ジャパニーズ・ソウル・レジェンド&ゴスペル・シンガーと紹介されて登場したのは、今年活動歴50周年を迎えた小坂忠。ステージにはRIRIが再登場し、Jambaによる教会風のピアノに導かれてまずデュエットで歌ったのは、吉田美奈子が鈴木雅之に提供して自身でも歌っていた“Liberty”。続く“Jesus Loves Me”と“Amazing Grace”のゴスペル曲メドレーも、小坂いわく「孫みたい」というRIRIとデュエットし、Jambaのチャーチなオルガンとともに、前半ではゴスペル・シンガーとしての側面を見せる(ブルース・フィーリングを打ち出して歌った後者は、今年9月にデビュー50周年を記念して出した初のカヴァー・アルバム『COVERS』にも収録)。その後、武田と哲也をステージに呼び込んでからはソウルのレジェンドとしてパフォーマンス。ティン・パン・アレーの演奏でシティ・ポップスやレア・グルーヴの文脈でも人気を集め、村上てつやが「聖典」と表現した75年の名作『HORO』から、エイプリルフール時代の盟友である松本隆と細野晴臣が作詞/作曲した和製フィリー・ソウル的な“しらけちまうぜ”を3人で歌った。そして、最後は同じく『HORO』からの曲で、グルーヴィなファンク“ゆうがたラブ”をソロで披露。バック・コーラスの鎌田みずきがキリッとした美声を添えたことも、この曲の躍動感を2倍にも3倍にもしたと思う。
トリを務めたのは久保田利伸。再登場した森大輔による美しい鍵盤の音色に合わせて「ナニワに集うパーティー・ピーポ~」などと観客を軽く煽りながら歌い始めたのは、お茶の間で最も有名な久保田のナンバー“LA・LA・LA LOVE SONG”だ。ミラーボールも回りながらのステージはまさしくパーティ・タイムといった感じで、森も歌声を挿み、原曲のナオミ・キャンベルのパートは鎌田みずきが担当。そのパーティのりのまま、曲間のトークで森をいじり、それに反応した観客もいじって笑いを誘うあたりはユーモアを解す久保田ならではといったところか。森はもう一曲、“雨音”でも久保田をサポート。“雨音”はもともとレゲエをテーマにした91年のアルバム『PARALLEL WORLD I KUBOJAH』で披露していたメランコリックな曲だが、ボサノヴァをテーマにした2013年の『PARALLEL WORLD II KUBOSSA』にボッサ・タッチの再録版を収録しており、今回のステージでは後者のヴァージョンでしっとりと歌い上げた。
また、ちょうどこの日は、これまでに国内外のアーティストとコラボした曲のみを集めた企画アルバム『THE BADDEST~Collaboration~』の発売日でもあったのだが、そこに新曲として収録したミュージック・ソウルチャイルドとの共演“SUKIYAKI~Ue wo muite arukou”(坂本九“上を向いて歩こう”の、テイスト・オブ・ハニー版を意識した英語詞カヴァー)を、今回は初顔合わせとなるNao Yoshiokaとのデュエットで披露。ふたりともネオ・ソウルに接近した作品を作っていることもあってか、久保田は「ネオ・ソウル・スロウ・ジャムでいってみましょう」と、バンドのスキルを見込んで、原曲とは大胆にアレンジを変えた新解釈のカヴァーに挑んだ。それをNaoには自分のスタイルで自由に歌わせる久保田の懐の深さ、それに艶やかな歌声で応えたNao……ともに全米デビューを果たしている両者が見つめ合うように歌ったこれには、もう息を呑んで聴き入るしかなく、今回のステージにおけるコラボのハイライトと言っていい瞬間だったように思う。そして、本編の最後は“M☆A☆G☆I☆C”。オリジナルにも客演していたKREVAが先ほどの“音色”のお返しとばかりに登場し、ふたりによる2年半ぶりの共演で本編の最後を華々しく飾った。
アンコールは出演者全員が横一列に並び、アース・ウィンド&ファイアのヴァージョンで知られるスケールの大きいミディアム・ファンク・チューン“Can’t Hide Love”を、今年2月に亡くなったモーリス・ホワイトへの追悼の意も込めてカヴァー。アース・ウィンド&ファイアと言っても“September”や“Let’s Groove”ではなく、本国のR&Bアーティストやブラック・コミュニティの間で支持の高い曲を歌うあたりに、このメンツならではのこだわりを感じさせた。
ファンク・ブラザーズかレッキング・クルーかというくらいのセンスとスキルでシンガーたちを支えたバンドの名演も語り草になるだろう今回の「CROSSOVER JAM “COOL VIBES”」。コンセプトも出演者も全てが素晴らしかった。ソウルやR&Bの粋や作法を日本のリスナーにより広く深く伝えるために、今後も続けていってほしいものだ。
Text_Tsuyoshi Hayashi
FM COCOLO CROSSOVER JAM ”COOL VIBES”
この超クールなライヴの模様は
12月24日(土)20:00~22:00の2時間にわたり、
特別番組として “FM COCOLO”でオンエアーされます。 ぜひチェックしてくださいね
FM COCOLO (https://cocolo.jp/)
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