――撮影がひと段落しましたけど、そもそもお二人が写真を撮り始めたきっかけは?
大橋 : なんですかね? 実家にオリンパスの一眼があって、それで遊んでたのが最初かも知れないです。
村上 : デジの?
大橋 : フィルムです。で、その時に写真っておもしろいな、って思ったんですよ。でもそれを本格的に掘り下げようとは思っていなくて。それよりは音楽だったから。で、大橋トリオがある程度形になって、落ち着いた所でまたそこに興味が戻った感じです。周りに写真や映像を撮ってる人も多かったから。
村上 : 『プレイバック』の時にはカメラ持ってたよね。
大橋 :
――−−型番指定で(笑)
大橋 : そうそう(笑)。 そしたら「いいよ、これあげる」って5Dをくれて。そこからレンズとかに入れ込むようになって。それが7〜8年前かな。
村上 : 僕も始めたのはそのくらい。なんでもそうなんですけど、僕カルチャーにしてもファッションにしてもすごく遅いんですよ。昔から言ってるんですけど、世の中の流行りの最後尾に並んでる人間なんです、僕。だけど、その後それにすごく集中するから追い抜かしちゃう。
大橋 : (笑)。最初僕はブログのために良い写真を撮ろうと思って始めたんで、フォトグラファーになろうとか、本格的なことでは全然なくて。“なんちゃって”でしかない(笑)
村上 : 僕もそうだよ。
大橋 : いやいやいや(笑)。まぁ、淳さんもそうだと思うけど、形から入るんですよ、我々は。
村上 : それは声を大にして言いたいね。形から入るとか、マネっていうのは本当に大事。
大橋 : 最初から良いものを使いたいんです(笑)。
村上 : ここ、太字でお願いします(笑)。
大橋 : うちの親が安物主義というか、楽器とかも入門用のヤツしか与えられなかったんですよ。最初に良いものを買って、がんばって続けなさいとかって感じではなくて。倹約家で、良い楽器が欲しかったら自分で買いなさい、みたいな。そういう親だったから、その反動もあったのかも。
村上 :
大橋 : スケシンさんは?
村上 : シンちゃんは、確かガスマスクか何かしてたね(笑)。それでみんなでヒロシくんちに行ったんだけど、本当になんでもあったの。スニーカーもたくさんあって、「憧れの靴が並んでるわ……」って。その時僕らは靴なんて底に穴が空くくらいまで同じのを履いてたのに。で、奥に行くとキーボードにターンテーブルがあって、ギターも並んでるの。大橋くんと出会った頃によくフェンダーローズのピアノことを話してたけど、それもヒロシくんちで弾いてたのよ。
大橋 : すごいっすね。その頃はヒロシさんて何をやってた時期なんですか?
村上 : その頃はDJが多かったのかな。で、「ムラジュンたちのビデオ撮っといてよ」、ってどっから見ても高そうなムービー用のカメラをポンって渡されて。で「オレら、どうするよ? これ……」って(笑)。
――そこで良いものにたくさん触れたんですね。
村上 : そうそう。そうやって、節々で色んなことを教えてるくれる人に出会えたんだよね。大橋くんも人生のインパクトっていう意味で言うとそれと似たものがあって。良いタイミングで出会えたなって思えたんですよね。で、良いものは人に訊け、ってその頃からなって。これはよく言うんだけど、10代だろうが40代だろうが、養われてようが自分で稼いでようが、とりあえず良いものを使って見たほうがいいと思う。カメラについては、本体はどこのでもいいけど、レンズにはこだわった方がいい。
大橋 : レンズなんですね、やっぱり。
村上 :
大橋 : どうしたんすか? それで。
村上 : あんまりカメラ知らなかったら、買ったらその日にすぐ撮れると思うじゃない? だから、その頃よく仕事をしてたカメラマンの小暮徹さんにすぐ電話して。「小暮さん大変! カメラ買ったらレンズが入ってない!」って言ったら、「ムラジュン、当たり前だよ」って言われて(笑)、このライカの50ミリをくれたんです。いっぱいレンズを持ってますけど、未だにこれが一番大事。
大橋 : この色はすごいすね。どこで塗ったんですか?
村上 :
大橋 : そういうところ、どこで見つけたんですか?
村上 : 前にインスタグラムで、すっごいイカしたライカのカスタムを載せてるアメリカのアカウントがあって、それを調べたら関東カメラって書いてあって、日本じゃん!って。で、〈ティファニー〉のブルーを再現してペイントしたかったんだけど、そのためにティファニーの物を買うのもなぁ、って思って、ヤフオクで“ティファニー 紙袋 新品”で検索して。5枚セットで2000円(笑)。
大橋 : 微妙に高いっすね(笑)。
村上 : 関東カメラって自分たちのやった仕事をポストするんだけど、これをアップした時に20件くらいコメントがついてて、その半分は反対意見。親指下げたマークとか。「カメラはファッションアクセサリーじゃないんだ!」って。だけど、若い子とかは「可愛い!」って言ってくれる。それで良いじゃん、って思ってます。
大橋 : へぇ〜。すげぇ淳さんっぽいなって思いますね(笑)。
村上 :
大橋 : そんなことやってたんすね。
村上 : たまに桃とかも混ざってたけど(笑)。桃は野菜じゃない。で、次はストラップ作ろうってことになって、ライカが1cm幅だから、1.1cmにしたんですよ。パクっちゃダメだと思って。
大橋 : それ、ただの天邪鬼だと思いますよ(笑)。
村上 : 一本買うとTシャツがついて8000円、2本買うと14000円、3本買うと10000円、4本買うと14000円にTシャツがついてくる(笑)。
大橋 : ……ん!? どういうこと?(笑)。
村上 : その価格表をインスタにアップして、「これ、おかしくないですか?」って言われるのを待ってたの(笑)。そしたらありがたいことに「これって合ってます?」ってコメントが来て。それで「協議の結果、これで大丈夫です」って。5色あるんだけど、2本と3本は捨てて、みんなが4本買ってくれるように。
大橋 : でも4本もストラップいらないですけどね(笑)。
村上 : 誰かにあげられるじゃん?
大橋 : あぁ、一緒に買おう、ってことっすか。
村上 : 今はそういうのが楽しいですね。価値観を変えてくれる人に出会えるのが良いなって。自分は頑固だけど、そういう人に要所要所で出会えるのがありがたい。大橋くんもその一人だしね。
村上淳さん作品
大橋さん作品
――今日、初めてお互いを撮ってみたご感想は?
大橋 : それはもう簡単ですよ。ムラジュンはどこからどう撮っても絵になる。
村上 : もう、それだけ書いといてくれれば大丈夫です(笑)。
村上淳(むらかみ・じゅん)
1973年生まれ。93年『ぷるぷる 天使的休日』で映画デビュー。以降は様々な人気作へ出演し、現在も映画『PとJK』、『Amy said』、『blank13』、ドラマW『北斗〜ある殺人者の回心〜』、BSスカパードラマ『バウンサー』など、の公開を控えている。テレビ東京系土曜ドラマ24『銀と金』にレギュラーとして出演中。盟友、村上久典とともに手がける〈MADE IN GM JAPAN〉や、〈black eddie〉などのブランドにも携わり、ファッションシーンにも強い影響力を持つ。ブログも要チェック。
大橋トリオ(おおはし・とりお)
1978年生まれ。2007年よりミュージシャンとしてのキャリアをスタート。アーティストへの楽曲提供も行う他、テレビドラマや映画、CMの音楽制作も手がける。代表作に、映画『ジャージの二人』(08)、『余命1ヶ月の花嫁』(09)、『雷桜』(10)、『PとJK』(17)など。最近では、NHK Eテレの子供向け番組『にゃんぼー』の音楽も担当し、9月30日(土)テアトル新宿にて公開の映画『Amy said』ではテーマ曲を作曲し、本人役としても出演している。4月1日からは全国ツアー、12月8日には10周年記念スペシャルライブを東京国際フォーラム ホールAにて開催予定。オフィシャルWEBを要チェック。
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