日々日常をせわしなく生きている僕たちはふと、なんだか大事なことを忘れてしまっているような気持ちになるときがある。そんな僕らの目を覚ましてくれるのが、メロフロートの音楽だ。関西発の2MC+1DJの3人組、路上ライブで叩き上げた強いハートと真っ直ぐな歌詞は、場外ホームラン級の力強さで聴く人たちの心を大きく揺さぶるのだ。結成5年で遂にメジャー初のフルアルバム『ON THE ROAD』をリリースをしたメロフロートの、これまでとこれから。
Photography_Takuma Toyonaga
text_Kazuki Terajima
メロフロートのルーツが路上にある理由。
――ミーティアには初登場!ということで、まずはメロフロート結成の経緯から聞かせてください。
Yu-Ki : 2011年結成で、今年で5年になります。
――メロフロートの皆さんは関西のご出身なんですよね?
Yu-Ki : 僕は兵庫です。
KENT : 京都です。
DJ KAZUMA : 僕も京都ですね。
――最初はYu-KiさんとKENTさんのお2人で始められたんですよね。
Yu-Ki : 最初は2人でやっていたんですけど、お互い噛み合わないところもあったりして。1年ぐらいやって、「辞めようか」っていう空気になっていたときにDJのKAZUMAが入ってくれたんです。
DJ KAZUMA : 僕もちょうどその時期に別のグループを解散したタイミングで、たまたま僕らがホームにしているライブハウスで「3人で歌ってみようか」っていう話になって。やってみたら、それがすごくよかったんですよ。それで僕も加入することになりました。
――晴れてメロフロートの現体制ができ上がったわけですね。
Yu-Ki : 直感ですけど、これはイケるって思えたんですよね。KAZUMAが僕とKENTの間を埋めてくれたような感覚です。全員同い年で、全員野球をやってたっていうことで縁みたいなものは感じました。このタイミングで音楽で食っていくって決めました。
――それは何歳ぐらいの頃の話ですか?
Yu-Ki : 19歳だったと思います。
KENT : 僕は当時専門学校通ってたんですけど、辞めました。
DJ KAZUMA : 僕も大学辞めましたね。
――すごい決断力ですよね。
Yu-Ki : 事務所の社長に「音楽だけで食っていかないと意味ないじゃん」って言われて。駆け出しの頃なんて本当にキツいですけど、その通りだなって思ったので、みんな学校もバイトも辞めて音楽に集中することにしたんです。
――メロフロートといえば路上でのライブがルーツで、それが代名詞のようなものになっているそうですね。路上ライブはどうして?
Yu-Ki : ずっとお世話になってるライブハウスでライブをしていたのですが、全然集客が上手くいかなくて。お客さんがいないフロアに向かって歌ってもいても、ただの自己満じゃないですか。どうしたらお客さんがライブに来てくれるようになるかを考えた結果、まずは人が沢山行き交う路上で僕たちの歌を聴いてもらおうと、路上ライブをはじめました。だけど最初は誰も足を止めてくれませんでした。それでもめげずにコツコツ路上ライブを続けていたら、本当に少しずつですが足を運んでくれる人ができ始めて。同時にライブハウスでも集客が増えていきました。
――路上ライブで耳を傾けてくれる人が、そのまま“メロフローター”と呼ばれるファンになっていったのですね。路上ライブの魅力ってなんだと思いますか?
Yu-Ki : 直接お客さんとコミュニケーションを取って、思ったことをハッキリ伝えられるのは路上ライブならではの強みだと思いますね。初めましての方とお話していても、流石にいきなりチケットを買ってくれるっていうことはないんですよ。でも僕らが真剣にお客さんに向き合っていれば、徐々に関係性ができあがってきて、気がつけばお客さんの方から「チケットください」って言ってくれるようになるんです。
――そういう地道な活動がメロフロートの音楽性に与えた影響はありますか?
Yu-Ki : 路上ライブはステージがないし、いい音響や照明もない。そんな泥臭い現場でも目の前にいるお客さんの心に届く音楽ってなんだろうと考えたんです。行き着いたのが「ありのままの飾らない言葉をメロディに乗せる」という考え方。僕らのストレートな歌詞というのは路上ライブでのお客さんとの関係性がルーツにあると言っても過言ではないと思います。
――「聴いてもらう」ということに自覚的になったんですね。シンプルなことをそのままシンプルに伝える決意ができたと。
Yu-Ki : そうですね。路上ライブでいろんなお客さんと出会っていく中で「みんな同じなんだな」って気づいて。好きなことをしていてもしていなくても、楽しい時は楽しいし、しんどい時はしんどい。僕らはそういうシンプルなことを音楽で表現していけたらいいなと思います。
自分たちを磨くことが、曲をもっと輝かせる。
――遂にメジャーでの1stアルバム『ON THE ROAD』がリリースされます。結成から5年というタイミングですが、本作はどんなスタンスで制作されたのでしょうか。
Yu-Ki : 先程お話した通り、これまでは路上ライブを主戦場としていたところがあるので「目の前の人に届く音楽」ということを大事にしてきたんです。ただ、今回1stアルバムをリリースするにあたって、これからもっと多くの人にメロフロートの音楽に触れてもらうためには「目の前にいる人の大切な人にまで届く音楽」にしていく必要があると思ったんですね。
――これまでのさらに一歩先に。歌詞については特に今回意識されたことはありましたか?
Yu-Ki : みんなが思ってないようなことは書かないようにしました。自分にしかわからないことだったり言葉ではなくて、きちんとみんなに伝わる形を模索しました。もちろん難解な歌詞も面白いとは思うんですど、今それが僕らに求められているのかと言われれば必ずしもそうではないので。ファンのみんなに寄り添う歌詞を意識しました。
――いい意味で「作業用BGM」にはできない、ハッとするようなパワーがある歌詞だと思います。歌詞を書く際に、メンバー間ではどんなやりとりをするんですか?
KENT : 最終的に歌詞を書くのはYu-Kiなんですけど、僕らとしてもきちんと自分の思いを乗せて歌いたいので、まず曲に対するイメージを全員で共有します。
――まずは全員で考えるんですね。
KENT : そこでYu-Kiとイメージを摺り合わせていって、最終的にまとめてもらうっていう感じです。時々まるっとYu-Kiにお任せするときもあるんですけど、本当にいい歌詞書くなって思います。
Yu-Ki : ただ、ストレートな歌詞だからこそ僕らは人間としてしっかりしなきゃなって思うんです。歌が上手くなるとかは当然として、僕らの曲をよりよく聴こえるようにするには、僕ら自身が人間として深みを増していく他ないんですよ。僕らの音楽は僕らにしか歌えないんで。自分を磨くことが曲を磨くことに等しいと思います。
――音楽と歌い手は密接に絡み合っていると。
Yu-Ki : そうですね。じゃないと、メロフロートのような音楽はできないと思います。
――これまでのメロフロートの活動をギュッと濃縮したような収録曲になっていると思いますが、メンバーの皆さんはそれぞれ思い入れのある曲はありますか?
KENT : 個人的に一番好きなのは「好きなんだ」ですね。
Yu-Ki : 好きな人でもおるん?(笑)
KENT : いや、好きな人はいないよ!(笑)。もちろん、大切な人はいますけどね。ストレートなラブソングで、尚且つ僕とYu-Kiでユニゾンで歌ってるところが気に入ってます。
――なるほど。KAZUMAさんはどうでしょう?
DJ KAZUMA : タイトル曲なんですけど「ON THE ROAD」ですね。実は今回の制作中、体調不良であまり参加できていなくて。
――ご無事で何よりでしたね......ただ、制作に入れないとなるともどかしかったですよね......
DJ KAZUMA : ある日、ベッドで寝転んでたらアルバムが完成したという連絡がきたんですよ。歌詞のミーティングも、レコーディングもほとんど関われなかったので、でもメロフロートの一員としてだけでなく、客観的に聴くことができたんですよね。そのときに聴いたのが「ON THE ROAD」。これまでのメロフロートが詰まってる曲だと思った一方で、「もっと頑張ろう」という気持ちが芽生えたんです。「今回はあまり貢献できなかったけど、腐らずに再スタートを切ろう」というスイッチを入れてくれた曲です。
――メンバーである自分が、メロフロートの曲に背中を押されたような感じがあったと。
DJ KAZUMA : そうですね。僕自身、いつもメロフロートの曲に背中を押されてはいるんですけど、状況が状況だったので一番勇気づけられました。
――それは印象に残りますね。
DJ KAZUMA : ほんまにごめんな、いろいろ迷惑かけて。
Yu-Ki : なんの苦もなかったで。
DJ KAZUMA : おい!(笑)
――うはは!(笑)。ではYu-Kiさんはどうでしょうか?
Yu-Ki : 「ミチシルベ」と「LIFE GOES ON」ですね。
――「ミチシルベ」は、活動初期からある曲ですね。
Yu-Ki : 「ミチシルベ」は僕らの原点の曲です。実は歌詞も書き直したんですよ。初期の頃にしか出せない良さもあるから、結構抵抗があったのですが、5年経って歳を重ねたから今だからこそ書ける歌詞もあるんじゃないかと思って、思い切って書き直しました。原曲では曖昧にしていた箇所もハッキリとした表現におきかえました。メロフローターの記念日や結婚式に使ってもらえるような曲になったらいいなと思いますね。
――初期の大事な曲に手を加えるというのは、相当な覚悟がいることだと思います。でも、その一方で書き直したことで一歩前に進んだわけですよね。
Yu-Ki : そうですね。あと、「LIFE GOES ON」もやっぱりデカいですね。
――跳ねたリズムが印象的な、疾走感ある曲ですね。
Yu-Ki : 実は、歌詞を書くのに一番時間かかったのがこの曲。それまでのシングルでは、夢だったり、理想と現実のギャップについて歌ってきたんですけど、「LIFE GOES ON」では別の方向の歌詞を書きたくて自分を振り返ってみたんですよ。そうなったときに「忙しさを言い訳にして、大切な人に会わずにいるな」って気づいて。
――「会いたい人に会えていますか?」っていう歌詞にはハッとさせられました。
Yu-Ki : 忙しいのはみんなそうなんですけど、それで自分をごまかして欲しくないなって思ったんですよ。誰かが夢に対して向かっている姿を冷めた目で見てしまう人っているじゃないですか。その人にはその人の事情があるのかもしれないですけど、そういう人にも刺さるといいなと思って歌詞を書きました。
まだ僕らは道の途中。
――最後に、アルバム全体を通してリスナーに届けたいメッセージはありますか?
KENT : この1枚を手にしていただけるだけで、メロフロートのこれまでを理解してもらえる作品になったかなって思いますね。これまでのシングルもそうでしたけど、より一層多くの人にメロフロートの音楽を届けられたらいいなって思います。とにかく聴いてもらいたいですね。
Yu-Ki : これまでのシングルは、リスナーに向けて書いた曲だったと思うんです。ただ「ON THE ROAD」は自分たちを見つめ直して書いた曲なので、昔から応援してくれているファンの方には特に刺さると思います。
KENT : ほんまに『ON THE ROAD』は、メロフロートの「これまで」と「これから」をつなぎ合わせてくれる一枚だと思います。
Yu-Ki : そういう意味では『ON THE ROAD』は「まだ途中やで」っていう意味を込めてるので。
――まだ発展途上だと。
’Yu-Ki’ : リリース後はツアーを控えてますよね。これだけの本数は初ですか?
Yu-Ki : この規模感のツアーは初めてですね。
DJ KAZUMA : 初めての会場もあるので楽しみですね。
KENT : しっかりソールドアウトさせて、さらに大きな会場でもやれるように頑張りたいです。
――ツアーの成功、祈っています。ありがとうございました!
MELOFLOAT(メロフロート)
関西出身2Vo+1DJ 3人組J-POPグループ。結成以来全国的にストリートライブを展開、CD・LIVEチケットは路上での手売り販売を行ってきた。2015年7月シングル「夢のカケラ」でメジャーデビュー、同年9月には地元・Zepp Nambaでのワンマンライブを成功させ、そして2016年3月にリリースのシングル「ひとつだけ」は、[駿台予備学校2016年CMソング]となり話題を呼んだ。平行して全国47都道府県を路上ライブも敢行し、チケット代800円という破格の金額での全国ホールツアーも開催!出逢えた人たちとのキセキをキズナに変え、着実に人気を積み上げている。出逢えた人たちとのキセキをキズナに変え、着実に人気を積み上げている。
リリース情報
MELOFLOAT
1st Album
『ON THE ROAD』
収録曲
01. ON THE ROAD
02. ひとつだけ
03. LIFE GOES ON
04. ミチシルベ
05. 僕のキモチ
06. 好きなんだ
07. きれいになぁれ
08. 夢のカケラ
09. サクラヒトヒラ
10. サマーデイ
11. ノスタルジア
12. 未来
AICL-3389
¥2,500(tax in)
『ON THE ROAD』リリースツアー
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