突然だけど、音楽にとって「めがね」って欠かせないアイテムのひとつだと思うのです。「めがね」に偏った愛を、暑苦しく語ってもらう対談の企画をスタートします。記念すべき第一回目はフリースタイルラッパーとして活躍する呂布と、ドメスティックめがねブランド〈EnaLloid〉のクリエイティブディレクター・三島正に登場いただきます。
Photo_Kousuke Matsuki
Interview&Text_Shoko Matsumoto
Edit_Ado Ishino(E)
――そもそものふたりの出会いは?
三島 :
呂布 : ゆきのちゃんも知らなかったんですか? やば(笑)。
三島 :
呂布 : いやあ今見ると恥ずかしいですね。初々しい!(笑)。どうなるかわかんないけど、楽しそうだから行ってみよう!って気持ちで撮影に参加したんで。ゆきのちゃんの大女優ぶりをすごいと思いましたよ。
三島 :
呂布 : ないですよ! このときはまだ!
三島 : (笑)。
呂布 : 演技できないって現実を知らされながらも、前向きに行こうって感じでした(笑)。それよりも〈エナロイド〉がいい感じでみんなに伝わってくれたらという思いでやりました。映像としても、コンセプトとしておもしろいですよね。
三島 : スタイリングも知り合いから洋服を借りて僕がやったもんね。
呂布 : 撮影の時、知り合いしかいなかったですもんね。
EnaLloid STORE @Omotesando
“めがね好き”には“めがね好き”が集まる
三島 : これをきっかけに僕らはぐっと近づいた感じですね。
呂布 : いいきっかけになりましたね。一緒に作って、それ以来展示会に遊びにいったり。
――めがね好きの周りには自然とめがねをかけている人が集まるのか、三島さんの周りにはめがね好きが多いように見える。
三島 : 周りにめがねをかけている人が多いかも知れないですね。ライターの三宅(正一)さんとか、長岡亮介とか。
呂布 : 俺の知ってる限りでは、みんなめがねしてますね。常日頃。
三島 : みんなめがねはかけているけど、意外とどこで買ったらいいかわからない人が多いんですよね。そんな中で知り合ったら、いつの間にかみんながめがねをかけてくれてるというか。
呂布 : 俺もまさにそんな感じでしたね。実は今まで、めがね自体してなかったんですよ。超ド級に目は悪いんですけど、普段はコンタクトなんです。今かけているのもダテめがねです。目が悪すぎて、度入りのめがねをかけると牛乳瓶の底みたいになっちゃうから。
三島 : でも、一本度付きのめがねを作っておいたほうがいいけどね。
呂布 : 今まではかけることなんて想定してなかったし、自分の人生の中に“めがね”がジャンルとして存在さえもしてなかったものだったから、急に来た!って感じですね。味をしめましたよ。
三島 : 呂布くんも最初はそうだったけれど、めがねってネガティブなイメージがあったりするんですよね。いいモノに出逢ってないから。眼鏡屋って、洋服屋のようによく行くかと言われたら、デートコースに入らないじゃないですか。必要にかられて買うときは行くけれど。めがねって日常的なものなのに、非日常的な買い物のイメージなんですよね。一度知ると、意外と楽しかったりするんですけど。知るまでに時間がかかるかもしれないですね。
――今はファッションの一部としてかけている人も増えたが、まだまだ少ないと三島さんは言う。
“めがね理論”がわかれば“めがね”は楽しい
三島 : 前よりは増えたけれど、まだまだ少ないと思いますね。
呂布 : でも俺は、だいぶポジティブなイメージに変わりましたよ。今までは、めがねをかけたときの自分の顔を鏡で見ると違和感を感じちゃって。良いか悪いかというより、単純に違和感として捉えてたんですよね。
三島 : 似合っているか似合っていないかが、自分ではわからないという人はけっこう多いんですよ。理屈がわからないみたいで。ある程度理論的な要素を踏まえると、意外に自信を持ってかけやすくなったりするんです。実際に呂布くんが掛けてくれているめがねも似合っているし。
呂布 : 三島さんにオススメしてもらっためがねなんで!(笑)
三島 : 一度似合うのを見つけてしまえば、それからは理屈抜きで、気分で選んでいいと思うんですよね。ファッションと同じですよ。
呂布 : 楽しくなりますよね。自分のベースの部分がわかってくると、しっくりくる瞬間がある。
三島 : だから僕、意外と眼鏡選びは超理屈っぽいんですよ。レンズの中で目の位置はどこに置いておいたらいい?とか、骨格に対するバランスとか。呂布くんの場合は、顔が面長なので、タテ感がある物のほうが締まる。目の位置は中心よりほんの少し中にあるとバランスがいいとか。
呂布 : それでこのめがねなんですね。理解できました。そういえばこのめがねを掛けて三島さんと写真を撮ったことがあって、その時の自分の顔が母親とそっくりだった、余談ですけど(笑)。俺はこのめがねでジャストをいって、今年はもう少し遊んでみようかなと思ってます。例えば、めがねをかけてライブをしてみる!とか。
三島 : 絶対かっこいいと思うよ!
“呂布” :
三島 : もともと一緒にバンドやってたんだもんね。
呂布 : ズットズレテルズというバンドをやってました。10代の頃から変わらず遊んでた仲間なんで、まさか共演できるとは、おもしろかったですね。
OKAMOTO’S 『NEKO(Remix) feat.呂布/MUD』
めがね担当とラップ担当
三島 : 僕は10代の頃に、ボブ・ディランとか音楽をやっている人が黒ぶちのめがねやサングラスをかけているのを見てカッコいいと思って憧れてね。15歳の頃からずっとダテ眼鏡を掛けてるんですよ。
呂布 : やば!
三島 : 目はいいんです。先週健康診断行ったけどやっぱり1.0はクリアしちゃってるから。
呂布 : そこまでいくと完全にアーティストですよね(笑)。
三島 : めがねってインテリジェンスな感じがするじゃないですか。ヒップホップの人がかけてるのもいいと思う。
呂布 : 今年はいきますよ、めがね掛けていきます。ライブでお客さんもみんなめがね掛けてきてもらって、ドレスコード作って(笑)。
三島 : イベントとかも一緒にできたらいいですよね。音楽がきっかけでめがねを知っていくと、めがねの捉え方が変わるじゃないですか。
呂布 : 俺、ほんとそう思います。めがねだけじゃなく、ファッションと音楽って、まだ日本は離れていると思うんですよね。海外のほうがもっと密接な感じがする。日本ももっとそうなっていったらいいと思います。
三島 : モノを買う人たちが、音楽もファッションやアートも、ライフスタイルの同一線上にあればいいと思うんですよ。僕の人生、“めがね担当”でいいと思ってる。
呂布 : 名言出ましたね。
三島 : たくさん好きなものってあるじゃないですか。音楽やってる友達がいる、お花をやってる友達もいる。でも、意外とめがねをやってる友達はいないと思って。だったら僕はめがね担当でいこうと。
呂布 : 俺、ラップ担当でいきます!(笑)
三島 : ラップは僕、本当にできないんで(笑)。それぞれ役割があるのがいいなと思うんです。生活がリアルだし豊かな気がする。呂布くんの音楽はもちろん、CDのアートワークもいいじゃないですか。あえて情報を少なくしてるところとかね。
呂布 : あんまりフィルターをかけすぎず、説明しすぎない感じにしてます。手に取った人や聴いてくれた人が好きに感じてくれたらいいと思ってるから。間違っていても合ってても、自由にどうぞって。でも、すごく良い音楽だってことだけは言っておく(笑)。
三島 : 僕が41歳で呂布くんが26歳。ジェネレーション的には差があると思うんですよ。40超えるとなかなか新しい音楽を聴かなかったりもする。でも、それを今すごくおもしろいと思えているし、東京にはおもしろい人たちがたくさんいるなと。
呂布 : 俺はほんとに嬉しい限りですよ。三島さんが作っているものを俺もおもしろいと思っているし、俺らの世代がやっていることをおもしろいと思ってもらえるのは。ほんとにいろんな人がたくさんいますよ。
三島 : やっぱり好きなものでつながっていくのって、いいなと思うんです。
呂布 : 周りにめがねを作っている人ってやっぱりいなかったんですよ。そこでより、めがねにも興味を持ったし、三島さんにも興味を持ったし、すげえって思いましたね。2017年は、周りみんなめがねを掛けてるようになりますよ。
呂布(りょふ)
二子玉川出身のフリースタイルラッパー。ヒップホップ・グループ『KANDYTOWN』ではラッパー、ビートメーカーをつとめる。Base Ball Bear、OKAMOTO’S、Suchmosなどさまざまなアーティストとフィーチャリングコラボしている。http://ryohu.com
三島正(みしま・ただし)
1947年創業、岐阜県中津川で一貫生産で展開する恵那眼鏡のオリジナルアイウェア〈EnaLloid(エナロイド)〉のクリエイティブ・ディレクター。めがねはもちろん音楽やカルチャーの造詣も深い。http://www.thorough.jp/enalloid/
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