根本にあるのは、良質な商品・ブランドを世に広めたいという想い
――開発からリリースまでにはどれくらいの時間がかかっていますか?
約2年半ほどですね。アプリケーションの開発はもちろんですが、決済システムや法令上の問題、コンプライアンスなど、さまざまな障害を乗り越えて、ようやくローンチまでたどり着きました。
――2年半前というと、まだVRやメタバースといった言葉が今ほどは定着していませんでしたよね。
2021年にメタ・プラットフォームズへと社名を変えて話題となったフェイスブック社が、VRヘッドセット・Oculus Questを発売したのが約2年半前です(2020年)。当時VRはまだ登場して間もない分野で、メタバースという言葉もあまり聞くことがありませんでした。
――そのようなタイミングでVRショッピングアプリの開発に向かうのは、大きな決断だったかと想像します。なぜこの分野に挑戦しようと考えたんですか?
先ほども話にあがった私たちの母体となっているグループ会社・トランネクストの物流網を生かし、販売から配送までを一元管理できないかと考えたことが起点でした。もともとVRの分野には注目していたんですが、そのときはまだこの2つの点がつながるとは考えていませんでしたね。
その後、少しずつVRの分野が盛り上がってくるなかで、「いまメタバースが面白い」という話を聞いて。そのときにピンとひらめいたのが、VRを活用したショッピングアプリでした。これで販売から配送までを自社でおこなえれば、グループ会社の物流網を生かしながら、消費者が新しい商品に巡り合う機会も作れるのではないかと。
――当初の想いが現在のゼノモールの仕様にも込められているんですね。
はい。良質な商品を世に送り出しているショップやブランドにもっと日が当たって欲しいという気持ちがなければ、ゼノモールは生まれていなかったと思います。
――今後の展開についてはどのように考えていますか?
ローンチしたばかりでまだ機能的に不充分なところがあるので、定期的にアップデートを施しながら、クオリティアップに努めていきたいです。
あとは、ショップ数の拡大ですね。現在はまだ、日本のショップさんしかないんですが、長期的には、海外のショップやブランド、クリエイターともつながり、日本にいながら世界の商品が購入できる環境を構築したいと考えています。国内のECがまだ実現できていないことを、VRの強みを生かして実現していければと。
――直近だと、どのような機能を実装する予定ですか?
まずは商品の見せ方の部分にテコ入れします。現在は、商品の画像や説明文、価格といった最低限の情報しか表示させられていないんですが、ここに動画を埋め込めるようにする予定ですね。実店舗やオンラインショップでもよく見かけますよね。
ショップにとっては、その商品の魅力を視覚的に表現できる場所になりますし、顧客にとっては、より詳しい商品情報を得る機会にもなります。この部分については、早ければ夏までに開発が完了する見通しです。
――先ほどおっしゃっていた試着の機能については、まだ少し時間がかかる?
そうですね。というのも、ゼノモールはモバイルアプリなので、動作がスマートフォンのスペックに依存してしまう部分があるんです。クオリティの高いCGを表示しようとすると、現行の端末では動作が安定しない。そうすると、本来もっとも大事なお買い物のときに端末がフリーズしたりと、ユーザーにストレスを与えてしまいます。今後スマートフォンのスペックが今より向上し、かつ私たちの開発が追いついたときにようやく実装できるのではないかと考えていますね。
――端末のスペックがボトルネックという話になると、パソコン向けに展開する選択肢も出てくるかと思います。
はい、実はすでにWebブラウザ版の提供も検討しています。パソコンならスペックの問題もある程度クリアできるので、試着機能の実装も近い将来のアップデートとして現実的に考えられますね。
――ローンチを迎えての手応えはいかがでしょうか?
ショップの担当者さんの反応を見ていると、熱量の高さを感じます。小売の分野では、まだメタバース自体がそこまで認知されていないんですよね。今後少しずつ浸透していくにしたがって、ゼノモールに出店するメリットについても、より現実的に考えていただけるのではないかと思います。
実は『Japan IT Week』も来年の春に初めてメタバース展がスタートします。今後は競合も増えてくることが予想されますが、ショップ・ユーザーの両方に魅力的なサービスと感じてもらえるよう、クオリティアップを続けたいですね。
――最後に、長期的な展望について聞かせてください。
将来的には、海外版も発表したいです。日本の良質な商品を海外のユーザーに手に取ってもらえる環境が構築できれば、開発当初の想いはより形になります。ユーザーのためのゼノモールと、ショップのためのゼノモールを両立させたいですね。
VRショッピングモールが小売の新常識となる日は近い
お話を伺うなかで感じたのは、ゼノモールの考え方・実現できることが、音楽フェスやMMORPGの世界にも通じているということでした。
それぞれ別の目的を持った人たちが同じ場所に集まって、まだ見ぬ人や商品と出会い、そこでコミュニケーションを育んでいく。こうした構図はまさに、音楽フェスやMMORPGの世界と同じだと思います。これまで実店舗や雑誌、Webメディアなどに担われてきた偶発的な出会いを創出する役割が、メタバースへと置き換わっただけ。VRショッピングモールという新しい概念は今後、小売の新常識となっていくかもしれません。
株式会社KWD
https://www.kwd-corp.co.jp
トランネクスト株式会社
http://trannext.jp
XENO MALL(ゼノモール)
https://xe-no.jp
SHARE
Written by