『平行線』という言葉に込められた意味
――『平行線』という言葉には悲しい響きがあると思います。平行線って交わらないから。でも、ずっと向かい合って同じ方向に進むという意味では、人間の愛みたいなものを端的に表している言葉なのかなと思いました。
さユり:まさにそうです。平行線っていうのは、まずは好きな人と自分が交われない「もどかしさ」、そして自分の望みと現実が交われないっていう「もどかしさ」ですね。
それともう一つが「希望」です。交われなくても、平行線のままでも一緒にいられること、繋がることってあるんじゃないかっていう。
――この言葉に象徴されるように、さユりさんは、物事の本質を端的に一言で言い表す能力が高いと感じました。その歌詞づくりは誰に影響を受けているんでしょうか?
さユり:あまり、この人に影響を受けたっていう感覚はないですね。
――本も読みますか?
さユり:すごく好きです。最果タヒさんが好きですね。最果タヒさんは、目の前にあることを大事にしている印象があって。
人って、たとえば誰かを見た時に、無意識に今まで見てきた知り合いの誰かに似てると思ったり、何かに似せようとする心理が働くと思うんですね。でも最果タヒさんの詩には、その「もの」をその「もの」として見ようとしている優しさがあるような気がするんですよね。自分もそういう風に曲を書きたいし、生きていきたいなって思います。
――さユりさんの曲は、インディーズ時代の曲にも切実なものが多くて好きなんですけど、今はより他者に開かれてるような感じがします。
さユり:『平行線』は特に、今まででいちばん、聴いてくれる人を意識して作りました。それはアニメがあったから、まずはアニメの主人公たちのこれからを照らせるような曲にしたいなって思って。ということは、アニメを見てくれている人のその先も照らしたいという思いになって、救いが見える曲にしようと思いました。
今は曲を書くこと自体が自分の中で進んでいく行為に近いので、曲を書きながら自分も答えが見えるように探して行く、そういう感覚で作ってます。
――答えが見えないと完成させられないですか?
さユり:全部の曲がそうってわけじゃないんですけど、やっぱり人に聴いてもらいたいから、だからそれには答えが必要なのかなと思います。どこかへ進んでいくエネルギーが必要だなと思って、そういう意識で書いてます。
――ちなみに、今回カップリングに収録した曲って、どういう基準で選んだんでしょうか?
さユり:それも「平行線」っていうテーマが軸にあって。交わりたいけど交われないものを歌った曲を入れました。初回盤の方には『ネバーランド』をバンドver.で。『ネバーランド』も、現実と夢というか、そういう交われないものをテーマにしているので。期間生産限定盤の方には『スーサイドさかな』という曲が入ってて、魚がお花に恋をする歌なんですけど、これも交われない。通常盤に入ってるのは『BANDAGE』っていう、一番この中で古い曲なんですけど。
――まだソロになる前、二人で活動してた時の曲ですよね?
さユり:そうです。大人と子供っていう、わかってもらえないもどかしさっていうところが「平行線」っていうテーマに近いので、入れました。
境界線と平行線について
――さユりさんは歌う時に裸足になりますよね。今回のMVも裸足です。裸足になるのはなぜですか?
さユり:私は、もともと路上ライブをしてたんです。路上で裸足になると汚れるので、ちゃんとそこで歌ったっていう感覚になれるんです。たとえば新宿だったら、すごい吸い殻が落ちてたりして、「あ、汚れてる。ちゃんとここにいる」って。そういう「ちゃんとそこにいた感覚」が好きなんですね。
――それはもしかして、「居場所がない」って思いと通ずる?
さユり:あ、そうなのかもしれません。意識してなかったけど、あると思います。
――さユりさんは「境界線が好き」だそうですね。これについて詳しく教えていただけますか?
さユり:境界線は、たとえば新宿区と渋谷区の間を歩いてるとしますよね。新宿区と渋谷区の間は、何も意識しないとただの道なんですけど、確実にそこに線があって、そこをまたぐだけで行政が変わる。そこには物語があるわけで、その物語を想像するのが好きなんです。しかもその線って人が決めたものだから、すごく不確かで。それがもどかしかったり、なんでなんだろう?って考えたりするのが好きです。
あとは、皮膚。人と人との境界線。そこを歌で飛び越えていきたいんです。声が中身なので、自分の中身を空気に混じらせることで、聴いている人の中に入っていけたらと思うんです。
――音楽を始めてから境界線が好きになったんですか?
さユり:ちゃんと言葉で「境界線が好き」って意識したのは音楽始めてからですけど、昔から漠然とあったのかなって思います。きっかけがあったわけではないので。あ、でも、もともと地図を見るのが好きで。国境とか見て、「なんでこういう区切られ方をしてるんだろう?」って思うんです。
――昔から境界線に興味があったというエピソードは、さユりさんの音楽活動における基本的なスタンスに繋がっていると思いました。今の話を聞くと、「平行線」という言葉が出て来るのには納得感があります。
さユり:なので、今回『平行線』というテーマで曲を出せたのは、満を持した感じがあります。
さユりの運命の出会い
――最後の質問ですが、さユりさんの「運命の出会い」って、何でしたか?
さユり:ぱっと思いついたのだと、坂元裕二さんっていう脚本家の方。
――お、『カルテット(’17)』ですね!
さユり:『カルテット』ですね。昔からドラマを見ていて。あまり脚本家とか意識したことなかったんですけど、ある時、過去の好きな作品を振り返ったら、坂元裕二さん率がすごい高くて。「これも坂元裕二さん、あれも坂元裕二さん」って。無意識に惹かれてて、これは運命だって思いました。
――ちなみにどのドラマが好きですか?
さユり:まず、『わたしたちの教科書(’07)』っていう作品。それから、人生で一番最初に見た作品も坂元裕二さんで、『あなたのとなりに誰かいる(’03)』っていうすごい昔の作品。今やってる『カルテット』も好きですし、『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう(’16)』も好きですし、『Woman(’13)』も好き。
脚本の言葉っていう観点で見ると、坂元裕二さんの作品にも、さっき言った最果タヒさんと共通する部分があるなって思いました。対象を純粋に見ようとしている言葉だなって。好きですね。
改めて。🌎🌛
本日「平行線」を発売しました!
交わりたくて交われなくて、でもそれでもって変えたくて 変わりたいから作ったCDです手にとってください、沢山聴いてね!🔵https://t.co/F2qDpGTIFp 🔵https://t.co/tGxCkMpXwW#クズの本懐 pic.twitter.com/e4uSStdZjv
— 酸欠少女 さユり (@taltalasuka) 2017年3月1日
酸欠少女さユり:
“酸欠少女”さユりは、人と違う感性・価値観に、優越感と同じくらいのコンプレックスを抱く“酸欠世代”の象徴=「酸欠少女」として、アコギをかき鳴らしながら歌う、20歳の2.5次元パラレルシンガーソングライター。
さユりは3人に分裂し生息しており、それぞれの活動領域は2次元・3次元とパラレルで神出鬼没である。
フジテレビ“ノイタミナ”アニメ「乱歩奇譚 Game of Laplace」ED「ミカヅキ」で2015年8月26日メジャーデビュー!!
その荒削りな美しさが作品世界と激しくリンクし、絶大な支持を受け、デビュー作からヒット。
2016年2月24日には2ndシングルとして、同じくフジテレビ“ノイタミナ”アニメの「僕だけがいない街」ED「それは小さな光のような」をリリース。
オリコンデイリー7位、iTunesトップシングル総合チャート最高3位とヒット。
勢いはさらに加速し、その歌世界と存在に共鳴する“さユりマニア”が続出中!
2016年6月24日には配信限定EP「るーららるーらーるららるーらー」をリリースし、iTunesトップアルバム総合チャート1位!を獲得。今後の活動に目が離せない新次元アーティスト!
(オフィシャルサイトから引用)
酸欠少女さユりオフィシャルサイト
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リリース情報
RADWIMPS・野田洋次郎 楽曲提供&プロデュースによる4thシングル「フラレガイガール」を2016年12月にリリースした”酸欠少女”さユりが、早くもニューシングル「平行線」を2017年3月1日にリリース。
「平行線」は2017年1月12日よりフジテレビ”ノイタミナ“にて毎週木曜24:55から放送中のTVアニメ「クズの本懐」のEDに決定!
さらに、同じくフジテレビにて先行配信(FOD)、毎週水曜日25:55から放送中のドラマ版「クズの本懐」のEDにも決定。
さユり自身3回目の”ノイタミナ”アニメEDとなる新曲「平行線」は、月刊「ビッグガンガン」で好評連載中の横槍メンゴの人気漫画が原作のアニメ「クズの本懐」主人公のために書き下ろした楽曲。「クズの本懐」主人公の花火を軸とした、”交わりそうで交われない”登場人物たちの純粋で歪んだ恋模様や“平行した”心情がそのまま、さユりの歌の世界と繋がった、2.5次元パラレルシンガーソングライターさユりの真骨頂。
ドラマとアニメが同タイミングで完結する「クズの本懐」の、平行した世界で歪んでいくその心情を歌うさユりの”翳(かげ)と希望”の交錯した歌声が、水曜はドラマのエンディング、木曜はアニメのエンディングという、1クールにわたり2夜連続で儚くもどかしい想いを彩る。
今回のシングルも3形態で違うc/wを収録。
初回生産限定盤DVDには、「平行線」MV(フルレングスver)を収録。
期間生産限定盤DVDには、アニメ「クズの本懐」ノンクレジットED映像を収録。
さユりの平行世界を描く、本懐の2017年第一弾シングル!
(オフィシャルサイトより抜粋)
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