『IKI』が「大事」を更新した
MCでは、wowakaがアルバム『IKI』について「自分にとってもバンドにとってもターニングポイントになった作品」と言及。
「すべての作品が大事なんだけど、その『大事』を更新できた。胸を張って、これが俺らの一枚ですって言える。その良さを今日また上書きできるように、攻め攻めのバチバチで参りますんで、よろしくお願いします」
オーディエンスが大歓声で応える中、『KOTONOHA』で後半部がスタート。
続く『ハグレノカラー』では、曲中盤、ライブならではのセッションが挟まれる。これはwowakaが指揮者となって3人を操り、指をさされたメンバーがソロパートを演奏するというもの。ゆーまお(Dr.)が激しくも滑らかなドラムソロを、イガラシが色気のある激しいチョッパーを、シノダが火を噴くような早弾きをそれぞれ披露。楽器のフリースタイルバトルの様相で、オーディエンスの熱はさらに高まっていく。そして徐々にドラム、ベース、ギターの3つのパートが絡み合い始め、会場の熱が最高潮に達したところで、wowakaがギターをかき鳴らし、ふたたび『ハグレノカラー』終盤部へ。あまりにも見事なセッションは、この日のハイライトのひとつとなった。
(この部分、音源化しないかなあ……?)
『踊るマネキン、唄う阿呆』や『シャッタードール』といった人気曲を挟み、再びMCへ。
wowakaはオーディエンスひとりひとりの顔を見ながら「みんなの顔見てると、みんな俺に似てるなあ。不器用で、愛されたくて、抱きしめられたくて」と語る。
「そういう人が一堂に会せば、何かすごい化学変化が生じるんじゃないか。その予感は間違ってなかったって今感じてます。みんなが幸せになればいいな。俺もがんばるから、みんなもがんばって生きていこうね」と続けると、フロアからは大きな拍手が起きた。
そして「今日ここにいるみんなの前でこの歌を歌うためにこのステージにあがりました」と『リトルクライベイビー』を披露。この曲はアルバム『IKI』のリード曲であり、wowakaの言葉を借りれば「アルバムの心臓のような曲」でもあり、ヒトリエの楽曲のなかでもっともポップな曲でもある。そのメロディや歌詞から、長い苦しみの果てに彼らがたどり着いた歓喜を感じることができるだろう。
最後に、アルバム中でいちばん最後に歌詞を書いて歌入れしたという『目眩』を演奏し、ライブ本編が終わった。
アンコールでは、wowakaとシノダが「ツアーを終わらせたくないね」「もう一回最初からやりたいね」と名残惜しそうに話す中、まずはヒトリエが主催するツーマン企画・nexUsの第三回開催がアナウンスされた。過去にはベッド・インやぼくのりりっくのぼうよみがゲストとして迎えられているが、今回はゆーまおがキュレーターとなり、9月11日に恵比寿LIQUIDROOMで開催されるとのこと。
「ようやく決まりました。みなさんお待たせしました」と場を盛り上げるゆーまおだったが、対バン相手については「まだ言えませ〜〜〜〜ん」とオーディエンスを笑わせた。
(後日発表されており、お相手はパスピエ!)
皆様お待たせしました。今回、下北沢GARAGEからの戦友であるパスピエをお誘いしました!
9月11日、明るい良い日にみんなでしようぜ!!恵比寿リキッドルームで待ってるよ!!#ヒトリエ #パスピエ— ゆーまお (@_Yumao_) 2017年5月18日
そして『カラノワレモノ』『センスレス・ワンダー』『SisterJudy』『モンタージュガール』と4曲も立て続けに披露して再びフロアを熱狂の渦に巻き込み、『全国ワンマンツアー2017”IKI”』ファイナル公演は幕を下ろしたのだった。
助走もクールダウンもなく、全編で全力疾走し続けるような二時間は、体感的にはあっという間に過ぎた。それだけたくさんのものを詰め込んだ充実のライブだったということだろう。
「第六感の向こう側」に届く声と音
ヒトリエの楽曲の特徴のひとつに、短いフレーズの中に圧倒的な情報量を詰め込んでいることが挙げられる。この日のライブは、そうした彼らの楽曲群の特徴を忠実に反映した怒涛のライブだったように思う。しかも、あまりにも美しくあまりにもエモーショナルに演奏されるため、彼らのパフォーマンスは、オーディエンスの体の中にスムーズに入ってくる。
普通、これだけ圧倒的な情報量のライブを見たら、きっと疲れてしまう。
しかしヒトリエのライブで精神的にくたびれるようなことはない。 彼らのパフォーマンスは疲労を忘れさせてくれる。そうして、明日からの生きる糧のような何かをオーディエンスの体の中に残してくれる。
彼らの言葉や音や、人生に対する姿勢が、私たちオーディエンスの「第六感の向こう側」で光る感情を呼び起こしてくれるからだ。
この声
何処までも行け
第六感の向こう側で光る感情に触れて
手を離せはしないのだから
君の泣き声が、僕の心臓を動かしているの
もう止めることなど出来やしないよ
(『リトルクライベイビー』)
逃避ではなく、現実と戦うために
また、『さいはて』という曲にはこんな歌詞がある。
積もり積もる煌めきの色
不確か、されど鮮やかな色
もう目を逸らさず行けるよ、行けるよ廻り廻る時間の最果てで次は僕が君の元へ行くよ
さあ始めよう、世界を
世界を
此処で弾けるありとあらゆる感情の煌めきを、
愛せるともう迷わず言えるよ、言えるよ
(『さいはて』)
私たちの人生には、あまりにも不確かなことが多すぎる。
しかし、その不確かなものでさえ、角度を変えてみれば何もかも鮮やかで煌めいているものなのだと、ヒトリエは教えてくれる。
このバンドのリーダーであるwowakaは、かつてひとりでボーカロイド曲を作っていた頃、自身を「現実逃避P」と呼んでいた。
しかし、リスナーに歩み寄りを見せる今の彼には、もうこの呼び名はあまり似合わないだろう。
なぜなら、ヒトリエの音楽は逃避ではなく、現実と向き合い、それと戦うための音楽なのだから。
母さんが新木場見て感動したって言ってくれた。音楽、やっててよかった。
— wowaka (@wowaka) 2017年5月9日
セットリスト
01.心呼吸
02.ワンミーツハー
03.インパーフェクション
04.Daydreamer(s)
05.イヴステッパー
06.るらるら
07.doppel
08.極夜灯
09.さいはて
10.KOTONOHA
11.ハグレノカラー
12.5カウントハロー
13.踊るマネキン、唄う阿呆
14.シャッタードール
15.リトルクライベイビー
16.目眩
EN1.カラノワレモノ
EN2.センスレス・ワンダー
EN3.SisterJudy
EN4.モンタージュガール
ライブ情報
ヒトリエ主催ツーマン公演「nexUs」vol.3
w/ パスピエ [キュレーター:ゆーまお]
9月11日(月) 恵比寿LIQUID ROOM
出演:ヒトリエ / パスピエ
開場 18:00 / 開演 19:00
チケット料金:前売 ¥3,500(税込) 別途ドリンク代 \500
<先行予約>
ヒトリエMOBILE会員:5月19日(金)18:00~2016年5月21日(日)23:59
チケット最速先行予約:5月23日(火)18:00~2016年6月4日(日)23:59
専用URL:http://eplus.jp/hitorienexUs
チケット一般発売日:7月15日(土) 10:00~ イープラス、ぴあ、ローソンにて
お問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999
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