区切りの年を迎えたBrian the Sun。「SUNNY SIDE UP」リリースインタビュー
今年、バンド活動10周年を迎えたBrian the Sunが7月5日にミニアルバム『SUNNY SIDE UP』をリリースした。彼らにとって区切りの年を迎えたからこそ、Vo.森 良太は“死=終わり”について考えたという。彼らの出した答えとは何なのか? 進化を止めない、Brianの快進撃は始まったばかりだ……。そして、10月には主催イベント『ブライアンフェス』も決定。Brian the Sunから目をはなすわけにはいかない。
Text_真貝聡
Edit_司馬ゆいか
死に向かっていくことは良いこと
――前作の『パトスとエートス』から比べると、今作は明快なメロディにミニマルな歌詞で今までのBrianとは違う気がしました。
森良太(以下、森) : そうですね。出来上がってみて、自分たちとしてもポップなものになったなと思いますね。何でなんやろうな? 自分でもあんまり自覚はなくて。
白山治輝(以下、白山) : そもそも7月にリリースするので、「夏っぽいミニアルバムにしたいね」って話はしてました。
小川真司(以下、小川) : ここまで分かりやすく夏をテーマにしている曲は珍しいなと、僕も思いましたね。
白山 : そうやな、俺ら青空な感じなかったもんな。
小川 : 歌詞もみんなが受け取りやすい歌詞というか。
森 : 技術的にも複雑なことをするんじゃなくて、シンプルに行きたいなと思って。
白山 : 次に進むじゃないけど、もっと開けるみたいな。そういうモードをヒシヒシと感じながら。
アルバム『SUNNY SIDE UP』収録曲、『Sunny side up』
――歌詞を読むと、過去を振り返って色んな経験をした上で自分がいるという印象を受けました。
森 : まさしく、振り返るということが今作のテーマになってます。人の数だけ死があるはずなんだけど、死と相対することが凄く少ないじゃないですか。お葬式だって結婚式の数よりもあるはずやのに、そういうところって何で見えへんようになってるのかなって思った時、みんな、死ぬ=終わるってことを考えるのが怖いんやなと。人生をしっかりと見つめた時、最後は必ず死ぬことが決まってるんです。そしたら、死ぬまでの出来事はすべてが過程になると気付いたんです。
――それって、死を逆算して人生を過ごすってこと?
森 : そうですね。僕らが「武道館でライブしたい」と言って、成功したとするじゃないですか。やる前は目標で、やった後は過程なんですよ。自分がどういう死に方をするのか分からないですけど、死ぬまでの出来事はすべて回想になるんやと思って書きました。そしたら、日常が今までよりも価値があるように感じられて。
――仕事をしていると、人間としての人生だけじゃなくて、アーティスト人生とか、僕ならライター人生の死を迎える日が来るじゃないですか。森さんが話しているのでは前者の話ですよね。
森 : アーティストとしての死もありますね。日々暮らしていく中で、ちょっと耳が悪くなってきたなとか、声が出なくなったなみたいなことって少しずつ死に近づいているというか。生き続けていくってことは死に続けていることなので……そう考えると、死に向かっていくことは良いことに感じるんですよね。
――死に向かうことが良いこと?
森 : 生きていくために毎日を過ごしていくとか、楽しく過ごすために生きていくんじゃなくて、衰えたり自分の思い描いた通りに物語が進まなくなっていくことって凄く辛く感じるんですけど……そうじゃなくて、それも込みで生きるとか死ぬってことやと思うんですよ。だから、衰えて今まで出来たことが出来なくなる方が美しく感じるというか。もちろん人間としてはしんどいんですけど、植物が枯れていくような……そういうのもキレイやと思うんで。
――みんなが森さんのような考え方なら、生きるのが楽になりますね。
森 : そうですよね。
――いつからその考えになったんですか?
森 : いつから? 2017年になって、『パトスとエートス』をリリースして、誕生日を迎えてなので……うん、5月くらいかな。
パトスとエートス
――最近でびっくりしました(笑)。
白山 : 27歳になってからやな。
森 : うん、27歳になってぼーっと色々考えてて。今年でバンド活動10周年なんですよ。めっちゃ区切りが良いじゃないですか。それで「いつまでバンドをやってるのかな」って思った時に、死ぬ間際までやっていたいですけど……10周年って区切り良いし、「一回、解散しよう」ってなるのか!? みたいな。そう思った時に、ずっと続かんよなって。
――なるほど。
森 : 何が嫌なんだろうって考えていった時に、当たり前なんですけど、成功したい欲があるし、ポジティブに生きた過ぎるねんなって思った。それって欲張りやな、と。人って手元にあるものでしか勝負できないので、場に出ているカードを見て「あれが欲しい」と思っても貰えないじゃないですか。自分の手元を見つめることって、どのくらいしてたかなって思ったんです。良いこともあるし、良くないこともあるけど、それが自分のカードやねんなと思うと、これでも勝てるかもしれへんって思えた。それは多分、区切りが良い年だからって理由もあるかもしれないです。
ソングライティングの能力は高校生からあったと思う
――10年間も支持されてきた理由はなんだと思いますか?
森 : あんまり支持されていると思ってないっすよ。大衆の評価を得ていると思ってなくて、もちろん応援してくれる人はいるんですけど。応援してくれてる人自身も俺らが支持されているとは思ってないハズなんですよ。
――そんなことないでしょ(笑)!
森 : 世間に対して疎外感を感じてる人が観に来てくれているのかなって思ってます。
――過去を遡ると天王寺のFireloopってライブハウスに出演していた時期も、店長が無名だったBrianをお客さんの多いイベントに呼んでくれたって話もあるじゃないですか。
森 : そうですね。演奏も下手くそやし、ライブって言うほどのライブでもないのにみんなめっちゃ褒めてくれたので、あの環境は良かったですね。勘違いさせてくれたっていうか。それは大事っすよ。
白山 : その時にハヌマーンがいたのも大きかったと思うけどな。
森 : 月1でワンマンやってたもんな。
白山 : 同じ箱にハヌマーンが出てて。ライブハウスが寺田町ってアメ村とか北南からちょっと外れた場所にあったんですね。そこで、どこの事務所にも所属してないバンドが売れていく様を目の前で見てたから「ここでやっても行けるんや」って希望を持てたのはハヌマーンのおかげですね。
森 : 夢を見れたよな。
天王寺Fireloopでのライブ
――演奏力が身についていない時代から応援されてたのは何ででしょう?
白山 : 語弊があるかもしれないですけど、曲のクオリティが変わってないんですよ。僕ら的には(森は)ソングライティングの能力が高校生からあったと思うので、そういうところを評価してもらえたのかなって思いますけど。
森 : 高校生の頃はめっちゃ曲を書いてたので。1日1曲くらいで書いてたんですよ。
――そんなに!?
森 : 「100曲書け!」って先輩に言われて。それで1日1曲書いてたんですけど、結局38曲くらいで途切れてしまいました。でも、そういうことをずっとやっていたので、曲を書くってことが当時は特に好きで。
白山 : 今よりも好きかもしれへんな。
森 : のめり込んでたっすね。趣味だったというか、それが良かったのかなと思います。ライブでセットリストを組むときも全部新曲だったもんな。
小川 : 俺がお客さんとしてBrianを観ていた時に思ったのは、ただただ曲が良いし声が良いっていう。森 良太というアーティストが高校生ながらに良いと思ってたし。
森 : 自身満々やったもんな。
小川 : 本人もそうやし、周りも「こいつは凄い」って目で見てたんですよね。だからバンドに入りたいと思った。
閃光ライオットでのBrian the Sun
――ちなみに10年を振り返って、バンド最大のピンチってありました?
白山 : 『閃光ライオット』っていう高校生限定のイベントに出た時に、俺と良太以外のメンバーが抜けたんですよ。それまで(良太と)本音で語り合ったことがなくて、自分とは一緒にバンドをやりたいと思ってないやろってお互いに思ってて。一度、解散するって話になったんですよ。その時、先輩のミュージシャンから、びっくりドンキーに呼び出されて「お前ら一回、本音で話せ」って。
森 : ムロ(松室政哉)くんな。
――あぁ、シンガソングライターの。
白山 : そうそう。そこで機会を作ってもらえなかったら、解散してたと思う。それが最大のピンチかな、結成3年目でしたね。
――なるほど。
白山 : あの日のチーズバーグディッシュの味は忘れられへん。
一同 : (笑)。
――美味しかったんですか?
白山 : 和解してたので美味しかったです(笑)。そこから、もう一度バンドを作り直すってなりましたね。
森 : ムロくんとかさ、関わってくれた人が今も同じ業界にいることが嬉しいよな。大事よな、年をとるって。二十歳ぐらいの時はおっさんになりたくなかったけど、今はおっさんになりたいです。
――おっさんっていくつぐらいですか?
森 : 33歳くらい。
――すぐじゃん(笑)! メンバーの中だと、田中さんが大人の貫禄がありますよね。
田中駿汰(以下、田中) : 貫禄……。
小川 : 俺たちの1つ下には見えないですよね。
森 : 人間味が全身に現れてますよね。
田中 : そう……ですか?
白山 : 貫禄を出すために努力してることはあるんですか?
田中 : なんですかね。常に危機感を持っています。
森 : ほんまにそうなん?
田中 : 危機感というか終わりを見ながら生きてます。
――その考え方は森さんと同じですね。
田中 : 終わって欲しいわけじゃなくて、いつ終わってもいいように生きています。
森 : 武士の生き方やな。
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