「行きつけのお店」があるってなんだかとてもうらやましい。
グルメサイトの点数とか口コミ評価とか最近流行ってるとか、確かに大事なのはわかるんだけど、「行きつけ」があるってなんだかとてもうらやましい。美味しいとかコスパとか、それ以上に大切な「空気」とか「居心地」「安心感」にボクらは心惹かれたりする。たくさんのお店が軒を連ねる街に、すっと心も体も迎え入れてくれる、あったかいポケットのようなお店。シティカルチャーメディア、ミーティア的「行きつけ」にしたいお店をレポートします。今回は、南青山にたたずむ赤提灯居酒屋、「讃岐うどん愛」をご紹介。
讃岐うどん愛
最寄りは表参道、外苑前。ファッションビルが立ち並ぶ南青山という立地に静かにたたずむ「讃岐うどん愛」は、毎晩多くのお客さんで賑わっている。
大きく“愛”と書かれた赤提灯を横目にお店の扉を開けると、「いらっしゃい!」という店主の声とともにカウンターに並べられたおばんざいに視線が奪われる。
夜はおばんざいメニューを中心に取り揃え。男女問わずあらゆる年齢層のお客さんが訪れるので、和洋折衷でメニューを考えているのだそう。季節やその日の気候に合わせてのおばんざいも。
カウンターの脇にはおでん鍋に並んで出番を待つあったかおでんたち。出汁がしっかりと染み込んだ熱々のおでんは、はふはふしながら食べたい。おすすめの具材は手羽先。ふんわりと柔らかく、そして優しく煮込まれた手羽先は熱燗と一緒にどうぞ。
赤提灯におばんざい、おでんと熱燗。店名は「愛」だからどんな女将さんが切り盛りしているのだろうと思ったら、カウンターにはキリリと爽やかな顔立ちの今井洋さんが立つ。
「愛というお店の名前は、もともとここで切り盛りしていた方の名前です。ちょうど二年半前くらいに僕が愛さんから引き継いで、昼はうどん屋、夜は飲み屋としてお店をスタートさせました」
ー引き継いだ!? どんな経緯で、、
「実はずっとアパレル業界にいて、服を作っていました。仕事終わりにはここの近くの飲み屋でよく飲んでいたんですけど、少しノリが若いお店だったので、ゆっくり飲めないなと行くたびに思ってきて。すると近くにこのお店の赤提灯が見えて、暖簾をくぐったのが始まりです。その時に愛さんと知り合いました」
ー最初はお客さんとして通っていたという今井さん。お客さんという関係性から始まってお店を引き継ぐまでのストーリーがますまず気になります。
「昔からあるお店だったので、“一見さんお断り”なのかと思うくらい冷たくされました(笑)。はじめて入った次の日の夜も行ったんですけど、『どちら様ですか?』って言われて(笑)。でも、お店の落ち着いた感じと雰囲気がすごく気に入っていたので、めげることなく週二くらいで通いましたね。すると愛さんもだんだんと心を開いてきてくれて、カウンター越しで世間話をするまでになりました。で、通っているうちに愛さんから『うちのお店は週末が休みなんだけど、土曜日に立ってみない?』と声をかけてもらって」
ーお客さんとして通っていただけだったのに、すんなりやれるものなのでしょうか…?
「もともと料理をすることが小さい頃から好きで、いちばん好きな授業は家庭科でした。家でもよく作っていしたし、料理を作って人に食べてもらうことには興味があったんです。お酒も大好きで友人ともよく飲んでいましたし、一人でも飲みに行くのも好きですし。お店に行くたびに僕がいろんな友人を連れて行くから愛さんも土曜限定プランを提案してくれたんだと思います」
これが今井さんの“讃岐うどん愛”としてのスタートだ。
「いちばん最初の営業日は、地元の頃からの友人たちと愛さんが来てくれました。気心が知れている相手とは言え、はじめてお店に立った日は緊張しましたね(笑)。それからは僕が友人を愛に連れてきたように、僕の友人たちがそのまた友人たちを連れてきてくれたりして、土曜日営業の日が広まっていきました。仕事が休みの日に立っているとは言え、いろんな友人やふらっと立ち寄ったお客さんが、満足そうな顔をして飲んでいるところを見るのが営業するたびに嬉しかったですね」
土曜日営業を始めて、二年半ほど立った頃、愛さんからこんな話があったそう。
「わたしももう歳だし、だんだんお店に立つのが疲れてきた。洋くんこのお店継がない?と。さすがに最初は悩みましたね。仕事もしていたし、一人でやるなんて大丈夫なのかと。ただ、アパレルブランドをやっている友人や建築事務所を始めた友人など、独立して仕事している人が周りに多かったから、いろんな相談をしていくうちに覚悟が決まりましたね」
まさに一大決心!
「どうなることかと思いましたが、早いもので独立してから二年半が経ちました。横にエイベックスのビルも出来たので、常連のお客さんだけでなく、新しいお客さんも増えてきました。南青山という土地柄、外国人の方もいらっしゃいます。グループでいらっしゃるお客さんも多いですが、カウンターがあるので、男女問わず、一人でふらっと飲みに来る方もたくさんいらっしゃいます」
ー一人飲みが多いのはカウンター席の存在と、なにより店主の人柄だと思いますよ!
「僕の人柄かどうかはわかりませんが(笑)、接客をさせていただく上で、常連さんも新しいお客さんも平等に接するのをモットーにしています。きっとそういった空気感だからこそ、カウンター席ではじめて会う常連同士が会話を楽しんだり、初めて来たお客さんと常連さんと僕で話が盛り上がったりして、居心地が良くなるのかなと。いいお店なのに常連と店主だけの空気感になってしまっていて入りづらいところもありますし、そういった場所にはしたくないなと」
なんと、2店舗目の話があるのだとか!
「ずっと物件は探していたのですが、ようやく渋谷の百軒店あたりに二階建ての場所が見つかって。三月からプレオープンとしてスタート、四月から本格的にオープンする予定で動いています。二階建てなので、一階はこの “讃岐うどん愛”のような居酒屋、二階部分はスナックのようなお店にしようかなとと思っています。ぜひ一杯飲みに来て、行きつけのお店にしてください!」
【讃岐うどん愛】
住所 港区南青山3-8-3
アクセス 表参道駅から徒歩6分 外苑前駅から徒歩5分
電話番号 03-3401-4601
営業時間 昼11:30-15:00 夜 18:00-24:00
定休日 日曜
(詳しい営業日はInstagram にて)
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