興味のある事や自分の趣味、出会ってきた人、好きなものが色々ありすぎて何をテーマとし、コラムに綴ろうかと迷い続けて1ヶ月。結果、ここに書いてみようと決心したのがこの見た目でまさかと思う人もいるかも知れないが「ヒーローもの」。
本来「男の子」から「男性」になるにつれ、ヒーローから興味の無くなる人が多いのかも知れないが、27歳の今でも変わらずヒーローが大好きです。
幼稚園で、誕生日の子供を壇上に上げて先生にインタビューを受けるというイベントがあったのだが、僕は「いっせい君の将来の夢は?」と先生に聞かれて100%の声とポージングで「仮面ライダーァブルァック!アールエーックス!」と叫び、皆ががサーッと引いていったのは今でも鮮明に覚えている。
そのまま小学生高学年になり、仮面ライダーのみならず、ウルトラマン、メタルヒーロー、勇者ロボットと色んなヒーローに詳しくなっていく僕とヒーローからスポーツ、少年マンガ等にシフトチェンジする周りの友達・・・。「自分だけ幼稚なままのか?」と悩み、なぜか後ろめたささえ感じる時期もあったが、小学5年生だった2000年にそんな悩みがどうでも良くなるぐらい熱中する作品が放送開始された。
「仮面ライダークウガ」
1988年に放送された昭和最後のライダー「仮面ライダーブラックRX」を最後に、TV放送がピタッと無くなっていた仮面ライダーシリーズ。(劇場用作品、Vシネマ作品はあったが。)
クウガは今も続く平成仮面ライダーシリーズの記念すべき一作目。日曜朝8時からの放送もこの作品からの流れだ。(1年単位で作品が変わり現在はシリーズ17作目の仮面ライダーゴーストが放送中。)ヒーローの中でも一際、仮面ライダー好きな僕が初めてリアルタイムで観れる連続ドラマとしての仮面ライダーだったので、興奮し過ぎで前日は寝つけませんでした。
第一話が放送開始されると、TVを凝視しながら更にビデオに録画。放送が終わってもすぐにそのビデオを何度も巻き戻して何度も観た。ヒーローが好きな僕にとって、いや、長年仮面ライダーを観てきたファンにとって、あまりにも良作を匂わす第一話だったのですぐに見返す程ツボにハマった人は多いだろう。
こんなヒーロー作品を求めていたと興奮していた。良くも悪くもだが、子どもっぽさがなく、リアリティーがあり、でも王道の格好良さがあるヒーロー作品。演出、画作り、設定等、少しヒーローもの好きに飽きていた人が掴まれる様な仕組みが満載の作品だった。長野の山奥で発見された古代遺跡、そこに居合わせた調査団が遺跡に眠る棺を開けミイラを発見。その直後に突如現れた「未確認生命体」に襲われ、調査団は一人残らず惨殺された・・・。
とまぁ、日曜朝8時の放送とは思えない冒頭の10分。このシーンだけでも異彩を放っていた事は間違いない。
古代遺跡の一件で永い眠りから復活し街に解き放たれた怪人グロンギ達。そんな中、棺に埋葬されていたミイラが付けていたベルト状の装飾品アークルを押収した長野県警に、1体の蜘蛛の様な姿をした怪人が現れ警官達を次々に襲撃。そこに居合わせた五代雄介(オダギリジョー)は、古代の戦士クウガがグロンギ達と闘い、封印する幻を見て直感的にアークルを自分の腰に付ける。その瞬間、五代は仮面ライダークウガに変身。それをきっかけにクウガの力を手に入れた五代は、これ以上被害者を出さない為、皆の笑顔を守る為、グロンギ達と闘う決心をする。
主人公のからっきしの正義感や、番組が進むに連れてライダーがパワーアップする等、王道のヒーローものの要素はあるものの、細かい所に妙なリアリティやサスペンス要素があり、更には子ども達にはトラウマの原因の恐れ大なグロテスクさも兼ね備え、“ヒーロー好きだと幼稚”と思っていた僕にとっては胸を張って「クウガめっちゃイケてる」と言えた。
どこが普通のヒーローものと違うのかを紐解くと、
① ヒーローものでありがちな矛盾があまりない
始めから主人公が手際良く状況を理解したり技名を叫ぶ事に僕は昔から疑問を感じていた。クウガではそういった演出は基本的には無く、必殺のライダーキックをする時も「オリャー!」と叫ぶだけ。ジャンプして全く違う所に移動する事もなく、作中では仮面ライダーという固有名詞も一切出てこない。
② 警察の介入が半端ない
怪人が人を襲う状況でも警察は出動せずヒーローだけが現れるのが王道ヒーローもの。むしろ警察とういう概念さえ無いのではと思う程影が薄いが、クウガでは真逆。怪人を現れた順に「未確認生命体第○号」と呼び、捜査を進め戦闘に参加。クウガに警視庁の試作機だったバイクを贈呈する等、警察は物語にもの凄く介入してくる。クウガ自体も始めは警察にとって脅威として認識されていた為、未確認生命体第2号や4号と呼ばれていた。警察のみならずマスコミも介入し、新聞やTVラジオ等で未確認生命体の動きが報じられていたのも印象的だった。(小学校で未確認生命体に注意するプリントが配られるシーンなんかリアル過ぎ!)
③ リアリティを追求してなのかグロテスク過ぎ!
ヒーローものに出てくる怪人が人を襲撃するシーンというと、泡で溶かしたり派手に爆発したりとハッキリ殺害シーンが描かれずに割とソフトでコミカルとも取れるツッコミ所満載な描写で描かれる事が多い。クウガの怪人は、爪で刺し血しぶきを上げる程引き裂く、高所へ連れ込み突き落とす、トラックでひき殺す、脳天に針を刺す、シンプルに撲殺等、子どもにはトラウマ必至のシーンだらけ。ビームでドカーンみたいな怪人は一切出てこないリアルの追求っぷり。(勿論PTAやBPOで物議だらけだったとか)
④ 衝撃の最終回・・・と最終回目前
ネタバレになるので詳しくは伏せますが、とにかく衝撃のラスト。まず最終回は一切戦闘シーンがなく、人間しか出てきません。なのに完璧に締める。ヒーローものでよく見る巨大化したラスボスに巨大なロボでドーン!とか皆の想いが届いて復活→パワーアップしてビーム!なんてありきたりな最終回は迎えません。
と、これ以外にも語りきれない程出てくる普通のヒーローものとの違い。
しかしそんな天の邪鬼な挑戦をしつつも、正義とは何か、暴力を暴力で解決する事への葛藤、ヒーローとしての苦悩等はアメコミのヒーローにも通じるものもあり、ヒーローらしさはしっかりと散りばめられている。そして、殺された犠牲者や怪人は都合良く生き返らないという当たり前の尊い命の描写。暴力をふるった後に残る後味の悪さもしっかり描く。“クウガ=得体の知れない力”にのみこまれそうになっても、人との繋がりを大事にし、それを希望に自分のナビとして進む五代。その得体の知れない力を便利だと感じた時点で五代は自分を見失っていたでしょう。そんな人との繋がりを魅せるドラマ、実際に起きたらと身震いしそうになる程のリアリティ、王道のヒーローの風格。そのバランスが絶妙で、今もなお広い世代から愛されている「仮面ライダークウガ」。
TVで観た初リアルタイム仮面ライダーはあまりにも良作でした。「大きくなってもヒーローものを見続けてもいいじゃん!」という思考に完全に切り替わり、これをきっかけに色んなヒーローものをどんどん漁りました。
中学1年生でヒューマンビートボックスを始めてHIPHOPを聞き漁り、デザインスキルを磨く為毎日ペンを片手に色んな物を描いていた頃、僕のコアとなる部分には確実にクウガを始めとする「ヒーローもの」がありました。
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