2016年11月4日、池袋「RUIDO K3」にて、焚吐のワンマンライブ『リアルライブ・カプセルvol.1』が開催された。
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前回のワンマンがファンクラブ会員限定で行われたものだったため、本格的なワンマンライブとしては今回が初めてなる。にも関わらず、チケットはソールドアウトし、会場はスタート前から熱気溢れる状態だった。
(『トーキョーカオスe.p.』より『クライマックス』。ドリームキャストを真剣にプレイする姿と、ハンドマイクで激しく歌唱する姿の対比に注目。)
焚吐は、デビューしてから一年足らずの間に、アニメ『ヤング・ブラックジャック』や『名探偵コナン』とタイアップした曲を発表し、今夏には池袋パルコにて20日間にわたり、60本もの弾き語りライブを行うなど、精力的な活動を行ってきた。
しかし、それらはもちろんソロとしての活動であり、「高校生の頃は友達がいなかった」「自分の存在価値は0.3人分くらい」と語るなど、デビューしてから一貫して「ぼっちカルチャー」を体現するような、どこか孤独な雰囲気を纏っていた。
また、伸びやかな歌唱と対照的に、普段の声の小ささはファンの間では有名であり、それがギャップとなって彼の魅力となっているのだった。
(※ぼっちカルチャー……「ひとりぼっち」が生み出すカルチャーのこと。筆者の造語)
今回のライブでは、そういった「これまでの焚吐」とは違う側面が見られたように思う。
フォークは寄り添うもの、ロックは引っ張っていくもの。
一曲目、『クライマックス』で自身初となるハンドマイクによる演奏を披露すると、続いて『子捨て山』『四捨五入』とグルーヴィーなロックナンバーが続く。
観客は手拍子をしながら、身体を揺らし声を返し、早くも会場は一体感に包まれた。
これらの曲には、原曲よりもさらにロックで、さらにバンドらしいアレンジが加えられていて、特にエレキギターの激しい音が焚吐の音楽に新たな命を吹き込んだように感じられた。
さらに『青い疾走』、『人生は名状し難い』、メッセージ性の強い未発表曲『彼方の明日』を演奏すると、バンドメンバーは一旦裏へ下がり、焚吐のMCへ。
父親が前回のライブで抽選に外れてしまったことや、犬と間違えて足にしがみついてきたことなどを話すと、会場から笑いが起きた。
焚吐、MCも結構イケるのか?
そしてライブは弾き語りパートへ移行する。
「フォークは寄り添うもの」と本人が語るように、アコースティックギターを抱えたパフォーマンスでは、観客に寄り添うようなしっとりとした弾き語りを聴かせてくれた。
特に『ゲド戦記』の主題歌である『テルーの唄』のカバーで披露したファルセットは、ぜひとも音源化すべき美しさだと言っていい。
弾き語りが終わると、再びバンドメンバーがステージへ。
ここで焚吐がバンドメンバーを紹介。
Gt. ナカダツバサ
Follow @tsubasa_nakada
Ba. 花村智志
Follow @hanamura_sts
Key. 鮎京春輝
Follow @ayuharu0411
Dr. 橋谷田真
Follow @mak14_arsenal
ナカダ、花村、鮎京の三人を、個人情報や過去のブログの内容を晒し、イジリつつ紹介。
しかし橋谷田だけは「最年長」と一言だけの雑な紹介にとどまり、会場からは大きな笑いが起きた。
焚吐、MCも結構イケるやん。
100回目の記念
バンドスタイルに戻ると、『てっぺん底辺』やNeruのカバー曲『ロストワンの号哭』、未発表曲『ティティループ』を披露。
会場のボルテージがマックスになると、「実は今日のライブが、焚吐としてのちょうど100回目のライブなんです」と報告し、ライブのクライマックスを、焚吐史上最速ナンバー『僕は君のアジテーターじゃない』で締め、大きな拍手に包まれた。
観客が手拍子しながら「アンコール」と古典的なコールを続けると、焚吐は再びステージへ。
「久々に『アンコール』っていうコール聞きました。かわいいですね」と微笑み、『ふたりの秒針』『オールカテゴライズ』を披露。
さらに渋谷WWWでワンマンライブを開催されることを報告し「100回記念なんで、写真撮りましょう!」と、メンバーやファンたちと写真撮影へ。
本人がtwitterでもアップしているように、全身から喜びが滲み出ていた。
一昨日の写真です。身体中からハッピーが滲み出ていますね。 pic.twitter.com/2eKfHDVPRj
— 焚吐(たくと) (@official_takuto) 2016年11月6日
以前から、焚吐は「コミュニケーションが苦手」で「過去の自分を清算したい」と語ってきた。
しかし、この日のライブはまさに観客やメンバーとのコミュニケーションで成り立っており、過去の清算というよりは、喜びの共有といった言葉の方がふさわしかった。
また、これまでよりもバンド色が強く前面に出ていて、「焚吐BAND」とでも呼ぶのがふさわしいようなステージだった。
そういえば、オープニングSEではT.REXが流れていて、「これまでの焚吐」のイメージからするとやや意外な印象を持ったのだが、それはこのライブの伏線だったのかもしれない。
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