3. ショパン『雨だれ』
大胡田 : 母親が実家でピアノ教室を開いていることもあり、4歳からピアノを習っていて、これはその時使っていた楽譜です。いろいろ弾いてきたけど、ショパンがいちばん好きなんです。
――結構、書き込みがありますね。お母さんに教わっていたんですか?
大胡田 : いや、一度教えてもらったことがあるんですけど、教え方が怖すぎて「他の先生に習いたい」って言いました(笑)。これは先生の書き込みです。『雨だれ』という曲が好きで、この曲を弾いてからショパンを好きになりました。
――ものすごく年季を感じる楽譜ですね。ピアノはいつまでやっていたんですか?
大胡田 : 中学3年生までです。高校は家から遠かったので、レッスンを続けるには疲れてしまって。12年間続けていました。
――この楽譜を東京に持って来ているということは、よっぽど大事にされているということですよね。
大胡田 : そうですね。いつかまた落ち着いたらピアノを弾こうと思ってこの楽譜を持って来て、落ち着かないまま今に至るという(笑)。いろんな楽譜があるけど、この『全音楽譜出版社』のシリーズがいちばん好きで、基礎練習の本も全部揃えました。デザイン萌えもあります。
――この破れているところなんかも、また味があって良いですね。
大胡田 : でもこれ、たぶんわたしが使う前に他の生徒が使っていたものだと思うんです。さすがにこんなに破れるほど、練習してない(笑)。
――でも、10年も習っていて、それから今はさらに10年以上経っているわけですから、このような状態になるのは不思議ではないですよね。
大胡田 : いや、実はこの本の曲は3曲くらいしか練習してないんです。だから書き込みがあったのはその3曲だけ。
――どんなことを書き込んでいたんですか?
大胡田 : 注意すべきことを先生が書き込んでくれていたんですね。「節、フレーズ刻み」とか「スタッカートしっかり」とか書いてある。
――この曲、結構苦労した感がありますね。すべての小節に書き込みがある。「はっきり!」って書いてあります。
大胡田 : これは激しいですね。まじめにやってたんだなあ。
――『雨だれ』はどうですか?
大胡田 : 『雨だれ』は、弾くだけならそれほど難しくないんです。だから書き込みも少ないはず……あ、「ペダルの位置気をつけて」って書いてありました。これはたしか、踏むタイミングが難しかったんですね。優しい先生でした。今でも実家に年賀状が届きます。先生もうちのママの生徒だったんですけど、母とは違ってすごく優しかった(笑)。ママの妹もうちのピアノ教室で教えていて、今考えれば、まわりのみんながピアノを弾いていました。またいつか、ピアノをやりたいですね。
――ピアノで弾き語りをやるのはどうですか?
大胡田 : 最初に組んだバンドでは鍵盤を弾きながら歌っていたんですよ。
――パスピエを結成する時にスパッと鍵盤をやめてボーカルに専念するようになったんですよね。未練などはないのでしょうか?
大胡田 : それはないですよ。だって成田(ハネダ)さんみたいなすごい人がいたら、もうわたしにできることはないです。成田さんに出会ったことで「自分の得意分野を伸ばすべきだし、もっと自分がやるべきことがあるはずだ」と感じて、歌をちゃんとやろうと思ったんです。
(第4回へ続く……)
作品情報
パスピエ 5th Album
2019.05.22
『more humor』
WPZL-31587/88 ¥3,241円+税
[収録曲]
01 グラフィティー
02 ONE
03 resonance
04 煙
05 R138
06 だ
07 waltz
08 ユモレスク
09 BTB
10 始まりはいつも
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