「お前、明日からラッパーな」
Rude-a:ラップを始めたのが三年前くらいで、当時高校二年生だったんです。
昔からレコード屋に行って、ジャズやファンクをディグったりしてて、高校にはあんまり話の合う友達が居なくて。自分はダンスをやってたんですけど、本当にそれ以外特にやることもないような環境でした。
そういう日々が続いてた中で、ある日バイト帰りに地元の友人から電話が掛かってきたんです。
――あの、高校では友達居なかったんですけど中学くらいまでは普通につるむ奴とか居たんですよ(笑)。「いま、何してる?公園に皆で居るから、来ない?」って言われて。そういう風に皆でよく集まったりしてて、普通に俺も公園に行ったんです。
で、多分、俺その時、B-BOYっぽいキャップか何か被ってたんですよね。本当に突然、白いTシャツに寝間着みたいな短パン履いてタオル引っ掛けて手にさんぴん茶っていう沖縄のお茶の二リットルのペットボトル持った奴に「YO!!!」みたいな感じでフリースタイルを仕掛けられたんです。
――え!?(笑)
Rude-a:そいつ、全然知らない奴なんですよ(笑)。「は!?何こいつ!?」ってなったんですけど、なんか俺、訳も分からないままやったこともないラップを「誰だお前、デブ!」みたいな感じで返したんですよね。俺、ラップって『8 Mile』程度の認知しか無かったし、曲だって『今夜はブギー・バック』くらいしか知らなかったんです。
(『8 Mile』トレイラー)
後から知ったんですけどその時俺がラップを返した相手は第四回高校生RAP選手権に沖縄から出たKDTってラッパーだったんです。兎に角、ラップを返したら「あれ、なんでお前初めてなのになんで八小節ラップ出来てんの。俺、半年かかったけど!」って言い出して(笑)。その場でKDTに「お前、明日からラッパーな」って言われたんです
BASI・ISSEI:ははは!(笑)
(KDT『ExPRESs』MV)
Rude-a:「俺ら、どこどこのスーパーの裏の橋の方でサイファーしてるからお前も来い!」って言われたから、訳も分からず「……はい」って言って。最初は「こんな奴、相手もしないでおこう」って思ってたんですよね。
ただ、(サイファーをしている)スーパーは学校の帰り道、バスでいつも通る場所にあったんですよ。別の日、バスに乗ってる最中に「今日、なんも無いし暇だし行ってみようかな~」くらいのノリで行ってみたんですよね。
そこでは皆、iPhoneを囲んでサイファーしていて。色んな先輩との繋がりが出来て、段々とラッパーになっていったのはその日からです。俺はダンスしかしていなかったし、この先もダンスやってくんだろうなって思ってたんですけど、KDTに仕掛けられたフリースタイルが(ヒップホップへの)入り口になって。
自分がいままで知らなかった、韻シストや他の色んなヒップホップの世界もサイファーで溜まっていた仲間たちに教えてもらったんです。朝まで、音楽のこともそうでないことも語ったり、夜中に抜け出して沖縄の人たちのライブを観に行ったりもして。ほんと最初の頃ってそんな感じで、ライブなんてやり方も分からなかったし、ただ先輩たちのライブを指咥えて見てたんです。そういう風に過ごして一年経った頃にノリで高校生RAP選手権のオーディション受けたら受かって、気付いたら決勝に進んで、ニガリ(MC ニガリa.k.a赤い稲妻)とバトルして。巡り巡って、いまこうして東京に居るわけです。
(MC☆ニガリ a.k.a. 赤い稲妻『こんばんは』MV)
あの時のフリースタイル、あの時の八小節が無かったら俺はいまここに居なかったんだと思うと「人生、何があるか分からないな」と思うし、その反面でゾッとするんですよ。「ラップしてなかったら、俺いま何してたんだろ……」って思うし。
YouTubeにMVを公開している『19』は、この時のことを歌ってるんですよ。「奴の背中は どれだけやっても越せる気はしない」って歌詞で歌ってる「奴」はKDTです。どれだけ自分がKDTより多くの人間に知ってもらえようが、音楽を多くの人に聴いてもらえようが(KDTは)始まりの人間であり、自分の人生を変えた人間なので越せる気がしないですね。
KDTや地元の仲間と見てきた景色というものがあるんです。2013年からのことなので歴史としては全然無いですけど、それでも自分が今後どうなっていこうがそれは忘れずに心の中に持っておこうと思ってます。何十年か経った時に「あの頃、良かったすね~」って会話したいな~って(笑)。
BASI:映画やな。
ISSEI:このエピソードで一本撮りたいくらいやな。さんぴん茶二リットルはヤバいな……(笑)
一同:あっはっは(笑)
Rude-a:しかもですよ、白の無地Tに黒のマジックでKDTって書いてあったんですよ!
ISSEI:ハハハハハ!!!キャラ出すぎや!!!
Rude-a:ほんと、裸の大将かプーさんかって感じの奴だったんですよね。そんな奴が近づいてきて(笑)。当の本人はいま、地元でミュージック・バーを経営してますね。
いまパッと見、沖縄のシーンではラップ始める人が増えてるんですよね。でも俺がラップを始めた当時って、DJも含めてやってる人って沖縄全体で見ても本当に居なくて。ラップやってるって学校で言うとめちゃくちゃ珍しいくらい。でも、いまは俺より三つ四つ下の子たちがラップを始めていて。学校でラップやってる人は、いま沖縄ではヒーローらしいんですよ!
――へええ~!
Rude-a:俺たちの時はほんと馬鹿にされてたんですけどね。こういう沖縄のヒップホップのシーンの始まりは俺でもなく、俺の後に出たR’kumaでもなく、KDTだと思ってます。
KDTのおかげで人生狂ったし、それでも楽しいんですよね。いまでも、ミュージック・バーで高校生くらいの奴を見かけると「お前、ラップしろよ!」みたいな感じで仕掛けてるみたいです(笑)
(Rude-α feat.R’kuma『CoCo ga Okinawa』MV)
BASI:それはそれでちょっとおかしいけどな(笑)
Rude-a:そうですね(笑)。ただ、そういう風にして色んな子を引き込んで、沖縄のシーンをデカくしていってるのはKDTなんですよ。本人は何とも思ってなくて、自分からは何も語らないんですけど。そういうところが「こいつ器デカイな!」って俺は思いますね。
ISSEI:こいつ呼ばわりしてもうてるやん(笑)
Rude-a:会うと、敬語も使うんですけどたまに「おい、黙れ」みたいなことも言ったりしますね(笑)。沖縄人らしいノリで喋ってます!
今後も、機会がある度にKDTのおかげでいま自分はラップをしているというのは言っていこうと思ってますね。
――最後にMUTANT CAMPの見どころをそれぞれお教えいただけますか?
BASI:今回のMUTANT CAMPにはバンドセットで挑もうと思ってます。リハにも何回か入ってるんですけど、すごく良い感じで。韻シストでいつもやってることですけど、生演奏のライブになります。
ソロでこれまで五年間やって来たことを、生演奏で振り返ることが出来る日になれば良いなと思ってます。楽曲一つ一つが濃くなっていると思うので、その辺りを是非楽しんでください。
ISSEI:バラバラで、統一性が無いところが見どころで。そういうものが一つにまとまる瞬間を見て欲しいですね。前回のMUTANT CAMPでレゲエを見に来たお客さんが、BASIくんに見入ってたということがあって。そういうことを今回も起こしたいです。レゲエとヒップホップが交わって、更にそこにMCバトルがある。
バトルブームってやっぱり俺はストリート・カルチャー、ヒップホップ・カルチャーにとって無視できないものだと思うんですよ。
そこまで俺はバトルのことを追ってはいないですけど……、(ヒップホップ・シーンに)仲間が増えすぎて、もう何だか見れないですよ(笑)Rude-aとMCニガリのバトルなんて、俺見てて泣いてしまって(笑)。そういう事情もあって、細かくは追えてないですけどそれでもバトルのシーンはしっかりと取り入れていきたいと思ってるんです。一緒に組んでるKOPERUもバトルMCとして勝ち上がってきた人間ですしね。
バトルにしか興味ないお客さんにも、「音楽良いな」って思ってもらえたら嬉しいです。正直、俺は「バトルはバトル」「音楽は音楽」だと思ってて。やっぱりバトルには音楽的要素がちょっと少ないですよね。
それから、当日はライブペイントも用意しています。色んな方面からストリート・カルチャー、ヒップホップ・カルチャーって良いなって思ってもらえる一日にしたいですね。
Rude-a:あくまで俺のイメージなんですけど、会場を皆で作り上げていって「楽しかったね」って皆で電車の中とかで言い合えるイベントになったらいいなって思いますね。俺自身も新しい感じのセットで挑もうと思ってる――でも、まだどうなるか分からないですけどね。自分もBASIさんと同じように、手の内は見せたくないタイプなんで(笑)
俺にもやっぱそういう部分ってあって!やっぱやるからにはお客さんだけじゃなく、同じプレイヤーにも一発喰らわせたいんですよ!だから、わざとリハとかちゃんとやらなかったりする……(笑)
――あはは!
BASI:居るな~、そういう奴!
Rude-a:自分も皆で楽しめるものを持っていくので、皆で一つになれるようなイベントを作り上げられたら良いなと思います!
MUTANT CAMPイベント概要
出演者:BASI & THE BASIC BAND / BES / Creepy Nuts (R-指定&DJ松永) / APOLLO / KOPERU & ISSEI feat. 熊井吾郎 / Rude-α / 渋谷サイファー vs 梅田サイファー
日時:2017年1月26日(木)
会場:渋谷クラブクアトロ
開場 / 18:00 開演 / 19:00
前売り : 4,200円 当日:4,700円(*ドリンク代別)
チケット発売中(http://www.diskgarage.com/ticket/detail/no074532)
・ローソンチケット:Lコード:74949
・チケットぴあ:Pコード:316-045
・e+(イープラス)
主催/企画/制作:NTTドコモ、PARCO、レインボーエンタテインメント、DISK GARAGE、BROTH WORKS
-運営 / 問い合わせ:DISK GARAGE 050-5533-0888 (weekday12:00~19:00) http://www.diskgarage.com/
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