CHEMISTRYの2人が語る、今の気持ちと新曲のこと
堂珍嘉邦(どうちん・よしくに)と川畑 要(かわばた・かなめ)によるボーカルデュオ・CHEMISTRY(ケミストリー)が、2018年6月20日、シングル『Heaven Only Knows/13ヶ月』をリリース。本作は、CHEMISTRY が2017年に約5年の時を経て再始動して以降第2弾目のシングルであり、彼らの本質が詰まったR&Bとバラードに仕上がった。ボーカルデュオの代名詞であるふたりの最新の想い、そして現在地とは? 新曲のこと、再始動後のこと、さらにはSNSや筋肉のこと(?)まで、ふたりのフランクな語りをどうぞ!!
Photography_Reiji Yamazaki
Text_Sotaro Yamada
Edit_Kenta Baba
「知らない人がいる、という状況は、逆に燃える」
――CHEMISTRYが再始動して1年ちょっと経ちました。今のところ、手応えはどうでしょう?
川畑 : 今回が再始動後2枚目のシングルですし、ツアーもひと段落しましたけど、僕らが再始動したことを知らない方もまだたくさんいるなあと感じています。
――お互い久々に一緒に歌ってみて、変わったと感じたところはありましたか?
堂珍 : うーん……、ない、ですね。変わらない良さというか、あうんの呼吸みたいなものを感じながら、すっと戻れました。
――ブランクのようなものは感じなかったと。
堂珍 : もしブランクのようなものがあったとしても、そういうのは、もう乗り越えたと思います。
川畑 : 景色は「これだな」と思いますよね。ソロだとお互いセンターにいますけど、僕らはセンターを割って歌っていたから、立ち位置からして「ああ、こうだったなあ」というのは、最初は感じた気がします。でも本番のステージではリハも重ねているせいか、そこであらたに何かを確かめるということはなかった。お互いソロでも歌ってきているし、音楽から離れていたわけではなかったから、本当に自然にCHEMISTRYに戻れました。
――リスナーの反応って、昔と今とで変わっていると感じますか?
川畑 : 世代がけっこう若くなっている感じはします。昔聴いてくれていた僕らの世代やちょっと上の世代の方がご結婚されて、そのお子さんがライブに来てくれたり、その世代がまた友達を連れて来てくれたりしている。そういった意味では変わってきてますね。
――このメディア(ミーティア)は20歳前後の読者が多いので、たぶんリアルタイムでCHEMISTRYを聴いていなかった人が多いんです。もしかしたら知らない人もいるかもしれない。
川畑 : それは逆に燃えますね。みんなが知っているという状況より知らない人がいるという状況の方が、まだそこにチャンスがあると思える。それはすごく嬉しいですね。一周まわってまたこういう時間が来るんだなあという気持ちです。
「“メジャーとしての違い”を見せたい」
――変な質問から入りますが、キャリアの長いCHEMISTRYだからこそ聞きたいことがあります。今回の取材のようなインタビューって、リリースがあるたびに毎回やるわけですよね。すると同じことを何度も喋らなきゃいけない。これって……、ぶっちゃけ、嫌じゃないですか?
川畑 : (笑)。
堂珍 : あの、いまさら、というか(笑)。そこに関してはもう、特には。
川畑 : 昔は自分たちの引き出しも少なかったから、同じことを繰り返しちゃってきついこともありました。でも今はそんなことはないですし、僕らの再始動を知らない人もいることを考えると、むしろもっとやっていくべきだなと思います。
――なるほど、ちょっと安心しました(笑)。では楽曲について聞いていきますが、再始動後第2弾は『Heaven Only Knows』と『13ヶ月』という両A面シングルになりました。前者はR&B、後者はしっとりしたバラードですね。
(CHEMISTRY『Heaven Only Knows』MV&特典DVDダイジェスト)
堂珍 : 再始動にあたってデモを何曲か録ったんですけど、『Heaven Only Knows』はそのうちのひとつだったんです。『13ヶ月』の制作には、『Heaven Only Knows』を第2弾シングルにすることが決まってから入っていきました。松尾潔さん(CHEMISTRYの生みの親である初代プロデューサー)にプロデュースしていただきたいというのは僕らの希望です。
川畑 : やっぱり、松尾さんをはじめとしたチームへの信頼が強いんです。松尾さんは僕らの“らしさ”を最大限引き出してくれる人だと思っていますし。今の音楽シーンを見ると、日本でもまだまだEDMなどのダンス系が流行っているけど、そういったものをCHEMISTRYがやるのはちょっと違うと思うんですよね。やっぱり歌モノでいきたい。僕らはデビュー当初からR&Bデュオとしてやって来たし、歌のチカラが伝わる楽曲というのが前提にある。『Windy』と『ユメノツヅキ』もそうだけど、ボーカルの掛け合いやフェイク、そういったものがCHEMISTRYらしさなのかなと思います。『Heaven Only Knows』には、ちょっと懐かしさもあると思うんですよ。今の時代とは少し違うサウンドですよね。
堂珍 : この懐かしい感じが若い人たちにどう映るのか、すごく興味があります。そしてこの曲を良くも悪くも見せられるのは自分たちだから責任も感じていますね。僕らって、16~7年くらいのキャリアですけど、ある面ではベテランのような扱いをされることもあるんです。そういうなかで、楽しい気持ちや余裕もあれば、同時に焦りもある。いろんな複雑な想いのなかで再始動して、松尾さんや相方(川畑)がいて、スタッフさんがいて、ひとつになれている。
――焦り、というのは?
堂珍 : 焦りというのは、(川畑)要がどう思っているかわからないけど、シングルを打ってアルバムを出せば、もう「再始動」とは言えなくなってしまうわけですよね。そこに対して確実に結果として拾っていけるのか、という焦りはもちろんあります。それはここで言うべきではないかもしれないけど、あえて言うことで潰していきたい。でも、こういう気持ちがあるから頑張れるんですよね。失敗してもいいとは誰も思っていない。そう考えると、再始動というのはデビューすることよりも大事なのかもしれない。
――今の話を聞いて、川畑さんはどう思われますか。
川畑 : 結果を出さなきゃいけないとはもちろん思っていますけど、果たして、売れたらそれは結果が出たと言えるのか? 結果って何なんだろう、ということを考えなきゃいけない時代だと思っています。だから焦りはあるんだけど、あまり焦りたくないという気持ちもある。とにかく今の自分たちが届けられるものを精一杯届けるしかない。今はどんな角度からでも音楽を発信することができるじゃないですか。アマチュアとプロの境目が曖昧になっている。そういうなかで、“メジャーとしての違い”はやっぱり見せたいですよね。
「CHEMISTRYの音楽は言葉を大切にしている」
――楽曲はどう育っていくのか、という点について伺いたいです。歌いながら徐々に自分たちの気持ちが育っていくのか、リスナーの反響があって育っていくのか。あるいはまったく違うのか。
堂珍 : ベースには自分のリアルな体験があります。それを松尾さんが書いた曲と照らし合わせて、自分なりに膨らませたりいろんな角度で解釈したりしていく。“音楽に言葉が乗っかる妙”ってあるじゃないですか。それを最大限感じて最大限伝えること、それが歌の仕事だと思うんです。それから、再始動後のライブでお客さんの顔を見ると、「お客さんにもいろいろあったんだな」と感じるので、またそれがひとつのモチベーションになります。
川畑 : たとえばアッパーな曲やダンスミュージックって、言葉としては入ってくる量が少ない気がしますよね。むしろノリやカッコ良く聴こえることの方が大切で、言葉はサウンドの一部になってしまう。対して、CHEMISTRYの音楽は言葉を大切にしています。言葉がストンと抜けて心に響いて欲しい。『Heaven Only Knows』と『13ヶ月』は、曲の感じはまったく違うけど、ストーリーとしては結構似ていると思うんですよね。自分の解釈では、『Heaven Only Knows』はドラマチックだと思っているので熱く歌っています。『13ヶ月』は、タイトルの通り13ヶ月という時間を置いて冷静になってふと思えた気持ちを歌っている。届け方によって、感じ方がまったく違う。
(CHEMISTRY『13ヶ月』×「リニューアル家族」ドラマMV)
――なるほど。おふたりの話を聞いていると、歌の仕事というのは、もしかしたら役者の仕事に近いのではないかという気がしてきました。
川畑 : 僕はすごく近いと思います。何も考えないでただ歌っているだけだったら、サーっと聞き流されるだけの音楽になってしまう。どこかで引っかかるポイントが欲しいんですよ。
――再始動したことで、CHEMISTRYの過去の曲の意味も変わってきたように感じます。たとえば、先日『関ジャム 完全燃SHOW』(5月13日放送)に出演されて『君をさがしてた〜The Wedding Song〜』を歌われましたよね。あの曲は結婚式の定番曲だけど、今聴くと、CHEMISTRYのことを歌っているようにも聴こえるんです。堂珍さんと川畑さんのストーリーを歌に重ねてしまう。
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— CHEMISTRY (@CHEMISTRY_2011) 2018年5月13日
堂珍 : それはすごくよくわかるファン心理でもあるし、自分たちもそういうことを思うこともあります。ただ、歌っている時の気持ちは何色もあるので、「こういう気持ち」と一言では言えないですけどね。
――今回の『Heaven Only Knows』と『13ヶ月』も恋愛の曲ではあるけど、おふたりのことを歌っていると解釈することも可能ですよね。
堂珍 : さっき役者という話が出ましたけど、これらの曲は松尾さんが完璧に当て書きしているんですよね。そこはお忘れなく、というか。現にそういう言葉も松尾さんからいただいていますし、松尾さんがプロデュースするということはそういうことですからね。
川畑 : 楽曲が育つという点で言うと、『Windy』『ユメノツヅキ』『Heaven Only Knows』『13ヶ月』という4曲は、これから歌っていくにつれてもっともっと歌詞の意味を感じてもらえるようになるんじゃないかと思うんです。それは自分たちにとってもそう。一見ラブソングだけど、この奥には、松尾さんが僕らを想う気持ちが見える。それを僕らもちゃんと感じ取れるようになって来た。デビュー当時に比べて松尾さんの想いをちゃんと受け止めることができるようになって来たのかなと感じています。
誰にも真似できないオンリーワンの歌声
――あの、素朴な質問で恐縮なんですけど、おふたりの圧倒的な歌唱力の高さの秘密は何だと思いますか?
堂珍 : うーん、歌が上手いとは思っていないんですよね。
――えっ、そうなんですか!?
堂珍 : でも、プライドはある。
川畑 : まあ、歌っている以上はね(笑)。
堂珍 : うん(笑)。根拠のない絶対的な自信はありますし、それがないとできない。ひとつには、モノマネされても絶対に届かない、誰にもないオンリーワンの声というのはあると思います。
川畑 : たしかに、うちらモノマネされてないよね?
堂珍 : うん。
――みんな知っていてみんな歌うのに、誰もモノマネできないですよね。
川畑 : 最近、ジョン・レジェンドやブルーノ・マーズのライブを観たんですけど、どうすればあんなに上手くなれるんだと悔しい気持ちになりました。それに比べてテレビで歌っている自分を観ると「自分はこんなもんか……」と思いますね。
堂珍 : 本当にそう。僕も「こんなもんか、まだまだだ」と思います。
「ハーモニーの安売りはしていない」
――おふたりともCHEMISTRY以外で他の方と一緒に歌うこともあるかと思います。それらと比べて、CHEMISTRYで相方と歌うことは、やっぱり違いますか。
堂珍 : 考え方としては、(川畑)要がベースになっています。他の人と歌った時、要というベースに対してどういう色が出ているかという判断になる。似ている資質だなとか、似てないけど面白いなとか。
川畑 : それは僕も一緒ですね。(堂珍)嘉邦とは、もはやハモりという概念ですらなくて、ふたりでひとつの音という感覚なんです。それに比べて他の人と歌う時は、完全にハモり役に徹している。この声をどう活かすかということを考えている。CHEMISTRYでは、もちろん嘉邦を邪魔しないように気をつける箇所もあるけど、ほとんど余計なことは考えない。どうすればきれいなひとつの音になるかを無意識に考えている。ふたりの歌が身体に染み付いていると思います。
――ハモりを越えた概念なんですね。
川畑 : 今さら「ハモり」と言われても……という気持ちは正直あって、それよりもお互いの声が大切だと思っています。まあ、それが交わるともちろんハモりになるんですけど。
堂珍 : 日本人は「ハモり」が好きだよね。やたら強調したがる。でもハモったからといってすごいわけではない。僕らは必要最小限でもっとも効果的なタイミングでしかハモらないから、そういう意味では、ハーモニーの安売りはしていないですね。
「SNSのコメントはちゃんと読んでいる」
――再始動してからのCHEMISTRYは、メディアに出るたび枕詞のように「全然老けてない!」とか「年を重ねた方がカッコ良くなってる!」とか言われますよね。このことについてどう思いますか?
堂珍 : 嬉しいですよ。
――どうしたらそんなにカッコ良く年齢を重ねられるんでしょう?
川畑 : そう思ってない人もいっぱいいると思いますけど(笑)、しいて言えば、こういう世界にいて人に見られているからじゃないですか。やめるとみんな老けるとはよく聞きますよね。やっぱり人がパワーをくれるのかなと思います。緊張感がなくなれば老けていくんじゃないかなあ。
堂珍 : 気持ちが老けたらダメだよね。やっぱりライブに出たら緊張するし、カメラの前に立てば緊張するし、人と喋ることも緊張する。そういう機会がなくなれば、みんなと同じように老けていくとは思います。
川畑 : 僕はトレーニングが好きで身体を鍛えていますけど、これもやっぱり人に見られなくなったら少しはなまけると思いますね。「こんなにストイックにやる必要ないよ」って思っちゃうと思います。
――川畑さんすっごい筋トレしてますよね。
川畑 : バカみたいにやってます(笑)。
――インスタに筋トレの写真めっちゃ投稿してますもんね。
川畑 : そうなんです(笑)。SNSは苦手なんですよね。そんなにつぶやくことなんてないよと思ってしまう。それを頑張って更新してるんですよ(笑)。
堂珍 : 俺も一緒。電話もいらねーもん。
川畑 : いや電話は必要(笑)。……でも本当に更新するのを待ってくれてる人もいるから。結構、コメントはちゃんと読んでるんですよ。良いコメントも悪いコメントも。
堂珍 : マメだね(笑)。
川畑 : すごいマメに見てる。色んなコメントする人がいるから、「もう俺は好きなものしかアップしない!」と思って。筋肉は裏切らないから。やったらやっただけ付いてくる。
――「筋肉は裏切らない」。これ見出しですね。
川畑 : いや、それはやめてください、「またアイツ筋肉の話してる」って言われちゃうので(笑)。
――でもそうやってコメントを読んでくれているというのは、ファンからしたら嬉しいです。今度コメントします!
川畑 : ぜひぜひ(笑)。
堂珍 : ……なんか変な終わり方になっちゃったな。ま、いいか(笑)。
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