LINEで広がる“山猿現象”グループLINEでマタアイマショウ
11/22にカバーミニアルバム『えんむすび』をリリースした山猿(やまざる)。
SEAMOの『マタアイマショウ』などが収録されたこのアルバムが、ダウンロードやストリーミングなどで大好評だ。
特にLINE MUSICではアルバムチャート、単曲チャートにて続々チャートイン。LINE MUSICアプリを開くと、チャートの大部分が山猿の楽曲で埋め尽くされる“山猿現象”が起きている。
山猿「マタアイマショウ」「えんむすび」㊗LINE MUSIC ウィークリー1位!!https://t.co/uyKnl0Hkx4#山猿 #マタアイマショウ #えんむすび #1位 #SEAMO #鈴木奈々 pic.twitter.com/wO13XmZ0iO
— YAMAZARU Official (@yamazaru_sme) 2017年11月29日
山猿とは?
山猿は、2010年に”LGMonkees”としてメジャーデビュー。デビュー曲『Greatful Days feat. Noa』でレコチョク年間ランキング1位、JOYSOUND歌詞検索サイト1位などを獲得。
順調なスタートを切ったかに見えたが、2011年3月の東日本大震災で被災。自宅が津波の被害を受け、避難所生活を送っていた時期もあった。こうした経験から音楽を通じて「愛」「絆」「勇気」を伝えたいという想いを持ち、『3090〜愛のうた〜』を同年10月にシングルリリース。
たちまち「泣ける歌」として話題になり、『NEWS ZERO』や『ミヤネ屋』などでも大きく取り上げられる。2014年には“山猿”としてアーティスト活動を再開。12週連続での新曲配信や、アルバム『あいことば』シリーズなども話題になった。
そうして現在も地元である福島で暮らしながら、日本全国へ「愛」を「うた」に乗せて発信し続けている。
アルバム『えんむすび』と「マタアイマショウ」
『えんむすび』は11月22日にリリースされたカバーミニアルバム。広瀬香美『DEAR…again』、中島みゆき『糸』、シャ乱Q『シングルベッド』、ラッツ&スター『め組のひと』、鬼束ちひろ『月光』など、様々な年代の名曲を山猿がカバーしている。
なかでも注目を集めているのが、2006年に発表されたSEAMOの大ヒット曲『マタアイマショウ』のカバー。口コミやラジオなどでロングヒットしたこの曲で、SEAMOは『NHK紅白歌合戦』に初出場。当時を振り返ると、歌がうまいイケてる男たちの多くが、この曲をカラオケで持ち歌にしていた気がする……。
山猿の『マタアイマショウ』。熱いアンサーソング。
今回、山猿は『マタアイマショウ』をカバーする際、歌詞の一部に「リアレンジ」を加えている。
まずはSEAMOと山猿の『マタアイマショウ』を見比べてみよう。
(SEAMO『マタアイマショウ』MV short ver.)
(山猿『マタアイマショウ』MV。出演は鈴木奈々)
SEAMOのMVは、離婚届を前にする若い夫婦で始まる。それに対し、山猿のMVは結婚式のシーンで始まる。
この対照的な始まりからも分かるように、山猿は『マタアイマショウ』を原曲とは真逆の歌に変換させた。つまり、“悲しい別れの歌”を“幸福な愛の歌”に変えたのだ。
山猿が書き加えた歌詞は、“大切な人のハートへ これは僕なりに書いたアンサー”と始まる。約10年前に大ヒットした曲をただ歌い直すのではなく、現在の自分の歌として、過去に対するアンサーとしてアップデートしたわけだ。
具体的に歌詞の内容を見ていくと、かつて好きだった人に、時を経て偶然“再会”するという内容になっている。“再会する”という物語は、『マタアイマショウ』という曲へのアンサーとして理想的な着地点だろう。
原曲を熱心に聴いて涙したリスナーなら、あのとき「また会おうね」と言えず、「マタアイマショウ」とカタカナにすることでなんとか自分を保っていたこの曲の主人公が、約10年の時を経てようやく幸せを手に入れる展開に、胸が熱くなるに違いない。
SEAMOに対する本質的なリスペクト
サビ以外の歌詞を新たに書き加えるという試みは大胆に思えるが、じつは、先輩への最大の敬意を表した方法だとも言える。
というのも、SEAMOというアーティストは、自身の体験を元に歌詞を書くタイプ。とくに『マタアイマショウ』は、当時のSEAMOがライミング(韻を踏むこと)を捨ててまでメッセージを伝えたかった渾身のラブソング。
山猿は、その精神までカバーしようとしたのかもしれない。
たとえ原曲の持つニュアンスが変わってしまったとしても、山猿自身の体験にもとづいてよりリアルな感情を乗せ、山猿自身の『マタアイマショウ』にすること。こうした山猿の姿勢からも、SEAMOという先輩アーティストへのリスペクトが伝わってくる。
そしてその結果、単なるカバーにとどまらない、まったく新しい『マタアイマショウ』が完成した。原曲が持つ切なさ、デリケートさ、一途さを引き継ぎつつ、山猿らしいストレートで前向きなラブソングに仕上がった。
SEAMOも「全く違う素晴らしい曲に生まれ変わらせてくれた」とコメント。
山猿が「マタアイマショウ」をカバーしてくれました!というより全く違う素晴らしい曲に生まれ変わらせてくれたって感じですね!!https://t.co/86m5YPGeLB#seamo #山猿 #マタアイマショウ
— SEAMO(シーモ) (@SEAMOjyukucho) 2017年11月13日
LINE MUSICですごい展開に。音楽のコミュニケーションとしての側面。
そしてこの『マタアイマショウ』を収録したアルバム『えんむすび』が、LINE MUSICですごいことになっている。
アプリを開いてランキングを見てみると、『マタアイマショウ』『DEAR…again』『糸』『シングルベッド』『め組のひと』『月光』など、『えんむすび』収録曲が軒並みランクインしているのだ。
LINE MUSICの利用者には、若い世代が多いと言われている。
その理由は、「LINEがあれば誰でも使える」「LINEに楽曲の一部を埋め込んで、シェアしたりプロフィール画面のBGMに設定したりできる」「邦楽の歌詞表示に強い」「UIがシンプルでLINEユーザーにとって使いやすい」「いちはやく学割を提供していた」ことなどがあげられるだろう。
なかでもBGM機能は、若い世代のコミュニケーションにおいて重要な役割を果たしている。友だちのプロフィールにどんなBGMが設定されているかが会話のきっかけになるし、彼らのアイデンティティを表す手段のひとつにもなるからだ。
グループLINEで広がっていく“山猿現象”
BGM設定機能は、グループLINEにおいてさらに面白さを発揮する。
同じクラスやバイト先の友だちでつくったグループLINEを見て音楽を知り、気に入ったら自分もその楽曲にする――。その結果、グループ内のほとんどのメンバーが同じBGMを設定しているのだ。これはLINE MUSICユーザーならばわりとよく見かける現象だろうが、音楽の流通の仕方としては画期的なことだ。シンプルだが独特な機能が、音楽の持つコミュニケーション的な側面を拡張していると言えるのではないか。
すでに、山猿のアルバム『えんむすび』に収録された楽曲で埋め尽くされるということが、様々なグループLINE内で起きているに違いない。
“山猿現象”とも言えるこのヒットの形態は、今後の音楽のあり方を考える上でひとつの試金石となるかもしれない。
作品情報
「えんむすび」ESCL-4950 ¥2,037(税別)
01. マタアイマショウ
02. DEAR…again
03. め組のひと
04. シングルベッド
05. 月光
06. 糸
07. Respect for you ~Outro~
山猿オフィシャルサイト
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Text_Sotaro Yamada
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