OKAMOTO’S(オカモトズ)が5月31日、初のLIVEアルバムをリリースした。今作はキャリア初となる47都道府県ツアー『OKAMOTO’S FORTY SEVEN LIVE TOUR 2016』で演奏された渾身の LIVE音源を筆頭に、ツアー中に制作したメモリアルな楽曲『ROCKY』も収録。さ・ら・に! 日比谷野外音楽堂のファイナル公演を全曲収録したBlu-rayも同梱されているという、豪華な内容だ。本インタビューでは、どうしてLIVEアルバムをリリースすることになったのか? そして、新曲「ROCKY」にちなんで4人の胸を熱くさせた作品・人物についても聞いてみた。
Photography_DOZONO HIROYUKI
Text_真貝聡
Edit_司馬ゆいか
OKAMOTO‘S初心者にも楽しんでもらえる選曲にしたかった
――初のLIVE音源をリリースすることになったのはどうして?
オカモトショウ(以下、ショウ) : 去年、初めて47都道府県ツアーを回って、何かしら形に残せたら良いなと思っていました。いくつかの公演で、俺たちがレコーディングの時にお世話になっているエンジニアさんを呼んで、記録用に音だけは録ってもらっていて。ファイナルには収録チームも入ってもらっていたので、両方をパッケージして作品にできたら良いな、ということで、リリースを決めました。
――今作はCD以外にBlu-rayとして野音(日比谷野外音楽堂)で行われたファイナル公演の映像もつけたのはどうしてでしょうか。両方LIVE版なら、音源か映像のどちらかではダメだったんですか?
ショウ : 「Blu-rayやDVDを単体で買うよりも、音源と映像の両方が付いている方が嬉しい」という声を多くいただいて。それだったら、音源と映像を両方楽しめるパッケージを作れたら良いねという話になりました。
Vo. オカモトショウ
――ファンの要望に応えたということですね。
ショウ : あとは、デビューから8年経って、オリジナルアルバムを6枚リリースしていますし、結構持ち曲が溜まってきてるんです。なので、今まで俺らを聴いてなかった人は「どれがOKAMOTO’Sなの?」と迷ってしまうだろうなと思いまして。今作は初めて俺らを聴く人にとって、「これがOKAMOTO’Sです」と分かりやすく提示できる1枚ということを意識しました。
――なるほど。47会場もあると、音源データは膨大だったんじゃないですか?
ショウ : 47本全ての会場で録音しているわけではなかったので、そこの選定というよりも、どの曲のどの公演にするか……というところが一番の悩みどころでした。さっきも言ったように、あくまでOKAMOTO’S初心者にも楽しんでもらえる作品にしたかったので、どれが分かりやすいかということを優先して考えました。
――あえて6曲に絞ったのはどうして?
ハマ・オカモト(以下、ハマ) : 裏テーマとして、音楽フェスに出た時の持ち時間ぐらいの曲数にしようという狙いがあって。ワンマンで1時間半ぐらいの構成にするつもりはそもそもありませんでした。曲数を絞った分、どの曲を入れるのかは相当悩みました。
――バンド最長のツアーを経て、バンドの変化や改めて感じたことって何でしょう?
オカモトレイジ(以下、レイジ) : 仲の良さじゃないですか、絶対。
ハマ : 確かに揉めなかったですね。あと、47都道府県ツアーは半分ぐらいの地域は初めて行く場所だったので、「ライヴをやるよ」と言ったところで、果たしてどのぐらいのお客さんが来るか正直不安でした。結果、47会場すべてが満員だったわけではなかったですけど、毎会場きちんとお客さんが集まってくれたので、それは単純に自信になりました。次に行っても誰かが待ってくれていると思えることは、本当に毎会場嬉しいことでした。
Ba. ハマ・オカモト
ドリフターズの様になれたら良いなとも思っています
――レイジさんが『OPERA』ツアーの時に「やっぱり俺ら、マイノリティーなんだなぁ」と言ったの覚えてます?
レイジ : 覚えてます。俺らは1000人中1人しか聴かれていないマイノリティなバンドだとしても、マイノリティだって集まれば1万人になるって話でしたよね?
――そこを踏まえて今回はどのように感じました?
レイジ : そのマイノリティの数は着々と増えている感じがしました。『OPERA』以降、客層がガラッと変わったというか。濃い人が増えた感じがします。俺らのことを好きだと思ってくれている、気持ちの強い人がたくさん来てくれているなって。
――OKAMOTO‘Sを好きな人が色濃くなっていると感じたのはどうして?
レイジ : ライヴの盛り上がりはもちろん、それまではライヴを観に来ているというよりは、「どんなもんなの?」って調査しに来ている感じの人が多かった印象で。最近はきちんとOKAMOTO’Sが好きで、アルバムを聴いて、ライヴに足を運んでくれてる人が多くなった気がします。
――何がきっかけで、お客さんの見る目が変わったんですかね?
レイジ : 音楽性が大きいと思います。『OPERA』で音楽性の濃いものを出したので。それに惹かれてライヴに来てくれる人は、そう簡単に離れていかないだろうな……というか。なんというか(お客さんと)強い絆の様なものを勝手に感じています。
Dr. オカモトレイジ
――ライブや音源リリースはもちろんのこと、『オカモトーーーク!』によって客層も変動してるのかなって。
ハマ : そうですね。ただ、あの番組(『オカモトーーーク!』)によってどれだけの変化があるのかは計り知れないですけど、やっぱり最近は良い意味でも悪い意味でも、近しい存在だと認識してもらえるようになったと思います。オカモトークがきっかけでライヴに来るお客さんが増えたというよりは、僕らをどう観たら良いかがより分かりやすくなった人は増えたのではないかと思います。
――メンバーの個性が立ってますしね。
ハマ : 結局、ライヴMCの延長の様な感じではあるので、一回ああいうクッションがあると「見たことある! OKAMOTO’Sってこういう感じだもんね」という免疫がついて、MCでギョッとされないことが増えた気がします。だから、人からしたら内輪で笑っている光景も番組の効果で、そうではないこととして共有できるようになったと思います。今日、収録をしていて話してたんですけど、番組が3年目になるらしいです。意外と長くやってるなって。
――『オカモトーーーク!』って3年も続いているんですね!
ショウ : 長いですよね。
――今回、改めて過去の放送も全て見返してたんですよ。そしたら、OKAMOTO‘Sがだんだん(ザ・)ドリフターズに見えてきて……(笑)。
一同 : あははは!
――本人を前にすいません。
レイジ : いや、すごい嬉しいです。個人的には、ドリフターズの様になれたら良いなとも思っています。
ハマ : 面白いし、演奏もできる。
レイジ : うん
ハマ : あの番組は賭けであると思っていて、演奏をしている画が1mmも映らないので。本当はそういう保険があるべきだと思いますが、MVも楽曲もほとんど流れないので。オカモトークのせいで嫌いになった人も少なからずいるんだろうなとも思います(笑)。でも、ドリフターズっぽいという印象をもってもらえるのは嬉しいです。
Gt. オカモトコウキ
去年のツアーは自分たちにとっての試練
――6曲目の「ROCKY」はツアー中に制作されたとか。
ショウ : 5ヶ月間も全国を周っている状況は楽かと聞かれたら、もちろん全然そんなことはなくて。単純に「また移動だ……」という感じでキツくなってきたり……。ただ、このツアーをやり終えたら絶対、自信に繋がるはずだと確信を持っていました。この経験を何かしら証として残しておけるものがあれば、今後のキツいことや辛い時に、その記憶に助けられる時が来るんじゃないかなって。「俺らあのツアーをやり切ったんだよな!」ということが自分たち的にも形として残したいと思ったし、その気持ちをツアーに来てくれた方とも共有できたら良いなと思って作りました。
――ツアーファイナルで「ROCKY」を初披露したんですよね。
ショウ : そうです。せっかく良い曲が出来たので、ファイナルで演奏したいねと話していて。ツアーの合間を縫ってレコーディングをして、まずは配信でリリースしました。みんなに聴いておいてもらって、ファイナルで大合唱したいなと思っていたので。
――なんか聴いててヒリヒリしました。「ツアーをやり終えたから、ありがとう」ってことじゃなくて、まだまだ戦い続けていくっていうメッセージに感じて。
ショウ : ツアーをまわる前、色々な先輩のバンドに話を聞いていて「今度長いツアーをするんですけど、(ツアーをしてみて)どうでしたか?」って。そしたら「俺たちはツアー中、初めて壮絶なケンカをしたよ」というエピソードを聞かされたり。たしかに、思い返せば、様々なバンドが長いツアーを経て解散しているし、だからこそ、あのツアーは自分たちにとっての試練というか。試される場だなと思っていました。それもあって、「ROCKY」は感謝というか、戦っていることの方が全面に出ているかもしれないです。
――「ROCKY」って、映画の『ロッキー』ですよね?
ショウ : そうです。
――あの映画を題材に選んだのはどうしてですか?
ショウ : 感覚的な話しなんですけど、<倒され 汚され 笑われ それでも今また俺は立ち上がる>って歌詞が浮かんだ時に、『ロッキー』だなと思って。ただ……俺、『ロッキー』を観たことないんです。
――‥…‥‥え?
ショウ : はははは。
レイジ : あと、ロックって言葉もかかってる。
ショウ : そうだ! 「ロックス」っていうプライマル・スクリームの曲があったり、(ザ・ローリング・)ストーンズにも「ロックス・オフ」って曲があるので、曲名にロックって言葉を入れるのは良いなと思っていました。男気のある曲にそういう文字を入れたかった。
――じゃあ、『ロッキー』だけじゃなくて、「ロック」という意味もあるんですね。
ショウ : そうですね。「ロックっぽい」みたいなニュアンスにしたくて。
レイジ : セクシーみたいなね。
ショウ : まさしく。 色気ではなく色っぽいという様な意味合いを目指す感じ。ロックじゃなくて、ロックっぽいってことで「ROCKY」。
「どうせ美化してるんだろうな」と思ってしまう
――せっかくなので「ROCKY」にかけて、皆さんが男気を感じたり、胸を打たれたものについて聞かせてください。
レイジ : ちょうど、ツアー中にNetflixで観たスティーブ・アオキのドキュメンタリーに結構シンパシーを感じました。彼の親父がロッキー青木って名前なんですけど、その人も何度でも立ち上がる系の男で……。
ハマ : 何度でも立ち上がる系の男(笑)。
オカモトコウキ(以下、コウキ) : どう言う系統だよ。
レイジ : 怪我してスポーツを辞めざるを得なくなって、アメリカに渡ってベニハナ・オブ・トウキョウっていう和食チェーンを立ち上げて天下を取って。更に、プライベートでボートのレースに出場したら、新記録を出しまくって。一回、大事故にあうものの、それでも復活して、また新記録を出す。
――本当に何度も立ち上がる系だ。
レイジ : そんなお父さんを見て、スティーブ・アオキも「絶対負けねえ」と思って、DJを頑張ったという話でした。
――レイジさんは、そういう胸が熱くなる作品を観たら泣くんですか?
レイジ : 結構、泣きます。スティーブ・アオキのドキュメンタリーでは泣かなかったですけど、すごく面白かった。あれ? スティーブ・アオキのドキュメンタリーで泣いたって言ったっけ?
コウキ・ショウ : いや、覚えてないですね。
ハマ : 観ろと言われて、誰も観てない。
レイジ : 泣いてはないかも……あっ泣いたわ!
――どっちよ(笑)。
レイジ : マディソン・スクエア・ガーデンで公演がやれなくて、地元LAの街中でイベントをやるシーンで感動しましたね。
――メンバーにもオススメしたんですよね。
レイジ : うん。「ロッキー青木も「ROCKY」の歌詞と同じことを言ってるから観て! 絶対に共感できるから!!」って。だけど、誰も観てくれてないです。
――それがバンドの亀裂にはならないんですか?
ハマ : もう、そういうのは流してます。
レイジ : 流しそうめんですよ。
ハマ : ……うん?
レイジ : はい。
――ハマさんは胸が熱くなる人や作品ってあります?
ハマ : 考えてみたんですけど、ないです。
ショウ : なるほど。
ハマ : 「ない」っていうの、納得できるでしょ。僕はないなと思って。
レイジ : 頑張る人とか基本的にあまり好きじゃないもんね。
ハマ : そう言うと少し語弊がありますけど(笑)。例えば尊敬するミュージシャンは、僕も音楽をやっている身なのでもちろんいますけど、プライベートの部分では本当にどうしようもない人も中にはいるので、そこには共感できなかったり。割とそういうところはドライなので、すごい話や映像を観ても「どうせ美化してるんだろうな」と思ってしまうというか。
――じゃあ、ハマさんは該当なしですか?
ハマ : しいて挙げるなら……少し前、話題になった『聖の青春』は映画も観ましたし、元ネタになった村山聖さんのドキュメンタリーも観たのですが、あれは本当に凄かったです。村山さんは重い病気にもかかわらず、病院に行かないで羽生(善治)さんに勝つ執念のみで戦い続けるという内容で。特にドキュメンタリーは「うわぁ、凄い話だな」と思いました。だけど、男気っていうのはないかもしれないです。ん〜…まずいですね。
ショウ : ないっていうのもハマさんらしいけどね。
やらないという選択肢はないから
――コウキさんは?
コウキ : 僕もないですね。頑張るのはあまり好きじゃないです(笑)。
ハマ : 僕たちも頑張ってはいるんだけどね。
コウキ : ……出川哲朗さんかな。
ハマ : はははは、本当に!?
コウキ : 『世界の果てまでイッテQ!』が好きで、DVDも買いました。
レイジ : そんなに好きなの!?
コウキ : 結構好き。
レイジ : 知らなかった!!
コウキ : この間、アメリカへレコーディングをしに行く機会がありまして。そこで元気が無くなって、『世界の果てまでイッテQ!』を観て元気を出しました。やっぱり、芸人さんは負けると分かっている戦いでも、リアクションをとらないといけなかったり、負け戦でも勝ちにいかないといけない場面があるので、そういうプロフェッショナル精神は凄いなって純粋に思います。
ハマ : やらないという選択肢はないからね。
――めっちゃイイ話もってるじゃないですか!
レイジ : 出川さんは、そんなに過酷なことをやらされてるの?
コウキ : ニューヨークへ行って、英語が全然喋れないのに与えられたミッションを頑張るという内容だったり。
レイジ : 何をやるの?
コウキ : 観光地へ行ってどこどこで●●をやりなさいという指令を出されたり、記念写真を撮らされる……みたいな。道も当然分からないから、現地の人にギリギリの英語で案内してもらって目的地にたどり着かないと行けない。
レイジ : なるほどね〜、面白かった?
コウキ : 面白かった。自分もアメリカへ行くにあたって、凄く勇気づけられました。下手くそだけど、英語の伝わる感じが感動するというか、姿勢が大事なんだと改めて感じました。
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