私が伝わる歌を歌えば、何も心配することはない
ーー歌について言えば、「NEXT ONE」などのように強く突き刺すアンセムも素晴らしいですが、「風に唄えば」はレミさんが学生時代にゴスペルをやっていたという背景も滲んでいるなと。
松尾:ゴスペルは、小中学生の時にやっていたのが染み付いていて。クリスチャンではないですけど、教会のゴスペル・チームに入っていたんです。教会っていいよね?
亀本:行ったことないよ。あ、レミさんの通ってた教会は行ったわ。ギブソンのSGがあった。
松尾:その教会おかしくて、牧師さんがエルヴィス・オタクなんですよ。だからドラム・セットやギターが置いてあって、すごく自由なところだったので通ってました。ゴスペルは日本の合唱曲以上にたくさんのパートがあって、低音はベース・ラインを支えるし、高音はめっちゃ高い音も歌い上げる。黒人だからできるところもあると思うんですけど、鍵盤のようなハーモニーなんです。それがコーラスを考える時に役立ちますね。ギターだけじゃなくて、歌で厚みを出すとより人間らしくなるのが好きです。それと「風に唄えば」の歌詞は、考えている時に細野晴臣さんの「恋は桃色」が頭にありました。
ーー矢野顕子やサニーデイ・サービスも歌った名曲ですね。
松尾:はい、<ここがどこなのか/どうでもいいことさ>と、どこか見覚えのある街に辿り着いてしまうその世界が本当に好きで。「風に唄えば」は、そんな雰囲気を思い浮かべ、晴れた午後の空を見てどこかに行きたいなと思いながら弾き語りで作ったんです。あとちょうどその時期、友達のバンドが活動を辞めちゃったり、事務所と契約が切れちゃったりしたんです。でも「そんなのどうでもいいじゃん」と。そういうことより、私たちは本当に音楽が好きで、自由で、ただ歌を歌っていようよという想いが込み上げて。雨に濡れても風に吹かれても笑っていようぜって、仲間たちに対しても歌った曲ですね。
ーーGLIM SPANKYは仲間意識が強いところも特徴ですよね。前作のツアー・ファイナルでも、「みんなでのし上がっていこう」みたいなMCをしていましたし。
亀本:レミさんすぐ仲間になっちゃうからね。
松尾:そうだね、仲良くなったらみんな仲間だなって思っちゃう。「ワイルド・サイドを行け」を作った時も、一匹狼で獣道を切り開いていくより、みんなで大通りを開けたらそこで見える景色はひとりで見るものよりも最高だなって思ったので、<仲間とこじ開ける未来は絶景さ>と書いたんです。やっぱり、人が好きなんだろうな。その感じは昔からありますね。
ーー歌詞に関して掘り下げると、今回は素朴な言葉も増えましたよね。
松尾:『SUNRISE JOURNEY』を作った時に、ともに作詞をしてくれたいしわたり淳治さんと雑談してたんです。そうしたら「俺さ、作詞家として活動してるけど、最近になって分かったことがあるんだよね」と語り出してくれたことがあって。愛してるという言葉があるじゃないですか。時代を問わず色々な人が歌ってきた言葉。そんな中、自分の中に届く<愛してる>と、クサイなーと思う<愛してる>があるんですって。ほとんどがクサイと思ってしまうんだけど、本当に届くものもあって、「本当に届くのは、歌い手が本当に<愛してる>と思って歌ってる曲だわ」と言っていたんです。私は昔、「この言葉はクサイから使いたくない」とか、変な決まりが自分の中にあったんですね。でも淳治さんの言葉を聞いてから、それがまったくなくなりました。それは、言葉のせいではなく自分のせいというか。私が伝わる歌を歌えば、何も心配することはない。逆に恥じらいや迷いがあったら人の心に突き刺さらない。そう思ってから、より本気で思った言葉を歌うようにしたんです。たぶん去年までの自分なら、「話をしよう」みたいな歌詞は歌わなかった。
ーー<このまま話していたいよ>と好きな人へささやく、とても素直な歌です。
松尾:普通のことを気取らないで歌う。そういう歌を歌えなければ、歌い手としてダメだと思うようになりました。でも「NIGHT LAN DOT」みたいな、分かりやすいだけではない、文学的なものも好きだから歌い続けたい。だから引き出しが増えたという感じですね。自分の中に色々な引き出しを見出せるようになってきた。その始まりが、この『Next One』なんです。
GLIM SPANKY
松尾レミ(Vocal & Guitar, Song Writting, Art & Design)
亀本寛貴(Guitar)
ロックとブルースを基調にしながらも、新しさを感じさせるサウンドを鳴らす、男女2人組新世代ロックユニット。ハスキーで圧倒的存在感のヴォーカルと、ブルージーで感情豊かなギターが特徴。ライブではサポートメンバーを加え活動中。
GLIM SPANKY オフィシャルサイト
ニューアルバム『Next One』
初回限定盤(CD+DVD):TYCT-69104 / 3,700円(+税)
通常盤(CD):TYCT-60086 / 2,700円(+税)
[ CD収録楽曲 ]
01. NEXT ONE
02. 怒りをくれよ
03. 闇に目を凝らせば
04. grand port
05. 時代のヒーロー
06. 話をしよう
07. NIGHT LAN DOT
08. いざメキシコへ
09. 風に唄えば
10. ワイルド・サイドを行け
[ DVD収録内容 ]
“ワイルド・サイドを行け”ツアー(2016.04.16恵比寿LIQUID ROOM) ライブ映像約50分収録予定
Next One TOUR 2016
09月22日(祝・木) 長野 CLUB JUNK BOX
09月24日(土) 京都磔磔
09月25日(日) 高松TOONICE
09月30日(金) 福岡the voodoo lounge
10月01日(土) 岡山ペパーランド
10月06日(木) 金沢vanvan V4
10月07日(金) 新潟CLUB RIVERST
10月10日(祝・月) 札幌BESSIE HALL
10月14日(金) 仙台MACANA
10月16日(日) 広島CAVE-BE
10月22日(土) 梅田umeda AKASO
10月28日(金) 名古屋BOTTOM LINE
10月30日(日) 新木場STUDIO COAST
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