2016年10月からテレビ朝日系列で放送が始まったフィギュアスケート男子シングルを舞台にしたアニメ『ユーリ!!! on ICE』。
(冒頭に映し出されるエレクトロな建物はソチオリンピックの会場となったアイスバーグ・スケート・パレス。)
「ユーリ!!! on ICE」あらすじ
グランプリファイナルで惨敗し、故郷九州へ戻ってきた主人公・勝生勇利(23歳)。
スケーターとしては岐路に立たされる年齢の勇利が、引退すべきか、現役を続行すべきか悩んでいるところに世界選手権5連覇、勇利の憧れの人でもあるロシア人フィギュアスケーター、ヴィクトル・ニキフォロフ(27歳)が勇利のコーチに名乗り出る。
勇利はヴィクトルのもとで自身最後のシーズンを完走することを誓い、新しい境地を開拓していく――。
大根仁が監督を務めドラマ化・映画化されたマンガ『モテキ』の原作者でフィギュアスケートファンとして知られるマンガ家の久保ミツロウが原案・キャラクターデザインを担当し、アイスダンス全日本選手権金メダリストであり現在は多くのスケーターの振り付けを行う宮本賢二を劇中の振付師として迎えた『ユーリ!!!』は、放送前からアニメファンに留まらずフィギュアファン、そしてフィギュア選手の間でも話題となっていた。
『ユーリ!!! on ICE』配信での放送日時もこちら参考にして下さい!地上波、BSに関しても改めてどぞ! #yurionice #ユーリオンアイス pic.twitter.com/V6F4GdcT4T
— 久保ミミツロウ (@kubo_3260) 2016年10月4日
ごたくは置いといて、とにかく『ユーリ!!!』のオープニングテーマ『History Maker』を聴いてもらいたい。
リアルなスケーティング描写を引き立てる「ユーリ!!!」の楽曲たち
(歌っているのは誰かわかりますか?(ヒント:イケメン))
夜明けと共に世界が広がるような伸びやかな歌声の主こそNHK連続テレビ小説『あさが来た』の「五代様」として人気を博した逆輸入俳優ディーン・フジオカ。
今年3月、初のCDアルバム『Cycle 』を発売しロックミュージシャンとしても注目されるディーンがオープニングテーマの作詞を担当し、作曲にも参加している。
オープニングテーマの作曲に参加し、フィギュアスケートの大切な要素である使用曲の作曲も手掛けているのは作曲家の梅林太郎。milk名義でアルバムを発表するほか、ポカリスエット『エール編』(個人的に超好き!)など多数のCMソングを手掛けてきた実力派だ。
(思わず踊りだしたくなるキャッチ―さ!)
特に胸を打つ使用曲は、主人公の勝生勇利がスケーター人生の総集編として踊るフリースケーティングの曲『Yuri on ICE』。
反復されるピアノの主旋律にドラムやヴァイオリンの音が重なっていく出会いや別れを感じさせる曲なのだが、全体的にシンプルなトーンで展開していき、勇利が滑るスケーティングの音が併走することによってひとつの音楽として完成していく。
そう、フィギュアスケートにおいて、スケート靴のエッジ(刃先)が氷を削る音も楽器のひとつなのだ。
(曲は『Yuri on ICE』。エッジが氷を削る音が印象的。)
勇利のライバルで「もうひとりのユーリ」こと昨年の世界ジュニア選手権金メダリスト、ロシアのユーリ・プリセツキー(15歳)のショートプログラム使用曲『愛のために∼agape∼』もオリジナル楽曲であり、アレンジが全く異なる『愛のために∼eros∼』を勇利がショートプログラム曲として使用するという今後の展開の伏線を使用曲を通して暗示しているのも心憎い。
ユーリの使用曲はアガペー(無償の愛、神の愛)という名にふさわしいボーイソプラノを起用した聖歌を思わせる楽曲になっており、こちらもエッジが氷を削る音と共に聴くとさらに祈りを捧げたくなる曲調となっている。
実はフィギュアスケートの試合でボーカル入りの曲の使用が許可されたのは2014年のシーズンから。
それまでボーカル曲の使用を許されていたのはアイスダンスのみで、シングル・ペアの試合ではボーカル入りの曲を使うと1点減点というルールがあった。
試合でボーカル入りの曲を使用できるようになってから今年でまだ3年目なのだ。
ボーカル曲が解禁になった年は、もともと人気があり聞き手にもキャラクターが理解しやすい『オペラ座の怪人』をボーカル入りで使う選手が多発した。
(一度聴いたら忘れられない『オペラ座の怪人』メインテーマのイントロ。)
日本人選手でも羽生結弦選手や村上佳菜子選手が『オペラ座の怪人』の曲を使い、他10組以上が『オペラ座の怪人』の楽曲を使用曲に選んだためちょっとした波紋を呼んだ。
特に村上佳菜子選手はショートプログラム・フリースケーティング共にボーカル入りの『オペラ座の怪人』を使用し、それぞれクリスティーヌ役と怪人役を演じたことで話題となった。
自分に厳しく、人に優しく。 pic.twitter.com/NrowSmeVCq
— Kanako.Murakami (@Canyanpy1107) 2016年6月17日
今はボーカル曲のなかでもミュージカルやオペラの曲に人気が集まっているが、ユーリのセクシュアリティを感じさせない踊りとホーリーな楽曲があまりにもマッチしていたので、今後はボーカル入り教会曲を試合の使用曲として使う若い選手が頻発するのではないかと思った。
ボーカル入りの曲も解禁されたとはいえ、未だにフィギュアスケートの使用曲はクラッシック音楽が多く、新たに曲を作らなくてもクラッシック音楽のアレンジを使用すればスケートの試合の体裁を整えることはできただろうに、他の登場人物の使用曲もキャラクターに合わせてイチから作っているところに制作陣のこだわりとキャラクターへの並々ならぬ愛情が垣間見える。
『ユーリ!!! on ICE』はテレビ朝日で毎週水曜日深夜2時21分から放映中。現在折り返し地点の第7話まで放映済みで、テレ朝動画、dTVなどでストリーミング配信中だ。
(フィギュアファンもびっくりさせるリアルなスケーティング。)
ディーン・フジオカが歌うオープニングテーマ「History Maker」はiTunesなどで配信中。
『ユーリ!!! on ICE』のフィギュアスケートソングコレクションCDアルバム『Oh! スケトラ!!! ユーリ!!! on ICE』は2016年12月21日発売予定だ。
オープニングテーマ、エンディングテーマ共に英語の歌詞を採用していることからも『ユーリ!!!』は日本のアニメファン、フィギュアファンにとどまらず世界を見据えて制作しているのだと思う。
現に日本のアニメに詳しく、セーラームーンの楽曲でアイスショーのプログラムを滑ったこともある昨年のグランプリファイナル金メダリスト、ロシアのメドベージェワ選手始め、海外の有力選手も『ユーリ!!!』に注目している。
Perfect😍 Just waiting next series .. #yurionice pic.twitter.com/XOKx7wrK2H
— Evgenia Medvedeva (@JannyMedvedeva) 2016年10月12日
魅力的なキャラクター、些細なミスまでリアルなスケーティング描写、そして妥協なしのクオリティの高い音楽。
『ユーリ!!!』は伝説的アニメとして歴史に名を連ねるに違いない。
ぜひ「伝説」をリアルタイムで目撃してほしい。
Yes, we were born to make history!!!
Text_MADOKA MIHOSHI
(https://twitter.com/mihoshi_m)
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