大森靖子が待望のニューアルバム『kitixxxgaia』をリリースした。率直な感想としては、ポップなメロディの楽曲が多かった。しかし、それらの楽曲に散りばめられている「生きる」、「死ぬ」というワード。大森靖子がこれまで歌い続けてきたテーマが本作にも強く表れている。聴き終えたあとも頭の中に強く残るリリックが問いかけているのは、「生きる」とは何かということ。倫理観の根源を揺さぶられるような楽曲の数々に、2017年邦楽シーンの新たな可能性を感じた。
ミーティアでは大森靖子にメールインタビューを敢行。『kitixxxgaia』への想いを中心に今後の活動についての話も伺った。
Interview_Michiro Fukuda&Sotaro Yamada
Edit_Michiro Fukuda
(大森靖子『ドグマ・マグマ』MV)
『kitixxxgaia』で魅せた大森靖子という芸術品
――1曲目、『ドグマ・マグマ』の歌詞は、現代のYESかNOのみの二元的なシステムを批判した上で、思考停止して何も考えていない人ほど生きやすく、本来的な人間の自由が死んだことにすら気づいていない、という指摘のように思えました。“マイノリティを作った罰として死んだ目をしている人がいる”と考えるようになった経緯はどんなものだったのでしょうか?
大森靖子:経緯…最初からですね。
――デストルドーが大森靖子さんの音楽の芯のひとつだと思いますが、『kitixxxgaia』に収録されている楽曲の多くで、「生きる」「死ぬ」というワードがよく見受けられました。大森靖子さん自身は生きにくさの先にそれを全て壊すための「死」があり、その先にさらなる「生」があると考えているのでしょうか?
大森靖子:美しく息をしたいだけです。このクソシステムで生きにくくない人なんているのなら、ただ盲目的なだけかと思うので、そういう人は生きるということをきちんと意識して生きているのだろうか、一歩を踏みしめるということが、生きる時間を、体力を、気持ちをひとつ使うということ、未来を変えること、と自覚して生きていきたいのです。みてきたもの全て大切にしたいんです。じゃないと勿体無いじゃないですか。
そうやってちゃんと生きてちゃんと傷ついて、ちゃんと人の気持ちを想像できて優しくできる人のことを、生きづらい弱者というカテゴライズにぶち込むための「キ●ガイ」以上の差別用語は五万とあります。なぜ「キ●ガイ」だけを禁止しておけばセーフになるのか。なんの意味もないですね。
――「神」と崇められることを好まないアーティストは多いですが、大森靖子さんはこのアルバムで、自身を「神」と崇めることを許しています。それは大森靖子さんを「神」とすることで救われる人がいることを大森さん自身が分かっているからだと思います。大森靖子さんは当初からこういったリスナーとの向き合い方をしていたと思いますが、何故、リスナーとこのような向き合い方ができるのでしょうか?
大森靖子:ロックスター信仰の構造だと思います。ロックしたい、は「何者かになりたい」だと思っています。その何者かとはまぎれもない自分自身じゃないですか。だから思い描くかっこいい自分が今の自分と相違していた場合自分が大嫌いになったり、創造的自殺として何度も殺すことができて、その行程で神様を引きずり落とすぞ!と思うことでアーティストとして一歩ずつすすむことができたし、そうして出来上がった大森靖子っていうものがやっぱり私の一番の芸術作品なので、それを通して自分自身なり、自分と相反する誰かとなり、対話してもらえると、最高だなと思います。そういった意味でキチガイアというのがコミュニケーションツールになっていけたらなと。分かり合えない人と言語レベルを等しくするより、自分の言葉で喋った方が伝わること多いし、そういったやり方で私はキチガイアをつくりました。
――fox capture plan、の子、あの、DAOKOと、ゲストが多いアルバムで、それぞれのアーティストの魅力も感じることのできる仕上がりになっていました。フィーチャリングするに当たって何故彼らを選んだのでしょうか?
大森靖子:トキメキがあるか否かの一点のみです。fox capture planは以前ディズニーのコンピアルバムで「不思議の国のアリス」のボーカルに誘ってくださって、その空気がとても好きだったから。の子くんは、対バンするときにコラボして、私との子くんの声の重なりがとてもよくて、これは絶対にRECしなければと思いました。本人は「俺こんなに歌わなくてよくね?」と言ってましたが…。あのちゃんはあと30曲は描きたい。DAOKOちゃんは、対バンが決まって一曲一緒につくりたいということだったので、それなら是非製作中のアルバムにどうですかといった流れです。ロマンティックに私とDAOKOちゃんしか居ない地球最後を演出してみました。
https://youtu.be/z4vqZV62f3E
(『非国民的ヒーロー feat.の子』MV)
――『POSITIVE STRESS』は、自身も憧れを公言されていた小室哲哉さんが作曲した曲です。小室さんに楽曲提供されるという経験を経て、自身の曲作りや音楽への姿勢になにか変化はありましたか?
大森靖子:今のJ-popの基盤みたいなものをつくってきたのは小室さんだと思っていて、そのDNAが同じ時代に生きた人にはもう組み込まれまくっていて、私は小学生のときに小室さんの楽曲を耳コピしてピアノで弾くことが音楽の原体験なので、本当に嬉しかったです。小室さんをある意味でパロディ的に演出するための歌詞を宛てようとしたらはねつけられたり、私のやり方で言葉をはめても揺るぎないザ・小室さん感がでていたり、本当に楽しい作業でした。それをすることによって何が変わったかはまだわからないのですがとても良質な没頭を体験できました。
(小室哲哉作曲『POSITIVE STRESS』MV)
――ドラマ『カルテット』への出演も話題になりましたが、今後は役者としても活動する展望もあるのでしょうか?
大森靖子:展望はあまり抱けないですが、オファーいただければ挑戦したい気持ちはあります。
――最後に、6月より始まる全国ツアーへの意気込みを聞かせてください。
大森靖子:ひとつひとつのライブの意味を大切に、一瞬一瞬かけがえのない瞬間を積み重ねたいなと思います。
【リリース情報】
kitixxxgaia
発売日:2017年3月15日(水)
マグマ盤
【CD】AVCD-93627 ¥3,000(税抜)
ガイア盤【CD+LIVECD+MVDVD】
AVCD-93624~5/B ¥4,500(税抜)
ドグマ盤【CD+LIVEBlu-ray】
AVCD-93626/B ¥5,800(税抜)
カルマ盤【CD+FCDVD】(ファンクラブ限定盤)
AVC1-93628/B ¥5,000(税抜)
(CD収録内容)
1, ドグマ・マグマ feat.fox capture plan
2, 非国民的ヒーロー feat.の子(神聖かまってちゃん)
3, IDOL SONG
4, JI・MO・TOの顔かわいいトモダチ
5, 勹″ッと<るSUMMER feat.あの(ゆるめるモ!)
6, 地球最後のふたり feat.DAOKO
7, ピンクメトセラ
8, POSITIVE STRESS
9, 夢幻クライマックス かもめ教室編
10, オリオン座
11, コミュニケイション・バリア
12, 君に届くな kitixxxgaia ver.
13, アナログシンコペーション
【全国ツアー概要】
大森靖子 2017 LIVE TOUR “kitixxxgaia” 開催決定!
(日程)
日時:2017年6月2日(金)/場所:仙台 Rensa/開場18:00 開演19:00
日時:2017年6月23日(金)/場所:福岡 BEAT STATION/開場18:30 開演19:00
日時:2017年7月7日(金)/場所:札幌 PENNY LANE24/開場18:30 開演19:00
日時:2017年7月13日(木)/場所:大阪 BIG CAT/開場18:15 開演19:00
日時:2017年7月14日(金)/場所:名古屋 CLUB QUATTRO/開場18:00 開演19:00
日時:2017年7月20日(木)/場所:東京 ZEPP Diver City/開場18:00 開演19:00
■チケット
(東京公演)通常スタンディング5,500円(税込)/ 洗脳チケット(スタンディングペアチケット)10,500円(税込)
(東京公演以外)通常スタンディング4,800円(税込)/ 洗脳チケット(スタンディングペアチケット)9,100円(税込)
※入場時ドリンク代別途必要。
詳しくはオフィシャルHPをチェック
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