターがいる。
メジャーデビューから約4年。少しずつその支持を拡大し、すでに大きな影響力を持つiriは、どこまでシーンを牽引できるのだろうか。3月25日にリリースされる約1年ぶりの4thアルバム「Sparkle」に、少し先の未来を見た気がした。
シンガーソングライター・iriが歩んできた道
iri(イリ)は神奈川県逗子市出身・在住のシンガーソングライター。中学生のころ、アリシア・キーズのパフォーマンスを観たことがきっかけで音楽を道を志した。高校生となってからは本格的にボイストレーニングを開始。大学時代にはギターを独学で学び始め、弾き語りスタイルでライブ活動をスタートさせている。
契機となったのは2014年。NYLON JAPANとSony Musicが共同で開催したオーディション・JAMでグランプリを獲得したことだった。その後、活動を本格化させたiriは2016年、ドノヴァン・フランケンレイター来日公演のオープニングアクトに抜擢。これを皮切りに大型音楽フェスへ次々出演すると、一躍注目を集める存在となった。同年10月にはビクター・Colourful Recordsよりアルバム「Groove it」でメジャーデビュー。これまでに3枚のオリジナルアルバムをリリースするなど、気鋭のアーティストとして不動の地位を確立しつつある。最近では、sexyzoneや私立恵比寿中学への楽曲提供、井上陽水トリビュートアルバムへの参加と、さらに活躍の幅を広げる彼女。音楽フリークなら知らないで済まされない、次代のR&B系シンガーソングライターがiriである。
iriの世界を彩る2つのパーソナリティ
なぜiriの音楽はこれほど人を惹きつけるのだろうか。その理由は彼女の歌う声と紡ぐリリックにある。
iri「Wonderland」Music Video【Full ver.】
iriの声はトレンドのポピュラーミュージックによくある、いわゆる“キャッチー”な声ではない。言葉にするならば、パワフルでブルージー。ルーツミュージックのボーカルを聴いているかのような趣だ。一聴してチャートシーンでは敬遠されてしまいそうにも感じる彼女の声だが、ステレオタイプな音楽に食傷気味だったコアなリスナーには唯一無二の魅力的な個性として映った。邦楽と洋楽の境目が曖昧となってきている今だからこそ、“本物志向”のその声がより多くの人を魅了したのだろう。iriのソウルフルな歌声は、R&Bという彼女の音の世界と混じり合い、あまりにも自然に受け入れられている。
そんな彼女の声を唯一無二の魅力として感じているのは一般のリスナーだけではない。iri自身が影響を受けたミュージシャンとして名前を挙げるシンガーソングライター・七尾旅人もまた、その声に魅了されているひとりだ。彼はiriの声を「重心の低い、日本人離れした声質」「高い歌唱力」「トレンドに沿ったサウンドの上で歌っても、そこにブルースを感じられる」と評価する。その道のプロフェッショナルをしてそう言わしめるその声が、彼女の1番の魅力となっていることは間違いないだろう。
iriの、重心の低い日本人離れした声質と高い歌唱力の底にある、哀しみや不器用さみたいなものが、好きだ。今のトレンドに沿ったサウンドの上で歌っても、そこにBluesを感じられる。そういうやつはめずらしい。年齢を重ねた後のiriの歌も楽しみ。
— 七尾旅人(本日アルバム発売📀) (@tavito_net) March 1, 2020
また、七尾旅人は、iriの世界の底にある「哀しみや不器用さみたいなもの」が好きだとも語っている。彼の提示するそれは、iriが紡ぐリリックから感じ取ることができる。
実は、そのパワフルなボーカルとは裏腹に、幼い頃のiriは内向的な少女だったという。彼女のリリックの原点は、小学生の頃に書いていた落書き。「理解されないこと」「寂しい気持ち」といったある種ネガティブな感情を、文字にしてノートに書き表していた過去がある。今、iriのリリックを支えるのは、内向的だったころに抱えていた感情そのものだ。先に紹介した楽曲「Wonderland」には、「始まりはそういつも暗いとこ」「振り返ればいつだって同じ失態ばかりで」といったフレーズが並ぶ。たとえキャッチーで明るいR&Bナンバーだったとしても、自分だけの目に映るオリジナルの色は失わない。そのリリックが持つ人間らしさ、生々しさ、そして言葉に対するこだわりもまた、iriの魅力となっているに違いない。
井上陽水トリビュートアルバムでiriが歌唱した「東へ西へ」
4thアルバム「Sparkle」をリリースし、iriはまた新しいステージへ。
iri「Sparkle」Music Video
そんなiriは来たる3月25日、4枚目のオリジナルアルバムとなる「Sparkle」をリリースする。高い評価を獲得した前作「Shade」から約1年ぶりとなる4thアルバムは、ソニーワイヤレスヘッドホンCMソング「Sparkle」や、セイコールキア25周年CMソング「24-25」、Webドラマ「恋愛ドラマな恋がしたい ~Kiss to survive~」主題歌「SUMMER END」などを収録した渾身の意欲作だ。iriによると、「リスナー目線でわかりやすい音楽を作ろうとしていたこれまでに対し、自分目線でどうすればもっと音楽を楽しめるかを意識した」作品なのだという。短いスパンでフルアルバムのリリースが続いているが、まったく密度が落ちていないどころか、さらに凝縮・洗練されていく彼女の世界に驚かされてしまった。
iri「24-25」Music Video
流れ出した瞬間にアルバムすべてを聴くしかなくなってしまう1曲目「Clear color」。
ペトロールズ・三浦淳悟のベースが躍動する「Runaway」。
タイアップで話題のリードトラック「Sparkle」。
アルバム中でも比較的キャッチーな3曲が終わると、同作はまた違った表情を見せてくる。
iriのどっしりとしたボーカルに、ファンク・アプローチのアレンジが疾走感を与える「Coaster」。
アップテンポ中心のラインナップの中でアクセントとなっているミディアムバラード「miracle」。
シンガーソングライター・Reiがハードロックコンテクストのギターフレーズを轟かせる「Freaking」。
自身が過ごしてきた人生を回顧するリリックが印象的な「24-25」を経て、アルバムは終着点へ。
“夏の終わり”の憂いを80年代R&Bを感じさせるアレンジで表現した「SUMMER END」。
サーフミュージックの香りに彼女のホームタウンの風景が浮かび上がる「COME BACK TO MY CITY」。
「Best Life」という楽曲で締めくくられる同作には、また新しいステージを意識する彼女の意気込みのようなものを感じずにはいられない。
次々と表情を変える10曲の中心にあるのは、いつも揺るぎのないiriのボーカルとリリシズムだ。「経験を重ねた今、自分がイメージする方向性を自分主導で形にしていきたい」と話す彼女。クラブミュージックシーンの牽引を期待される新星に新たなマストディスクが誕生した。
4th album「Sparkle」
配信:https://jvcmusic.lnk.to/Sparkle
初回限定盤(CD+DVD)
VIZL-1751
¥3,800+tax
通常盤(CD)
VICL-65352
¥3,000+tax
【収録曲】
01. Clear color
02. Runaway
03. Sparkle ソニー ワイヤレスヘッドホン CMソング
04. Coaster
05. miracle
06. Freaking
07. 24-25 セイコー ルキア 25th Anniversary広告「あなたの好きを、もっと。1995-2020」篇CMソング
08. SUMMER END Abema TV「恋愛ドラマな恋がしたい ~Kiss to survive~」主題歌
09. COME BACK TO MY CITY
10. Best life
初回限定盤DVD収録内容
「Sparkle」「24-25」「Wonderland」Music Video
「 iri Presents “Wonderland” 」@恵比寿ガーデンホール(2019年10月29日)
01. Keepin’
02. breaking dawn
03. blue hour
04. ナイトグルーヴ
05. 半疑じゃない
06. Wonderland
07. Fancy City
08. Flashlight
09. 飛行
10. mirror
11. SUMMER END
12. 無理相反
13. Only One
14. rhythm
15. 会いたいわ
iri
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