待ちに待った年末年始! テレビ番組も面白いけれど、家でゆったり映画を楽しむのも幸せですよね。そこで、とっておきのおすすめ作品を探るべく、映画好きの4人が集まって映画について語り合う座談会を開催。今回のテーマは「音楽」。盛り上がりすぎて音楽と関係ない作品の話もしてしまいましたが、そこはご愛嬌。NetflixやHulu、Amazonプライムなどのサブスクリプションサービスで観られる作品について記事の最後にまとめてあるので、観たい作品を探す際の参考にしてみてくださいね。
■ 今回の参加メンバー
サヌキナオヤ(イラストレーター)
mai(会社員)
小田部仁(ライター)
ミーティア編集部MO
Illustration_Naoya Sanuki
Text&Edit_Momoka Oba
――今回、座談会のテーマを何にしようかなって考えた時に『アンダー・ザ・シルバーレイク』のことで頭がいっぱいで。あの映画って「音楽」が一つのキーになっているじゃないですか。だから「音楽」をテーマにしようと決めたんです。みなさんも観ましたか?
mai : 観ました!
サヌキ : 最高でしたね。
小田部 : 観てない……(笑)。
セレブやアーティストたちが暮らすロサンゼルスの街、シルバーレイク。ゲームや都市伝説を愛するオタク青年サムは、隣に住む美女サラに恋をするが、彼女は突然失踪してしまう。サラの行方を捜すうちに、いつしかサムは街の裏側に潜む陰謀に巻き込まれていくことに。
サヌキ : ネタバレになってしまうから詳しくは説明できないけど、作曲家が暴走するシーンがめちゃくちゃ面白いですよね。
mai : いやぁ、あのシーンは本当にスカッとしました!
サヌキ : アンドリュー・ガーフィールドって実はそんなに好きじゃなかったんですけど、ちょっとだけ好きになったかも。
――わたしも! アンドリュー・ガーフィールドだけはスパイダーマンとして認めてなかったくらい……(笑)。でも、『アンダー・ザ・シルバーレイク』で好きになりました。2018年、音楽が記憶に残っている映画は他に何かありましたか?
小田部 : ド定番だけど、やっぱり『君の名前で僕を呼んで』じゃないですか。イタリアの風景とスフィアン・スティーヴンスの曲があいまって、もうたまんないですよね。あとは……今年は「音楽映画」が話題を呼びましたよね。『ボヘミアン・ラプソディ』とか『アリー/ スター誕生』とか。
1983年、夏。家族に連れられて北イタリアの避暑地にやって来た17歳のエリオは、大学教授の父が招いた24歳の大学院生オリヴァーと出会う。一緒に過ごすうちに、エリオはオリヴァーに特別な思いを抱くようになるが……。
mai : たしかにそうですね。去年だと『ベイビー・ドライバー』とか。
――『ラ・ラ・ランド』もありましたしね。
小田部 : 個人的には、数年前の作品だけどグザヴィエ・ドランの『Mommy/マミー』で使われてたOasisの「Wonderwall」がすごく記憶に残っています。僕、ドランと生まれた年が一緒なんですけど。1989年って、ギリギリOasis世代っちゃ世代だから、あの曲に対するドランの個人的な思い入れみたいなものも勝手に感じて……エモくなっちゃいましたね(笑)。
mai : わたしはNetflixにある『リトル・ダンサー』という映画を最近観たんですが、その映画で使われている音楽もすごく良かったです! バレエの映画なんですけど、バレエ音楽じゃなくてロックが流れていて。ストーリーも素晴らしいし、ボロ泣きでした……。
1984年、ストライキに揺れるイギリスの炭鉱町。11歳の少年ビリーは、息子に強い人間になってほしいという父親の願いから、ボクシング教室に通っているが、なかなか上達しない。そんなある日、偶然目にしたクラシックバレエに興味を持ったビリーは、父親に内緒でバレエを習い始めることに。
小田部 : 『リトル・ダンサー』はミュージカル版もあって、エルトン・ジョンが音楽を手がけているんです。ラストで主人公のビリーが言う感動的なセリフから着想を得た「Electricity」って曲が、めちゃくちゃイイです。
――ミュージカルやミュージシャンのドキュメンタリーなど、ずっと音楽が流れている映画ってあるじゃないですか。そういう作品で好きなものって何かありますか?
サヌキ : 『ベイビー・ドライバー』は、好きな映画なんですけど、音楽と映像が合いすぎてるせいか、見ている間なぜか緊張してきてしまって……(笑)。でも、コインランドリーで二人がT.Rexの「Debra」を聴いてるシーンからBECKの「Debora」へ繋がる所は感動しました。
ベイビーの仕事は、天才的なドラインビングテクニックで犯罪者の逃走を手助けする「逃がし屋」。ある日、運命の女性デボラと出会ったベイビーは、逃がし屋から足を洗うことを決めるが、ベイビーの才能を惜しむ犯罪組織のボスに脅され、無謀な強盗に手を貸すことになる。
mai : あのシーン、映像もカラフルで可愛いですよね!
小田部 : ところで、みなさんはサントラって買いますか?
mai : 買ったり、サブスクリプションでダウンロードしてよく聴いてます。
小田部 : 最近、良いサントラはありましたか?
サヌキ : 僕は『レディ・バード』かなあ。ジョン・ブライオンの曲が良かったです。
mai : 最近の作品ではないけど、わたしは『ヘドウィグ・アンド・アングリーインチ』って映画のサントラをよく聴いてます。
ヘドウィグは売れないロック・バンドのシンガー。旧東ドイツ生まれの彼は、かつてアメリカ兵と結婚するためにした性転換手術の失敗から“アングリーインチ(怒りの1インチ)”を持っていた。そんな彼が探し求める愛は、はたして手に入るのか?!
小田部 : あー、それもミュージカルになってますよね! 僕は『メッセージ』のサントラがお気に入りです。映画の音楽としても良いんだけど、ヨハン・ヨハンソンの作品としてちゃんと成立していて。
――“サントラが良い”で言うと、今年は『ブラックパンサー』もあったと思うのですが、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の音楽ってみなさんどう思いますか? 『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』シリーズとかも、音楽が素晴らしいじゃないですか。
小田部 : あー、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』はズルい! 60〜70年代の名曲がストーリーの肝になってるSFって……そんなオシャレなのアリかよって思ったなぁ。
――『アべンジャーズ/インフィニティ・ウォー』の時も、音楽が流れた途端「お! アイツらがやって来るぞ!」ってめちゃくちゃテンション上がりましたもん。
サヌキ : わかります。あのシーンは僕も大好き。まだ観られてないけど、『ヴェノム』も音楽がエミネムですもんね。実は今年、エミネムが流れた映画がもう一つあって。リチャード・リンクレイターの『30年後の同窓会』っていう作品なんですけど、おじさん達がトラックに乗っているシーンでカーラジオから「Without Me」が流れるんです。それがストーリーとめちゃくちゃ合っているんですよ。
――えー! 気になる! リンクレイターつながりで、『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』の、車の中で「ラッパーズディライト」を歌うシーンも大好き。野球部全員でラップする、エンドロールの映像も楽しいんですよね。
舞台は1980年代のアメリカ。大学野球部の仲間たちが、新学期が始まるまでの3日間に織り成す人間模様を、懐かしの80’sサウンドに乗せて描き出す。
mai : リンクレイターの映画は、ストーリーだけじゃなくて音楽も良いですよね。
小田部 : 良いけど……心をえぐられすぎるから、なかなか何度も観られない(笑)。
――『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』はすごく楽しい映画だから大丈夫ですよ。
サヌキ : でも僕は、最後のシーンでいつも切なくなっちゃう。
小田部 : そういう青春のノスタルジーで言うと、『ブレックファスト・クラブ』の「Don’t You?」とかはもう王道じゃないですか。この作品の監督であるジョン・ヒューズが近年再評価されてることもあって、いろんな作品でパロディ的に聴く機会も増えた気がする。
タイプの違う5人の高校生が、それぞれ起こした問題の罰として休日に登校。「自分とは何か」というテーマで作文を書いていく中で友情が芽生える青春映画。
――たしかに、2010年代は青春映画で「Don’t You」が使われがちでしたね。『ピッチ・パーフェクト』とか、エマ・ストーン主演の『小悪魔はなぜモテる?!』とか。
小田部 : そうですよね。もはや一つの記号になってるのかも。この作品はアメリカ青春映画の文脈にのってますよ、ただのティーン向けの娯楽作品じゃないですよ……ってことを表すための。
――前にTwitterでmaiさんが『セレステ∞ジェシー』が好きって言っているのを見かけて。わたしも、あの映画の冒頭で流れるリリー・アレンの「Littlest Things」は本当にたまらないなと思います。あれこそ、切なすぎて心がえぐられる系。
セレステとジェシーは一見理想的な夫婦だが、会社を経営し充実した日々を送る妻セレステに対し、なかなか芽が出ないアーティストの夫ジェシーはあくまでも自分のペースで生活していた。そんなある日、永遠に親友でいられるようにとセレステの提案で離婚を決意。しかしある出来事をきっかけに、セレステはジェシーの存在の大きさに気付いて……。
mai : もう、めちゃくちゃ辛いですよね。
――あれって、曲は切ないけど、流れている映像は二人が仲良くしてるシーンじゃないですか。その矛盾が切なさをさらに加速させるというか。あー、思い出して辛くなってきた(笑)。映画の最初の1曲で言うと、『ゲット・アウト』で流れるチャイルディッシュ・ガンビーノの「Redbone」も大好き。
小田部 : 僕は、オープニングの曲だと『パルプ・フィクション』の「Misirlou」が最高だと思う。
mai : あれ、超テンション上がりますよね!
カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したクエンティン・タランティーノ監督のクライム・ストーリー。二人組のギャングや強盗を計画するカップル、八百長ボクサーなどさまざまな登場人物が行う犯罪がやがて交錯していく。
――あの、Black Eyed Peasの「Pump It」のやつか! 小学生の頃に家族と観た『TAXI』って映画でBEPバージョンが使われてたのをよく覚えてます。
小田部 : 独特の高揚感があって、オープニングの曲として素晴らしいんですよね。
mai : わたしも『パルプ・フィクション』の音楽は大好きで、何回も観ちゃいます。つい昨日は『ハイ・フィデリティ』って映画を観たんですけど、それもすごく良かったですよ。
サヌキ : あー、『ハイ・フィデリティ』大好き!
音楽をこよなく愛するロブ・ゴードンは、シカゴで小さな中古レコード・ショップのオーナーをする30代の独身男。音楽へのこだわりがあまりに強すぎるためか、店の経営はパッとしない。同棲中の彼女ローラとは結婚もせずに中途半端な状態。ついにある日、ローラは理由も告げずに家を飛び出してしまい……。
小田部 : レコード屋が出てくるんですよね。そこで流れてる曲も良いし。
mai : 冴えない男性が主人公の映画って、いつもすごく共感しちゃうんです。
小田部 : 僕は途中からイライラしてあの男のことが嫌いになっちゃった(笑)。maiさんは優しいですね。
サヌキ : 『ハイ・フィデリティ』は、今度ドラマで女性版にリメイクされるみたいですね。
――えー、ドラマも楽しみ! またドラマの話になっちゃうけれど、ダニエル・グローヴァー(チャイルディッシュ・ガンビーノ)が製作している『アトランタ』って観ましたか?
サヌキ : 観ました! ラッパーのマネージャーが主人公で、まさに音楽のドラマですよね。
舞台は音楽の街、ジョージア州アトランタ。この地で生まれ育ったアーンは、名門プリンストン大学を休学してからというものの、両親から見放され、その日暮らしの生活を送っていた。そんな生活を送っていたある日、アーンが目にしたのは従兄弟のアルフレッドがラッパー“ペーパーボーイ”として世間の注目を集め始めている姿だった。アルフレッドの姿に希望を見出したアーンは、マネージャーとしてアルフレッドの片腕、そして成功への足がかりとなり、相棒のダリウスと共に3人で活動を始めることを決意する。
小田部 : ぺーパーボーイペーパーボーイ♪ってね(笑)。ミーゴスが登場するシーンは超笑いました。めちゃくちゃだし意味わかんないけど、なぜか面白いんですよね。
サヌキ : 『シンプソンズ』とかのアニメに通ずるような、箱庭感と意味不明さがありますよね。
小田部 : あのシュール感、ちょっとデヴィッド・リンチっぽいなとも思ったんです。デヴィッド・リンチの作品で流れてる音楽は、アンジェロ・バダラメンティって人が作曲してるんですけど、不気味なサウンドですごく良いんですよ。音楽の選び方もリンチは最高で。リンダ・スコットの「星に語れば」とか……明るい曲調のスタンダード・ナンバーに潜む「邪悪さ」や「不穏な空気」みたいなものを作品の中で効果的に使ってるんですよね。
サヌキ : ちょっと違うかもしれないけど、デヴィッド・フィンチャー版の『ドラゴン・タトゥーの女』で、めちゃくちゃ残酷なシーンで急にエンヤの曲が流れるんですよ。その曲のせいで、ますます狂気じみた映像になるんです。
小田部 : そういう音楽の使われ方も面白いですよね。『時計じかけのオレンジ』で主人公のアレックスがジーン・ケリーの「雨に唄えば」を歌いながら女性を暴行するシーンとかも、中学生の時に観て超トラウマになった覚えがある(笑)。『IT』とかもそうだけど、子どもっぽい音楽と怖い映像の組み合わせは、めちゃくちゃ怖いよね……。
とある田舎町で児童が行方不明になる事件が相次ぐ中、おとなしい少年ビルの弟が、大量の血痕を残して姿をくらます。自分を責めるビルの前に突如現れた“それ”を目撃して以来、彼は神出鬼没、変幻自在の“それ”の恐怖に襲われる。彼と同じく“それ”に遭遇した子どもたちとビルは手を組み、“それ”に立ち向かう。
――怖いのは嫌だけど、子どもの歌声が入ってる音楽はハズレがないなっていつも思います。
小田部 : そんなのもう、『かいじゅうたちのいるところ』じゃん!
――まさにそうです。あれ、最高ですよね。もちろん映画も素晴らしいけど、サントラ単体として日常的に聴けるし。個人的にはベスト3に入るくらい好きな映画の音楽です。
いたずら好きなマックスはいつものようにママとケンカして、外に飛び出してしまう。ふと気付くとボートに乗っていたマックスは、海を渡り、ある島にたどり着いていた。島に住んでいる怪獣たちはマックスを見つけ、王様に仕立て上げるが……。
小田部 : カレンOは、あのサントラでピークに達しちゃったなって僕は思う。それぐらい好き。ずっと聴いてる。
サヌキ : フランスのAIRとかもそうじゃないですか? 『ヴァージン・スーサイズ』のサントラで済んじゃうみたいな(笑)。
――ソフィア・コッポラの姪のジア・コッポラという映画監督がいるんですけど、彼女の映画『パロアルト・ストーリー』もサントラが素晴らしかったです。Blood Orangeのデヴ・ハインズと、これまたコッポラ家の親戚であるロバート・シュワルツマンが手がけていて。かなりおすすめです。
mai : Blood Orangeは、今年配信されたNetflixの映画『好きだった君へのラブレター』でも使われていましたね。
男の子を好きになるたび、こっそりラブレターを書いていたララ・ジーン。けれど、出すつもりのなかった手紙がなぜか本人に届けられ、妄想の恋が大変なことに……!
――そうでしたね、あの映画も面白かったなぁ。Netflixといえば、今年配信された『パッケージ: オレたちの"珍"騒動』って知ってますか? 高校生の男女グループでキャンプに出かけるんですけど、一人の男の子が自分の“大事なところ”を切り落としてしまうんです(笑)。残りの子たちがどうにかしてそれを病院に届けようと奮闘するストーリーなんですけど、途中でブリトニー・スピアーズの「Oops! I Did It Again」を子どもの合唱風にアレンジした曲が流れるんですよ。それがもうおかしくって。
サヌキ : めっちゃシュール(笑)。
――2000年代前半のブリトニーの曲って、なぜか笑っちゃうんですよね。『スプリング・ブレイカーズ』でもジェームズ・フランコがピアノを弾いて「Everytime」を歌ってましたけど、あのシーンも大好きです。そういえば、今話題の『ボヘミアン・ラプソディ』ってもう観ましたか? わたしはまだ観られていなくて……。
mai : わたしもまだ観てないです。『シング・ストリート 未来へのうた』のルーシー・ボイントンが出てるらしくて、すごく観たいんですよね。
――あの、主人公が恋した相手の子ですか? それは知らなかったなぁ。『シング・ストリート 未来へのうた』も素晴らしい音楽映画ですよね。またちょっと違うテイストの「青春」と「音楽」をテーマにした映画だけど、最近Netflixで観た『DOPE ドープ!!』という作品も良かったです。
自身のバンドと90年代ヒップホップをこよなく愛するオタク高校生のマルコムは、友人のディギーとジブと共にドラッグディーラー・ドムの誕生日パーティに参加するが、パーティの裏で行われていた取引に警察が突入し、ドムはドラックをマルコムのリュックに隠してしまう。そして、名門大学への進学を夢見ているマルコムと仲間たちを取り巻く状況は一変……!
mai : わたしも『DOPE ドープ!!』好きです! 音楽が楽しいし、ファッションも可愛くて。
小田部 : 90年代のヒップホップに憧れるオタク3人組が、なぜかパンクバンドをやってるんですよね。
――ファレル・ウィリアムスが製作に携わってるから、劇中でバンドが演奏してる曲もファレルの楽曲提供なんですって。言われてみるとN.E.R.D.っぽさやネプチューンズっぽさがあるような。
小田部 : ところで、“『(500)日のサマー』問題”は話さなくていいんですか?
――え、何ですかそれ?!
小田部 : 『(500)日のサマー』は、サントラがめちゃくちゃ売れたらしいんですよ。
建築家を夢見つつもグリーティング・カード会社で働くトムは、社長秘書として入社してきたサマーに一目ぼれする。運命の恋を信じるトムは果敢にアタックし、遂に一夜を共にするのだが……。
サヌキ : ザ・スミスですよね。
小田部 : この間、Superorganismのオロノに「ザ・スミスってどう思う?」と聞いてみたら「今そんなのを聴いてたら、クリシェすぎてダサいでしょ」って言われて。ダサいのか、20周ぐらいまわって、また改めてかっこいいのか、絶妙なラインですよね。きっと『(500)日のサマー』が公開された当時は、ザ・スミス聴いてるのって「お、わかってんじゃん〜!」って感じの象徴だったんでしょうけど。
――ちょっと年代は違うけど、ここ1〜2年で観た作品には、トーキング・ヘッズが多く使われてた気がします。『20センチュリー・ウーマン』とかも最高だったし。『君の名前で僕を呼んで』でも、エリオがトーキング・ヘッズのTシャツを着てましたよね。
サヌキ : ドラマだと、『マインドハンター』でも使われていましたよね。
1970年代後半、殺人犯の心理を研究して犯罪科学の幅を広げようとするFBI捜査官2人。研究を進めるうち、あまりにリアルな怪物に危ういほど近づいてゆく。
――そうそう! 「Psycho Killer」っていうまさにぴったりの曲が。
小田部 : いきなりだけど、みなさんは自分的にベストな映画の音楽っていったいどれですか?
サヌキ : 僕のオールタイムベストは、『パンチドランク・ラブ』です。アニメ『ポパイ』の主題歌が流れるんですけど、そのシーンが好きで。音楽抜きにしても、ポール・トーマス・アンダーソンの作品はどれも同じくらい大好きです。
mai : わたしは、『パリ、夜は眠らない』っていうドキュメンタリー映画が好きです。80年代、ニューヨーク・ハーレムの黒人のゲイたちの生活を描いているんですけど、作中で流れているディスコ・ミュージックが素晴らしいんですよ。
「ボール」と呼ばれるゲイ・コンテストに集まる黒人やラテン系のゲイたちの姿を通して、ニューヨークの下層社会の一面を鋭く描くドキュメンタリー。マドンナが取り上げて世界的に有名になった「ヴォーギング」は、この「ボール」で生み出されたもの。
小田部 : あれはいい映画ですよね。一つの音楽ドキュメンタリーとしても楽しめるような。
mai : 新たなカルチャーの誕生を目の当たりにできますよね。あとは、香港映画が好きなので『恋する惑星』かなぁ。劇中で2曲くらいしか音楽が使われていないんですけど、その2曲がすごく良いんです。ウォン・カーアイ独特の色味や、可愛らしい映像も好き。
――小田部さんは?
小田部 : 僕は……アホみたいな答えですけど、やっぱり『スタンド・バイ・ミー』かなぁ。あのラスト・シーンの音楽の流し方は反則だと思う。
――うーん、わたしは決められないなあ。今年のベストは『レディ・バード』。ティーンが主人公の映画だったら、だいたいどれも大好きなので(笑)。
小田部 : そういえば、今年公開された『Love, サイモン 17歳の告白』も良かったですよ。
――わたしも『Love, サイモン 17歳の告白』のサントラは今年めちゃくちゃ聴いてました。さすがジャック・アントノフ! と言いたくなるような選曲で。エンドロールで流れるブリーチャーズの曲も良かったです。
サヌキ : みなさんは『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』って観ましたか? 劇伴がランディ・ニューマンなんですけど、全編ピアノで演奏していて、いい曲揃いなんですよね。
ニューヨークで暮らす年老いた父・ハロルドに会うため、久々に顔を合わせた3兄妹。長年にわたって競争心やわだかまりを抱え続けてきた彼らは、芸術家肌の父親の奔放な振る舞いに振り回されるばかりで……。
――わたしはピクサー育ちなので、ランディ・ニューマンの音楽は大好きです。ランディとレックス・オレンジ・カウンティが『トイ・ストーリー』の「You’ve Got a Friend in Me」を一緒に歌ってる曲がSpotifyにあるんですけど、それもめっちゃ良かった。
サヌキ : ハンス・ジマーみたいな、壮大な映画音楽はどうですか? 彼はフェスにもけっこう出演しているらしくて。クリストファー・ノーランの映画で使われてるような曲も演奏しているらしいんですよ。
mai : えー! それはアガりますね!
小田部 : これもアホみたいな発言だけど、やっぱり僕はジョン・ウィリアムズも好き(笑)。『E.T.』のテーマソングとか、いつ聴いてもグッとくる。僕たちの世代は久石譲と、ジョン・ウィリアムズには抗えない。幼少期の教育だから(笑)。
――あのレベルまで達しちゃうと、かっこいいとかかっこ悪いとかを超越した魅力がありますよね。最後に、みなさんがいま気になっている映画を教えてください。
mai : やっぱり『ボヘミアン・ラプソディ』かなぁ。
小田部 : 『サスペリア』が気になる。『君の名前で僕を呼んで』の監督の最新作なんですけど、音楽がレディオヘッドのトム・ヨークなんですよ。
――ホラー映画のリメイクなんですね。曲も怖い雰囲気なんですか?
小田部 : サントラだけ先に聴いたんですけど。意外と普通に歌ものとかも入ってて、レディオヘッドっぽくって(笑)。もちろん、怖い曲も入ってるんだけど、静謐で穏やかな緊張感に満ちている感じ。「あぁ、これ、俺、死ぬんだわ……」ってもう諦めてる感じっていうか。
mai : わたしは『キックス』が観たいです。NasやJay-Zの曲が使われているらしくて、ヒップホップ好きとしては見逃せないなと。スニーカー狩りの話っていうのも気になる。
サヌキ : 僕は、Yo La Tengoが音楽を担当している『色とりどりの親子』という映画が楽しみです。
mai : 初めて知ったけど面白そうですね。ドキュメンタリーなのかぁ。
――どんな内容なのか気になります。いやぁ、今日はみなさんにたくさん映画を教えてもらえてすごく楽しかったです! 来年もぜひ、違うテーマでまた語り合いましょう!
■ 今回の座談会で会話に登場した、
Netflix、Hulu、Amazonプライム・ビデオで観られる作品リスト
『ラ・ラ・ランド』⇨ Netflix、Hulu、プライムビデオ
『リトル・ダンサー』⇨ Netflix
『エブリバディ・ウォンツ・サム!! 世界はボクらの手の中に』⇨ プライムビデオ
『ブレックファスト・クラブ』⇨ Netflix
『ピッチ・パーフェクト』⇨ プライムビデオ
『ゲット・アウト』⇨ プライムビデオ
『TAXI』⇨ Netflix
『アトランタ』⇨ Netflix、Hulu
『時計じかけのオレンジ』 ⇨ Hulu、プライムビデオ
『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』⇨ Netflix
『かいじゅうたちのいるところ』⇨ Netflix、Hulu
『好きだった君へのラブレター』⇨ Netflix
『パッケージ: オレたちの”珍”騒動』⇨ Netflix
『スプリング・ブレイカーズ』⇨ Netflix
『シング・ストリート 未来へのうた』⇨ Netflix、プライムビデオ
『DOPE ドープ!!』⇨ Netflix
『(500)日のサマー』⇨ Hulu
『マインドハンター』⇨ Netflix
『パリ、夜は眠らない。』⇨ Netflix
『マイヤーウィッツ家の人々(改訂版)』⇨ Netflix
『E.T.』⇨ Netflix
(※ 2018年12月時点での情報です)
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