「もっと歌詞を読んでほしい」
――では具体的に『COLOR』の話に移りましょう。この作品も前作『Find Me!!』と同じく、表紙のインパクトが強いです。このデザインのテーマは何でしょうか？
GraphersRock：このデザインのテーマは、口にして説明しようとすると難しいですね。
――曲は「変わる」ことがテーマなのかと思いました。
MONICO：そうですね。今はみんなに憧れてもらえるアーティストを目指して挑戦している期間だと思ってます。自分にはどんな曲が合うのか知りたいですし。
――歌詞は全部MONICOさんが書いたんですよね。
MONICO：歌詞、全部書きました。これまで全然書いたことないのに。私にしては上出来かな（笑）。
――あくまで謙虚なんですね。MONICOさんってあまり表に自信を出したくないのかなあと感じます。
MONICO：そうですね。ぶっちゃけ、歌詞書きながら「なに言ってるんだ」って思ってたんですけど（笑）。ちょっと恥ずかしくて。でも書いてることは嘘じゃなくて、日常で思ったこととか、いいセリフだなって思ったこととか、そういのを全部メモして清書して作りました。
――気になる歌詞が多いです。『COLOR』のサビには「真っ白な僕は何度でも騙されていく」「真っ白な僕は何度でも染められていく」という歌詞があります。こういう言葉って結構ドキッとしますよ。特に若くてかわいい女の子が歌うと。これらはどういう心境から出てきた言葉なんですか？
MONICO：これは色々と迷ってた時期に書いた歌詞なんですよね。やりたいことをこの先ずっとやれるのか、本当にこの道でいいのか。そういうことを悩んでる一方で、いろんな人にアドバイスされるわけですよ。こうした方がいいんじゃないとか、こうするのは良くないんじゃないとか。そういうたくさんの意見に囲まれて、その中のどれを取るかで今後の人生が変わってくる。そう考えていくと、周りが本当に良い人ばかりとは限らないかもしれないとかも思ったりして。そういうので頭の中ぐわぐわしてる時に書きました。
――なぜ、周りが良い人だけじゃないかもって思うんですか？
MONICO：えっ。言いづら（笑）。……でもやっぱりまだ駆け出しだし、メジャーに出てるわけでもないので。本当に自分がこの道で合ってるのか確信あるわけでもないですし。何が自分にとって良いことで正しいことなのか、それは自分で考えて自分で選ばなきゃいけないじゃないですか？ そこらへんは大人になればなるほど迷っていかなきゃいけないことだと思ってます。
――なるほど。MONICOさんの歌詞は、言葉としてはシンプルで聴きやすいんですけど、よく聴くと強いことを言ってるんですよね。今触れた『COLOR』のサビに戻りますけど、「何度でも騙されていく」はかなり強い言葉です。MONICOさんの中に「騙される」っていう感覚はあるんですか？
MONICO：強めの言葉を選んだ方が楽しいかな、っていう考えがあります。その方が聴き手の印象に残りますよね。あとは、かわいい歌を歌ってもつまんないと思っていて。私、顔もこんなんでタヌキっぽいし（笑）、かわいいこと狙って書いたりしても、そういうのってちょっと私らしくないかなと思って。だったら、本当はこんなこと考えてるんだぞ、っていうのをみんなに知ってほしくて。
――歌詞をもっと読まれたいですか？
MONICO：読んでほしいです。ただあんまり歌詞についての感想はもらえてないので……、微妙だったのかな（笑）。
GraphersRock：歌詞の感想くださいって言っとい方がいいんじゃない？
MONICO：えー、そうですか？
――そう思います。ぜひ書いておきましょう。今これを読んでるMONICOファンのみなさん、TwitterなどでMONICOさんの歌詞の感想をください！！！！
MONICO：……恥ずかしい（笑）。私、Twitterとかでもそんなに自分のことを語らないんですよね。好きなものとかも、「これが好きで」「今日はこれに行って」みたいなことを呟くのが恥ずかしいタイプでして。つまり自分を出すのに時間がかかるんですけど……。でも歌詞は本当に100パーセント私が普段思ってることを書いてるので、ファンの人にはたくさん見て欲しいな。
葛藤から生まれる歌詞
――じゃあ、せっかくなのでもう少し歌詞の話をしましょう。たくさん印象的なところがあります。『COLOR』だと他にも、「どこか遠くではクラブミュージック 納得できな世界のルール」という歌詞があります。クラブミュージックが遠くで流れている、ということは、自分はそこに参加できていないわけですよね。それに対して、「納得できない世界のルール」と、ある意味では、苛立ちを見せているように解釈できます。MONICOさんには、世界に参加できていない感覚や、そのことに対する苛立ちや悲しみがあるんでしょうか？ あるとしたら、なぜ？
MONICO：これは普通に、次の日仕事だからおうちに帰らなければいけないじゃないですか。それで、Twitterとか見てるとみんな楽しそうにイベントとか行ってるんですよね。でも私はイベントに行けなかったりするので、そういう時に自分が社会から外れてるような気持ちになっちゃって。クラブは楽しいですし、ライブも楽しいですし、DJも楽しいんで、そういう楽しさを知ってからは全部参加したい！みたいになっちゃってるので、その時に思いついた歌詞ですね。……あんまり良い答えじゃなくてすみません。
――なんか繋がってない感じ、社会と接続されてない感じみたいなものをMONICOさんってすごく敏感に感じ取ってるのかなと思ったんですけど。
MONICO：それは昔からそうかもしれないです。私あんまり溶け込めてないのかな？みたいに考えがちなので。でもそういうのは女の子だったらみんなあるんじゃないかな。歌詞の感想をくれるのって、ほとんど女の子なんですよね。「聴いて泣いた」とか言ってくれる子もいる。あまり余計なことを考えずに、思ったことをただそのまま書く方が人の心には刺さるのかもしれないですね。
――『Find Me!!』に収録されていた『PARTY MIDNIGHT』が初めて作詞した曲ですよね。初めて書いたものって、一番そのアーティストの本質に近いと思うんですよね。『PARTY MIDNIGHT』には、『COLOR』よりも直接的な表現があります。たとえば「不安な気持ち知ってほしい」や「心の穴塞いでください 塞がないと消えちゃいそうだ」、こういう部分です。やっぱりMONICOさんの心の中には、何か欠落した感覚があるんじゃないかと思ってしまいます。
MONICO：コスプレも歌もそうですけど、どこの世界にもすでに活躍してる人がいっぱいいるじゃないですか。自分なんかより100倍も素敵な方がたくさんいる。そういう中で、「私、全然駄目だからみんな来てよ」みたいなことって、言いたくても言えないんですよね。でも、歌でなら言えると思って、それを正直にそのまま書きました。
――2つの矛盾する気持ちが混ざってることが多いですね。それ、なぜだと思います？
MONICO：えー、なんでだろう……。まだ格好つけきれていないんですかね……。たとえば、誰かに対して私が怒るとしますよね。でも振り返ると、自分だって同じようなことをしてるんですよね。それなのになんで怒ったりしちゃうんだろう、って思うこと、ありません？ なんていうか、自分が2人いる感覚というか。
――外から俯瞰で見ている自分がいるということですよね。でも、その視点ってみんなが持てるわけじゃないと思うんですよ。
MONICO：あ、確かに。わからない人もいるかもしれないですね。そういう人からしたら、何言ってんだ？って感じかも。でも私にとっては2人の自分どっちも大事です。
――自分を俯瞰で見てる自分がもう1人いる、その感覚は小さい頃からありますか？
MONICO：小さい頃……からそうだったのかな？ 記憶にないです。
――それが普通すぎて？
MONICO：そうですね。ただ、高校生の頃はそのせいで塞ぎ込みがちでした。自分、嫌だなあって。でも今は、そんな自分も良いんじゃないかと思えるようになって。それを歌で表現していきたいです。
――自分の中に相反するものがあるというのは面白いです。MONICOさんの中には、大雑把な言い方をすると「積極的な想い」と「消極的な想い」があるような気がします。さらに「消極的な想い」の中にも2種類あって、それは「すべて変わることなく続いていくという諦め」と「何もかも最後には消えてしまうという諦め」という、2種類の諦めです。これらが同じ曲の中に同時に含まれている。
MONICO：そうなんです……か？
――「消える」や「終わる」という言葉が多いですよね。
MONICO：結局終わっちゃう、何もかも終わりが来ると思ってます。同時に、それでも自分がいたことは知ってほしい、憶えててほしいっていう気持ちがあって。なので、「終わっちゃうけど、今を楽しくしよう」みたいな。
――その一方で、「だけど明日は必ず来るし（『PARTY MIDNIGHT』）」という歌詞に代表されるように、日常の変わらなさに対する諦めがある。相反する想いがぎゅっと詰まってる。
MONICO：……葛藤から生まれてる？
――そうです。MONICOさんの歌詞は、葛藤そのもののような歌詞なんですよね。そんなふうに葛藤を抱えるようになったのはなぜなんでしょう？
MONICO：きっと本当に些細なことの積み重ねだと思います。たとえば、自分がすごく落ち込んだり悲しんだりしてる時も、SNSを見ると、自分とは関係ないとこでみんな楽しそうにしてますよね。それって当たり前のことなんですけど、そういうの見た時に、ふっと苛立ちを覚えてしまうことがあります。でもそれを理不尽に怒ったりできないじゃないですか。誰も悪くないし。こういうモヤモヤした気持ちを大事にしていて、それが歌詞に表れたのかもしれないです。
――『COLOR』二曲目の『COSMIC TIMER』という曲も面白いです。
MONICO：これは、自分が月だったらこう思うのかな、って考えて書いた曲ですね。ひとりぼっちの気持ちを投影していて。恥ずかしいですけど。
――この歌詞にも相反するもの、葛藤が詰まってます。「いつも通り同じ月」は変わらないものの比喩。でも、その後に続く歌詞は「変わらないなんて約束は どこかに消えた 消えた」。
MONICO：「この気持ちは絶対変わらないんだ」っていう強い気持ちも、いつかきっと変わってどこかに消えちゃう。そういうことって、アーティストに対してもありがちじゃないですか？ その時すごい燃えて応援するけど、急に興味なくなって、消えちゃう。私も昔、ファンの方に「ずっと応援してるよ」って言われたことがありました。それはすごく嬉しかったし、実際にその人は長く応援してくれたんだけど、ある時パタッと消えちゃって……。でも、そういう人に対しても「私はずっと忘れないよ」って言いたい。その時に応援してくれた気持ちも今に持っていって頑張っていこう、そんな意味があります。だから、「諦め」じゃなくて「忘れないでね」って気持ちです。
――なるほど。それを聞いた後だと『COSMIC TIMER』がよりエモく聴こえます。このタイトル、すごく良いと思います。「COSMIC」は限りのないものだけど、「TIME」は限りのあるもので、真逆のものをくっ付けてますよね。コラージュっぽさがある。MONICOさんって、詩を読みますか？
MONICO：いや全然！ 本も読まないですね（笑）。音楽の歌詞も、聴く時はそんなにこだわらない。ちんぷんかんぷんな歌詞でいいと思います。でも良い歌詞が耳についた時はちゃんと歌詞を見直したりします。歌詞を読んで「これなんでこうしたんだろう？」って考えたりするのはすごく好き。
――GraphersRockさんは、MONICOさんの歌詞にコラージュ的なものを感じたりします？
GraphersRock：言葉のことはよくわからないんだけど、一見真逆なものを組み合わせることによって新たな何かを生み出すという観点で言えばそうかもしれないですね。でもすごいですね。俺こんなの急に書けって言われても絶対書けないから。ただし、これは男のファンが読んでめっちゃ共感しましたって言いづらい感じはあるよね（笑）。
MONICO：そうですね（笑）。やっぱ女の子らしさが出てるから。
GraphersRock：でも今まで本当に何も書いたことなかったんでしょ？
MONICO：本当に何も書いたことないです。
GraphersRock：すごいよね。俺、絶対書けないよ。俺、文字とか言葉のコミュニケーションはあんまり得意じゃないから。それもあってグラフィックデザインやってるってところもあるし。だから文字を、テキストや言葉を扱える人ってすごい憧れがある。
MONICO：実は中学までは絵が好きで、漫画家になりたかったんです。自分でも描いてたし。その時にいろんなストーリーやキャラに自分の気持ちを投影させて描いてたので、もしかしたらその時に想像力が培われたのかな？といま思いました。
GraphersRock：写真集にも絵描いてくれたよね？
MONICO：それはでも、ふにゃふにゃの絵なんで（笑）。
――提案なんですけど、MONICOさん、ミーティアで漫画描くのどうですか？
MONICO：漫画！ いいんですか？ 描きたい（笑）。
――やりましょうよ！ ぜひ！
運命の出会い
――最後に、お二人の「運命の出会い」を教えてください。
GraphersRock：カルチャーに触れるきっかけになったっていう意味で、やっぱコンピューターやインターネットですね。僕、17歳のときに初めてマッキントッシュ買ったんですけど、それからすべてが始まっているので。当時はDTPがちょっとずつ出始めた頃で、Macで全部完結してグラフィックを作ることがすごいイケてた時代だったんですよね。デザイン自体すごく好きな仕事なんですけど、それ以上にコンピューターが好きなんだと思います。
MONICO：私は何だろう……。やっぱりアニメかなあ。アイドルアニメ。アイドルのみんなが夢に向かって一生懸命頑張るんですよ。スポーツアニメじゃなくてかわいい女の子たちがやるってことに意味があると思います。いろんなドラマがある中、最終的な目標はみんな一緒で、それに向かって頑張るんですよね。初めて見た時、それに感動しちゃいました。私もこういう精神でやりたいなって、すごく力を貰えたんです。アイドルアニメは、頑張ろうと思うきっかけになったものなので、私にとってすごく大事です。
MONICO（もにこ）：
アニメ・ゲーム・コスプレ・音楽・ファッション・・・様々なカルチャーをクロスする
たくさんの情報量をMONICOとして昇華するハイブリットガール。
日本だけにとどまらずアジア圏にもその魅力は伝染中！
本人の魅力とクリエイティブが掛け算を始めこれまでにない新しい女性アーティストが登場の予感！？
ハードコアな楽曲にマッチングするそのビジュアルと歌声が最新EDMサウンドにのって魅了する。（公式サイトより抜粋）
公式サイト
LINEブログ
GraphersRock（ぐらふぁーずろっく）／岩屋民穂（いわやたみお）：
アートディクター / グラフィックデザイナー岩屋民穂によるデザインプロダクション、インディーズからメジャーレーベルまで様々な CD ジャケット、音楽まわりのデザインを手掛け、幅広い分野でアートワークを展開。
様々な企業、ブランドとのコラボレーションを行い、テン年代の東京ポップカルチャーのデザインを牽引、提示し続けている。（公式サイトより抜粋）
公式サイト
イベント情報
MONICO「VVインストアイベント」開催！
5月4日（木・祝）19:00 START
ヴィレッジバンガード高円寺店
5月5日（金•祝）13:00 START
ヴィレッジヴァンガード御茶ノ水店
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