人生が作品だと思うんですよ、ここまで来たら。
――自閉症に対する想いというのは、GOMESSさんのなかで変化していますか。
変化していますね。
――どう変わりましたか。
自分だけのものじゃない感覚になりましたね。すごく。
上京して、『あい』を出す前とかで、男のひとで、20歳前半ぐらいのひとなんですが、結構ちっちゃいライブハウスでライブしたときに見に来てくれて、物販していたら「ファンです」って話しかけてくれたことがあって。「すごい嬉しい、ありがとうございます」って返して。そしたらそのひとが、こう言ってきた。
「僕には親友がいて、その親友は今日来られなかったんですけど、親友は、本当にあなたのことが大好きで。その親友は、もともと社会に出てたんだけど、いろいろ駄目で、引きこもりになっちゃって。社会復帰できなくて、駄目人間やってたんだけど。ある日、そいつは昔ヒップホップが好きだったから、GOMESSくんのことを教えて『人間失格』を聴かせたんだけど、そうしたら、その時にそいつ、すっごい泣いて。『こんなやつもいるんだ…俺も頑張る』って。それから今、(その親友は)就活している。外に出るようになって。本当に君に感謝している」
そう話しながら、多分、そのひとも熱くなっちゃって。すっごい涙してくれて。「ありがとう」って、すごい強く手を握ってくれたんですよ。
その時に、「ああ、俺はもう本当に、俺だけの人生じゃないし、あの曲は俺だけの曲じゃないし」って思った。
例えばの話ですけど、明日俺が死んだときに、そいつは希望を失うし、「結局駄目なんじゃん」ってなる。俺がどんなに逆転していっても、どこかで力尽きて、その死因が自殺であったときに、必ず絶望するひとがいるんですよ。僕に希望を持ってくれたひとのなかに、そういうひとが現れるっていうのがすごく怖くて。絶対に、自らは生命を断てないと思ったし。
なるべく長生きしなくちゃならないし、なるべく幸せにならなくちゃならない。
その幸せっていうのも、なるべくみんなが見てわかりやすい形、結婚して、子供がいて、お金もある程度あって、楽しい音楽、好きなことをやっていて。テレビとかいっぱい出て。なるべくわかりやすい形での幸せな人生を作り出さないと、僕の作品がバッテンになってしまう。
人生が作品だと思うんですよ、ここまで来たら。そう思いました。それがすごい、大きいかもしれないです。
――過去の自分とほぼ似たような境遇のひとがいたとして、そのひとたちに、GOMESSさんの曲が届いたとしたら、彼らにはどうなって欲しいと思いますか。
なんですかね…。本当に他者に関心が無くて…。「楽しく生きれたら良いね」ぐらいの、ざっくりしたニュアンスでみんなに思っているんですけど。友達とかになってくるとまた変わってくるんですけど…。
でも、苦しんでいるんだったら、苦しみを解決する方法っていうのは絶対あって。その解決する方法っていうのは、本当はとても簡単なロジックで。そのとても簡単なロジックをわかりやすく、ズルして手に入れるのがクスリだと思っているんですけど。あれを、クスリを使わずに同じような解決の仕方もひとはできるし。精神的な、思い込み的な作用は、念じれば自分でもできるし。自分でどうにかできるよ、みたいな。
もちろん、望んだ通りになるかはわからないですけどね。高望みするひとはいっぱいいるし、運とかも絡んでくるので。
ただ、”苦しい”を取り除くぐらいのことは多分、頑張れば出来る。絶対に抜け出す道はあると思う。走りきれるかどうかは、自分次第ですけど。駆け出すことは、誰でも出来るかな、って。
――そうしたスイッチをGOMESSさんのなかで切り替えた瞬間はありましたか?
常に走っていたと思います、僕は。ただ、どんどん(抜け出す道を)見つけられるようになっただけだと思います。常に諦めてなかった。
――自閉症と診断されたときも、そうでしたか。
そうですね。絶対に自分が悪いんだとは思っていなかったし。もちろん、「悪い」という見方はしましたけど。「なぜ悪いか」っていうのは考えたから。…なぜ考えたかっていうと、小・中学生の頃は全くわからなくって。お母さんとかに怒られたりするたびに、「俺は悪くない」の一点張りで。自分の気持ちも上手く話せないから。「悪くないです。アイツが悪いです」しか言えないし。
そういう気持ちとかを伝えたいとかで、言葉学んだりとか。「なぜ人と違うんだろう」ってことをちゃんと観察するようにしていったなかでずっともがいていたら、もがき方がどんどん綺麗になってきた。だから、マインド的にはずっと変わってないです。
――そうしてGOMESSさんが走り続けていられる原動力は、なんなのでしょう?
ひとですね。ひとが喜ぶところが、見たいですね。今バンド組んで本当に良かったなと思っているのは、本当に、病まなくなりましたね。この二ヶ月、本当にすごいですね。みなぎってます。
このインタビューの完全版は、2016年10月1日にShiny Booksより発行されるカルチャー誌『アヴァンギャルドでいこうvol.6』に収録されています。
2015年4月12日に代官山LOOPにて開催されたGOMESS 初の単独ライブ「人間失格」が完全映像化。
2016年9月4日より、ライブ会場およびWeb Shop「LOW HIGH WHO? MARKET」にて取り扱い開始。
価格:2,500円(税込)
LOW HIGH WHO? MARKET:http://lowhighwho.cart.fc2.com/ca17/294/p-r-s/
[収録曲]
01. Meteor with A.Y.A
02. 普通のことができないから with 緑川マリナ
03. ゴメスティック・バイオレンス with nej
04. shen with サクライケンタ
05. 笑わないで with いな(QQIQ) & サクライケンタ
06. 海月 with 木村仁美
07. keep with 姫乃たま
08. Prisoner
09. RELOAD with E TICKET PRODUCTION
10. 遺書 p2
11. THE MOON
12. カーテンのない部屋
13. ゆうかい with BOKUGO
14. 盲目の秋
15. 箱庭 with Kuroyagi
16. 月光 with センチメンタル岡田
17. 伝説 with センチメンタル岡田
18. し with センチメンタル岡田
19. 遺書
20. バースデー
21. 人間失格(あい)
22. 笑えてた with Paranel & サクライケンタ
23. 人間失格 with HENTAI★BEATS
24. LIFE
[Cast]GOMESS / 矢車 / A.Y.A / 緑川マリナ / nej / サクライケンタ / いな (QQIQ) / 木村仁美 / 姫乃たま / E TICKET PRODUCTION / BOKUGO / Kuroyagi / センチメンタル岡田 / Paranel / HENTAI★BEATS
[Screen Paint]Paranel
[主催]岡島紳士(IDOL NEWSING)
[Special Thanx]代官山LOOP
[Jacket Ilust]Paranel & 羽尾万由子
[撮影]竹内道宏 / 石井将 / 山口紘平 / 岡島紳士 / 田村徳隆
[編集]竹内道宏
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