つんく♂によって基礎づけられ、ハロー!プロジェクトが長くファンに愛される要因となったものは何だったのだろうか。
今回は、ハロー!プロジェクトの核となっているモーニング娘。に関して、その楽曲とともに考察したい。
#1 モーニング娘。とつんく♂、原宿~ハロー!プロジェクト、その非凡なストーリーについて
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“モーニング娘。”と聞いて、真っ先に浮かぶ楽曲のひとつに『LOVEマシーン』がある。
発売以降、女性アイドルグループとしては史上最高の164万枚以上の売り上げ枚数を記録し、90年代最後の大ヒット曲となった。
今でもカラオケで耳にすることが多いほど、覚えやすくキャッチーな歌詞とリズミカルなディスコサウンドのこの楽曲は、当然のように大衆音楽の代表曲となり、私たちの間でもっとも多く聞かれることとなった。
歌詞に散りばめられた軽快な言葉遊びも、リスナーを楽しませる要素のひとつである。
『LOVEマシーン』は、後につんく♂イズムと評される彼独特の才能の先駆けともいえる楽曲である。
『ラブマシーンは』それまでのいわゆる王道のアイドル曲と一線を画してはいるが、この曲は確かに、1999年9月9日以降の新たなアイドル曲として消費されるようになった。
そしてこれ以降、モーニング娘。はトップアイドルとして、音楽的な面でもさらなる飛躍をしていくこととなる。
『LOVEマシーン』から9年後、社会現象まで巻き起こしたモーニング娘。は新たなる境地を開くこととなった。
『LOVEマシーン』に代表される全盛期を「黄金期」とするならば、2008年~2010年までの期間には「プラチナ期」という名称が与えられる。
プラチナ期のメンバーたちは、黄金期の片鱗は目撃しているものの、『LOVEマシーン』『ハッピーサマーウェディング』『恋愛レボリューション21』といった所謂代表曲リリース後に加入した少女たちばかりである。
また、AKB48の猛進の影に隠れたモーニング娘。は、極端にメディア露出を減らしており、ファン以外の目にその姿を見せる機会を少なくしていた。メンバーひとりひとりの動向を全国民で共有するような時代は既に去っていたのである。
しかし、プラチナ期の実力は後々に大きく評価されることとなる。
その代表曲が、『リゾナントブルー』である。
重厚感のあるサウンドに、時折入る道重さゆみの明るい合いの手につんく♂独特のセンスを感じる。
プラチナ期にはしばしば、「まるでアイドルとは思えない」という表現が与えられるが、この『リゾナントブルー』を聴いただけでも容易く納得することができるだろう。
この楽曲を通して私たちは、モーニング娘。の本質が、そもそも単なるアイドルグループではなく、女性ボーカルグループであったことを再認識することとなる。
プラチナ期でこれ以上ないほどにクオリティを高めたモーニング娘。に、ファンは寧ろ不安を抱くこととなった。
「このメンバーを以て、モーニング娘。は解散するのではないか?」
グループの変化をこれ以上誰も想像することはできなかったし、実際、かなりの頻度で行われていた新メンバーオーディションはこの時期4年間ほど開催されていない。
しかし、それは杞憂に終わることとなった。
少女たちの時間が止まることはなかったのである。
4年の年月を経て、彼女たちは再び大きく変化することとなった。
黄金期メンバーをして「私たちにはできない」と言わしめたフォーメーションダンスがここにある。
『リゾナントブルー』から5年後に発表された『わがまま 気のまま 愛のジョーク』は、モーニング娘。再興のきっかけとなった楽曲のひとつである。この頃、モーニング娘。についてまわったキャッチフレーズがある。
「私たちが、今のモーニング娘。です。」
そう、彼女たちこそがモーニング娘。なのだ。
彼女たちの中にはモーニング娘。の結成後に生まれた少女も多く、それどころか『LOVEマシーン』発売後に生まれた少女もいた。モーニング娘。は伝統と若さを同時に手に入れることに成功したのだ。
かつての代表曲、『LOVEマシーン』のようなキャッチーなアイドルソングから、EDMを基調とし、簡単には真似できない複雑なダンスを魅せることで、モーニング娘。は世に溢れる他のアイドルグループとの差別化を成功させた。
そしてまた、2013年のモーニング娘。の平均年齢が16歳であったことも、私たちに未来を強く期待させた。
私たちはモーニング娘。に再び夢を見ることとなったのだ。
ハロー!プロジェクトの総合プロデューサーからは退いたつんく♂だったが、トリプルA面シングルとして『泡沫サタデーナイト!』と同じCDに収録されたのが、つんく♂作詞作曲の『The Vision』である。
この楽曲は、モーニング娘。の過去と未来を意識させる。
そして、少女たち自身についても歌っているようでもある。
少女たちが歩んできた道は決して平坦ではなかったが、絶えず未来に向かっていく姿は美しい。そしてモーニング娘。はこれからも変化を続けながらその美しさを増していくことだろう。
「社会現象」とまで評されたグループは、いつからか、「まだ活動しているの?」という驚きと嘲笑を含んだ疑問符で何度も表現されるようになってしまった。
しかし、モーニング娘。がその足を止めることは決してなかった。
少女たちは自分たちに憧れた次世代の少女たちへの責任があったし、その少女たちもまた同様であった。
だが、バトンを渡し続けるだけが少女たちの仕事ではない。
少女たちはつんく♂を失ってもなお、つんく♂イズムの楽曲の中で、さらに進化を続けている。
文章:福田ミチロウ(https://twitter.com/michiroo072)
イラスト:いねいみやこ(https://twitter.com/miyako0630)
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