熟するって意味でも売れて(熟れて)いきたい
――じゃあ、大阪編と東京編と2日間ともに良い手応えだったんですね。
森 : 大阪編のとき、気合を入れて準備してきたつもりだったんです。だけど、いざステージに立ってみると思っていた通りにいかなかった……。
――どうしてですか?
森 : 「自分でなんとかせな」と思って、ひとりで戦ってるつもりになってたんです。でも、僕は昔からそうで。バンド自体もシーンから孤立に近いような感じでやっていたし。だけど「ひとりって思わなくても、みんなが側にいるから大丈夫」っていう安心感が芽生えたんです。みんな敵じゃないし、僕らを観たいと思ってライブに来てくれている。大阪でそのことに気づけたので、その後の東京でのライブはとにかく楽しくて。「俺が俺が」って感じでライブをするのは違うなって気持ちになった。むしろ仲間が増えていくことが嬉しいな、と思えました。
――ある意味、人を信用できるようになったのかもしれないですね。
森 : どんなシーンのオーディエンスなのかとか、自分たちがどういう立ち位置だからとか、そういうのはいらんなと思いました。世の中って自分とは違う人ばかりじゃないですか。「彼は僕とは違うから分かり合えない」っていうのは諦めでもなんでもなく、ただのプライドなんですよ。
壁を作らずに、信じれば良いと思うんです。甘えるところは甘えて、ときには助けてもらって。自分に出来ることをやればいいかなって。『ブライアンフェス』のおかげで足かせがとれた気がします。
――その心境の変化は最近のインタビューでも感じました。「自分が好きな音楽をやっていればいいや」じゃなくて、「いろんな人に届く音楽を作りたい」って話していたじゃないですか。あと「ちゃんと売れたい」とも。それは今の話とも繋がるのかなって。
森 : 漢字は違いますけど、熟するって意味でも(熟れて)いきたいなと思って。今までは、僕らが興行的な成功を目指すのは違うと思ってたんですけど、「わかる人だけが理解してくれれば良い」って、そこで頑固にこだわりを打ち出していく必要はないな、と。
アーティスト性とエンターテイメント性に挟まれながらもがいていくのがバンド
――ちなみに「Brian the Sunはこういうバンドだ」っていうバンド像は変わりました?
小川 : それぞれが好きなようにやっているだけで、元々そういう感じはないかもしれないですね。
森 : エンターテイメント性を軸にするバンドやったら、そういう考えになったかもしれないですね。バンドイメージだったり、方向性だったり。僕はスターリンが好きで。今、ああいう強烈なカリスマ性のあるバンドっていないじゃないですか。細部ばかり指摘される時代というか、間違いを訂正する人たちがいるんです、今の時代って。
――わかるなぁ……。スターリンの(遠藤)ミチロウさんはライヴ中は臓物を客席に投げたりして強烈に過激だけど、トーク映像を見ると福島訛りのおっとりとした口調で。「普段の話し方が優しそうだからライヴの姿は嘘じゃないか」っていうと、そういうことじゃないんですよね。
森 : そうです。音楽を表現する上では本来は何の間違いでもなくて。粗探しをしだすと、そういう活動ってできなくなる。でも、それを時代のせいにしたら負けな気がしてて。この間、テレビでCHAIのインタビューが流れてたんですよ。演技なのか本気なのかわからないですけど、ハツラツとして、すごい自由やったんですね。で、彼女たちから時代を切り開くエネルギーを感じた。それでまたひとつ、俺らはこのままでいいなと思いましたけど。
――どうしてそう思ったんですか?
森 : 俺らのやっていることの、一見しただけではわからない奥深くにある特殊な部分っていうのが、もうちょっと出て行きそうやなって思ったんです。そこが一般の人にも届いたらええなって。だからバンドとして、こういうふうに活動しないとダメって考えたらしんどい。もっと自由で良いんです。
――前にインタビューした時も「いつまでバンドを続けるとか、先のことは考えてない」って話してましたよね。
森 : アーティスト性とエンターテイメント性に挟まれながらもがいていくのがバンドだと思うので。そういう目線で見ると面白いと思います。どちらかを否定しているわけでもなくて、今、自分が気持ちいいことをやるしかないですね。
――今、Brian the Sunが思う音楽との向き合い方ってなんでしょう。
森 : 聴いてくれている人たちに不義理がないようにライヴをする方法は、みんなを盛り上げることではなくて、盛り上げずにライヴすることでもなく、愛情を持ってステージに立つことだと思うんです。それが根底にあれば誰も傷つきはしないし、誰も不幸せにはならへんなって思いましたね。
――今日はもう1つお訊きしたいことがありまして。今回、皆さんがエンディングテーマを担当しているアニメ『3月のライオン』は将棋をメインに、人間関係も色濃く描かれている作品です。そこで、Brian the Sunのメンバーに仲間との思い出話を語っていただけらたらと思います。
白山 : 今から4年前にKANA-BOONと東名阪で2マンをやったんですよ。もう少しでKANA-BOONがメジャーデビューする時で。毎年やっても面白くないから「3年後にまた2マンやろうぜ」って話を「びっくりドンキー」でしたんです。その後に(KANA-BOONが)バカ売れしたので、無理やと思ってたんですけど。彼らは俺らとの約束を覚えててくれてて、本当に3年後に2マンが実現したっていう。
森 : 俺ら「びっくりドンキー」で色々あるね(笑)。
――初めて解散の話になった時も「びっくりドンキー」でしたよね。
森 : エピソードというよりも、活動自体が励みになってるんですよね。この前、BURNOUT SYNDROMESと福岡で2マンをしたんですけど。大阪の小さいライヴハウスで一緒に対バンしていた2組が福岡の会場を満員で埋められるようになってて。バンドってどんどんなくなっていくけど、そんな中で一緒に続けてくれているバンドがいると安心するよね。
白山 : BURNOUT SYNDROMESとKANA-BOONは特に思うかな。無名時代から大阪のライヴハウスで対バンしていた3組が今や同じソニーミュージックに所属して、会社でばったり会ったりするだけで「嬉しいな」って。
森 : そんなこと普通ないもんな。
白山 : 昨日、フレデリックのケンジくんと飲んでて思い出したんですけど。北堀江にあるキャパ150人くらいのVISIONってライヴハウスで5、6年前に対バンしてて。そこから振り返ったら「今は東京でライヴができて、音楽でメシが食えるなんてヤバイよな」って話になって。
森 : ひたすら、そういうことを実感してる日々ですね。今はバンドとして良い時期なんですよ。時間が経って「あの時は東京でライヴしてたよな」って大阪の汚い居酒屋で話してても面白いし、もしかしたら東京のオシャレなお店で話してるかもしれないし……。
前からそうなんですけど、老後のことを考えるんです。そう思った時に今のライヴしてる写真を孫に見せて自慢するのか、「じいちゃんはこういう人やってんで」って周りが孫に教えてくれるのか、そういうのが結構大事だなって。
――振り返った時に後悔がないようにする、と。
森 : それですね。後ろめたいことを考えながら音楽をやり続けるよりは、誠実にやっていきたいなと思いますね。
――ありがとうございました。最後に……バーベキューの次はどうしましょう。
田中 : そうでしたよね。
森 : もう罰ゲームとかやめて、みんなで鍋するとかにしません?
白山 : それええやん。
――良いですね! 鍋をしながらインタビュー。
森 : むっちゃいろんなことを話しちゃいそう。
【Brian the Sunリリース情報】
『カフネ』
発売日:2017年11月15日(水)
通常盤
【CD】ESCL-4928 1,000円(税別)
ライオン盤
【CD+DVD】ESCL-4929〜30 1,759円(税別)
ブライアン盤
【CD+DVD】ESCL-4926〜7 1,759円(税別)
(通常盤CD収録内容)
01.カフネ
02.フォレルスケット
03.カフネ(Instrumental)
(ライオン盤CD収録内容)
01.カフネ
02.フォレルスケット
03.カフネ(アニメver.)
04.カフネ(Instrumental)
(ライオン盤DVD収録内容)
TV アニメ「3月のライオン」エンディングのノンクレジット映像
(ブライアン盤CD収録内容)
01.カフネ
02.フォレルスケット
03.カフネ(Instrumental)
(ブライアン盤DVD収録内容)
『Brian the Sun TOUR 2017 “パトスとエートス”』2017.5.27 恵比寿リキッドルーム ライブ映像
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