Gallery COMMON初の所属作家として迎えた大規模個展がお目見え
Untitled (serial number 40). 2021. w1450 ×h1450 ×d40mm. © 2021 IchiTashiro.
Photo by Yosuke Torii.
これまでに、Parra(パラ)・ERIC ELMS(エリックエルムズ)・Cali Thornhill Dewitt(カリソーンヒルデウィット)・Waku(ワク)・TIDE(タイド)・河村康輔など様々なアートショーを手掛け、2021年に移転リニューアルしたGallery COMMONが初の所属作家として、「Ichi Tashiro」を迎える。
ファッションとアート、ストリートとコマーシャル、サブカルチャーとメインストリームという逆説的でありながらも互いに共生的な二者間のギャップを埋めることを目指すGallery COMMONが見出した世界中が注目する「Ichi Tashiro」という逸材。
今回の大規模個展では「30年間の潜在意識の研究の成果」として、30年前の作品と同じプロセスで制作された新作を計14点発表。
日常的なものから独自のファンタジーの世界を創り出し、捨てられたものから魔法や新たな始まりを見出すという、無垢ともいえるほどストレートなアプローチとそんな無邪気さ、不器用さも感じることのできるTashiroのシュールレアリスム的な作品は、それに付随するなぐり書きや勢いのある絵の具の斑点によってさらに魅力を増しているボリュームたっぷりの内容だ。
紙媒体としての新聞や雑誌が失われつつある絶望的な状況の中でTashiroは紙媒体の歴史と未来について考え、本展で展示される木製パネルの形は、1700年代に江戸で生まれた折り紙の伝統からインスピレーションを得て制作されている。折り紙は、紙自体が彫刻やアートのような役割を果たし、そんな折り紙を模して形で作られたパネル上に貼られた現代の新聞の切り抜きは、折り紙と違い、紙は文字や事実を伝えるものとして機能する実に奥深い作品に仕上がっているのだ。
現代のデジタル社会に異を唱え、ニューヨークでホームレスとして過ごしながら製作していた当時と同じ工程で折り紙などから着想を得たパネルに金融新聞などを用いてカラフルに構成された新作コラージュ作品14点を是非その目で見ていただきたい。
【展覧会情報】
Ichi Tashiro「Serendipity」
■会期_2022年2月26日(土)‒ 3月20日(日)
■住所_Gallery COMMON(東京都渋谷区神宮前5-39-6 B1F)
■開廊時間_12:00-19:00(水~日)
*月、火休廊
*国や自治体の要請等により、日程や内容が変更になる可能性があります。
アーティストプロフィール
Ichi Tashiro(イチタシロ)
1984年に愛媛県で生まれ、幼い頃からスクラップブッキングやコラージュを制作していた。
当初は現実から逃避し、空想の世界に浸るために始めたこの趣味は、高校を卒業する頃には彼のアイデンティティの一部となり、18歳の時には着の身着のまま画材の入ったバックパックだけを携えてニューヨークへ移住し、独学でアーティストとしてのキャリアをスタートさせた。
渡米した当時はゴミ箱から新聞や雑誌を拾い路上で観光客にコラージュ作品を売りながら、稼いだ小銭をかき集めて食べ物を買い、夜は公園で寝る日もあれば、運が良ければ気前の良い友人宅のソファーや床で寝る日もあった。そして、そんなホームレスとして過ごした時間は、彼の階級、価値観、社会規範、そして芸術の機能についての認識に深い影響を与えた。
その後、ニューヨークや香港のきらびやかなギャラリーやアートフェアの世界を旅し、自由と創造性の表現としてのアートと、マーケットや政治という退屈な現実との間の矛盾の露呈をさらに実感することになった。
そのような中でも、自己表現とは何か、価値とは何かという問いに常に直面し、ニューヨークで一時は生命線であった「使い捨て」のメディアに何度も立ち戻ることになり、今回の展覧会の開催を決している。
現在は東京を拠点に活動。これまでに、ニューヨーク、香港、パリ、ロサンゼルス、アムステルダム、ベルギー、デンマーク、シンガポール、東京で個展やグループ展を開催し、Art Basel香港、ASIA Now Paris、Art TaipeiやArt Stage Singaporeなどのアートフェアでも作品を発表している。
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