MONO NO AWARE のルーツを探る、熱烈偏愛ゲームミュージック

――（笑）。他にみなさんが小さい頃のことで覚えている思い出はありますか？

竹田 : たとえば、今回の5曲目「ゴミ」を連想するような話でいうと、私は子供の頃、キャラクターが描いてあるお菓子の包み紙を見ると、そのキャラクターの人生を勝手に想像して、捨てられなくなってしまっていたんです（笑）。それで、洗って大事に取っておいたりしてました。

柳澤 : （笑）。自分の場合、小さい頃はアパートに住んでいたんですけど、覚えている中での最初の記憶は、階を挟んで隣の部屋に住んでいた友達と魚釣りゲームをやっていたことですね。ひとりが釣り人になって、下の階に紐を垂らして、もうひとりが魚役をするんですよ。

玉置＆加藤＆竹田 : ははははは！！

――小さい頃って、きっとみなさんそんなふうに自由に遊びを考えたりしていましたよね。大人になった今では、何であんなにアイディアが出てきたのか分からないですけど（笑）。

玉置 : 本当にそうですよね。紐一本からでも面白い遊びを考えていくというか。でも、それって、僕は「すごくいいな」と思うんです。恥ずかしさを感じたりせずに、純粋に好奇心のままに行動していて。だって今、上の階から紐を垂らしても、魚にはならないでしょ？（笑）。

加藤＆竹田＆柳澤 : ならない！（笑）

幼い頃の思い出や、遊び心が詰まった『かけがえのないもの』

――実際、その「純粋さ」や「大人になるにつれて忘れてしまう気持ち」というのは、『かけがえのないもの』でも大切に歌われていることのように感じました。

玉置 : たとえば、世の中には経済的に裕福な人も貧しい人もいて、「モノがたくさんあった方が豊かだ」という考え方があったりもしますけど、それって大人になるにつれて身につける価値観で、子供の頃はそんなこと考えていなかったと思うんですよ。子供の頃って、金持ちも貧乏もみんなかけっこをして遊んでいたし、ないことを嘆くのではなくて、「そのときあるものでどう遊ぶか」ということがすべてだった気がして。その気持ちって、大人になった今は取り戻せないものですけど、でも、「かつてそういう気持ちを持っていたこと」を忘れないだけでも、心が豊かになる部分があるんじゃないかな、と思うんです。『かけがえのないもの』ではそんな気持ちをそのままアルバムにしたいと思っていたので、初めてメンバーと作品のコンセプトや曲名を事前に共有して制作をはじめていきました。

加藤 : それもあって、今回は色々な音が作品に入ることになりました。ギターもたくさん重ねていますし、「ゴミ」ではみんなでゴミを集めて、その音をサンプリングしたりもしていて、色々と遊び心を入れられたと思っています。ギターのフレーズにしても、これまでの作品では何度も録り直したりしていたのに対して、今回はデモで周啓が持ってきたフレーズを、「このままがいいかもね」と話してそのまま使ったりすることがあったりしました。『かけがえのないもの』は、そうやって制約を設けずにやりたいことをやっていった結果、子供のときに持っていた遊び心と同じような気持ちでつくれた作品なのかな、と思っています。

――ちなみに、「『かけがえのないもの』購入者限定アウトストアライブ」の来場者特典の１曲として公開されている「A・I・A・O・U」の8ビットVer.には、竹田さんや柳澤さんの幼少期の話に出てきた、ゲームのスタート画面で流れるテーマ曲のような雰囲気も感じました。

玉置 : 「A・I・A・O・U」は映画『沈没家族劇場版』の主題歌として制作した曲なんですけど、その依頼が独特で、「映画のイントロダクションでも、エンディングでも流せる曲にしてほしい」というものだったんです。そこで、「A・I・A・O・U」は原曲の段階から、1分半まではイントロダクションっぽく、そこからは音を広げてエンディングっぽくなるように作りました。さらに8ビットにしたことで、ゲームのスタート画面で流れるメインテーマっぽい雰囲気が増したのかな、と思います。

僕らが小さい頃にゲームを立ち上げて、最初のスタート画面で感じていたような『これからどうなっていくんだろう？』というワクワク感のような、不思議な感覚を感じてくれたら嬉しいですね。

3rd album『かけがえのないもの』

発売日：2019年10月16日
定価：2,500円＋税

＜収録曲＞
01. 新人類
02. えんぴつ
03. かむかもしかもにどもかも！
04. 時間泥棒がやってくる
05. ゴミ
06. 普通のひと
07. テレビスターの悲劇
08. ヒトノキモチニナ～ル
09. ゲームは1日30分
10. 女子高生
11. 言葉がなかったら
12. LAST
13. A・I・A・O・U