今年7月、アニメ「ヴァニタスの手記」の放送がスタートした。”人間”と”吸血鬼”という個性の強いキャラクターや、先の読めない展開が注目され、今まさに人気沸騰中の今作。主題歌は、オープニング曲「空と虚」を制作した、音楽プロデューサーでありシンガーソングライターの”ササノマリイ”。そしてエンディング曲「0(zero)」を制作した、ニューヨーク出身のシンガーソングライター”LMYK”。2人は「ヴァニタスの手記」を通して何を感じ、どのようにしてつながっていったのだろうか。今回の対談を通して、ここでしか知ることのできない、2人の頭の中をのぞいてみる。
Photo:Keiichi Ito
Text:Moe Kato
作品の「テーマ」とそこに重なる2人の「音楽」
――今回はアニメ「ヴァニタスの手記」のオープニング曲、そしてエンディング曲の制作を担当されたお2人ですが、最初にアニメを見たときはどのような印象を受けましたか?
ササノマリイ(以下ササノ) : 僕はもともと原作を読んでいて、アニメになるとそれがどんなふうになっていくのかとても楽しみでした。実際にアニメを初めて見させていただいた時は、「ノエが動いてる!」「ヴァニタスが喋っている!」という完全にオタク的な見かたをしていていましたね(笑)。
――もともと原作のファンだったんですね。
ササノ : そうですね、アニメもリアルタイムで毎話見させていただきました。
――オープニング曲の「空と虚」は、原作のどのようなところにインスパイアされて制作したのでしょうか。
ササノ : 作品の舞台であるフランス・パリの美しさと作品の持つ明るい部分を軸に、作品の世界を音楽で描けたらという気持ちで作らせて頂きました。
LMYK : じゃあ、あのオープニング映像は、ササノさんが考えていた曲のイメージとピッタリですね。
ササノ : 裏話になりますが、曲が出来上がった時に、アニメの制作スタッフの方に、イントロ部分のピアノの譜面を欲しいと言われたんです。それに合わせてオープニング映像を作っていただいて、ファンでもある僕からしたら曲をもとに映像を作っていただいたことがとても嬉しかったですね。
LMYK : すごくかっこいい曲だなと思いました。最初の出だしのキーボードがとてもお洒落で、わたしには作り出せないような世界観だなと。あの曲を生み出せる力を持っているのが羨ましかったです(笑)。
ササノ : ありがとうございます。舞台であるパリの雰囲気と、僕の中で生み出せる曲の世界観をうまくかけ合わせて作ることができてよかったです。
LMYK : リズミカルで明るい曲になっていて、オープニングにピッタリだなと思いました。
――LMYKさんは、アニメを見てどのような印象を受けましたか?
LMYK : 原作を読ませていただいたのですが、驚きの展開が続いてストーリーがとても面白かったです。笑えるシーンもありつつ、キャラクターの人間性も奥深いものがあり、ずっと見ていて飽きなかったですね。
――エンディング曲の「0(zero)」は、どのようなところから着想して制作したのでしょう。
LMYK : わたしは音楽をしていくなかで、”存在”や”人間”というテーマについて常に考えて続けています。「ヴァニタスの手記」という作品のなかには”救い”という言葉が大きな意味を持って出てくるんです。そういう部分で、自分の描きたかったことと作品のテーマが重なったように感じ、その部分を中心に曲として表現しました。
――「0(zero)」は日本語ver.だけではなく、アニメの放送圏に合わせて英語ver.も制作していますよね。その2つにはどのような違いがあると感じますか?
LMYK : 先に日本語版を制作してから、それを元に英語版を制作しました。同じ曲でも、そのまま直訳した言語で歌うと、曲の雰囲気が大きく変わってしまうところに苦戦しましたね。
アメリカンジョークが日本で通じなかったり、日本の笑いが海外で通用しないのと一緒で、文章や歌詞も日本語で言ったらかっこいいのに、英語では全然響かないみたいなことが、けっこうあるんです。なぜかは分からないんですけど、どうしても直訳すると違和感が出てしまい、そこを調整するのが難しかったです。英語版は日本語版を元にもう1度書き直す形で制作しました。すでに譜割りが決まっているので制限されるところはありましたが、最終的には納得できる良いものができあがったと思います。
ササノ : 本当にあの曲大好きなんです。あんな素晴らしい曲を作ってくださりありがとうございます!(笑)
LMYK : こちらこそ今回ササノさんの音楽とタッグが組めて嬉しかったです。
音楽ってこんなにも人の心に伝わるものなんだ
――現在音楽活動をされているお2人ですが、最初はどのようにして音楽の道を選んだのか教えてください。
LMYK : 小さいころはものづくりをして遊ぶのが好きで、そのうちの1つが曲づくりでした。でもちゃんと1曲完成させたことはなくて、遊びとして作っていただけでしたね。ほかにも雑誌を作ったり、架空のバスケットボールチームを作って遊んだりしていました。シャイな性格だったので、1人遊びが得意だったんです。
ササノ : 分かります、僕も友達が多いわけではなかったので1人遊びばかりしていました(笑)。僕は小さいときに、音を録音するおもちゃと出会って、そこからはそれでずっと遊んでいましたね。幼いながらに気に入った音を録音して、その音を組み合わせて遊んでいたのが、今の音楽活動の原点です。
LMYK : 子どものころの性格を考えると、まさか自分がシンガーソングライターとして人前に立つ仕事をすることになるとは思わなかったので、人生って不思議ですね。
――2人ともシャイな性格だったんですね(笑)。なぜそこから人前で歌う道を選んだのでしょう?
LMYK : 昔から歌うのは好きでした。あるとき公園で友達に「目をつぶるから歌って」と言われて、そのときに初めて人前で歌を披露しましたんです。すごく怖かったし緊張で声が震えました。でもわたしが歌うと、1人の女の子が泣き出しちゃって。そのときに、音楽ってこんなにも人の心に伝わるものなんだ、ということを知りました。それからはもっと曲を書いて、もっと歌いたいと思うようになったんですよね。
ササノ : それってすごくいい音楽の始まりかたですね。僕にとっては理想的な始まり方です。
――ササノさんはネット上で作品を公開していたんですよね?
ササノ : 僕が曲づくりを始めたときは、いろんな人が自分の作品をネットに投稿していて、投稿サービス自体も熱が入っている時代でした。最初は歌なしのinstrumentalの状態で投稿していたんですけど、もっと多くの人に「いいね!」と言って欲しいと思ようになったんです。そのためには歌が必要だと感じ、”歌もの”にしようと思いました。でも僕はそんなに歌に自信がなくて、どうしようか……と思ってたときにボーカロイドというものに出会いました。
――今ではササノさん自身の声で歌っていますが、ボーカロイドから自分の声で歌うようになったきっかけはなんだったのでしょう。
ササノ : SONYさんに何かやりたいことある?って聞かれたときがあって、そのときに「歌いたいです」って言っちゃったんですよね(笑)。
――前から歌いたいと思っていたわけではなかったということでしょうか?
ササノ : 僕にとっての曲づくりは仕事というよりかは大事な趣味、楽しめるものなんです。今でもボーカロイドを使って曲づくりはしているんですけど、それとは別の軸の、もう1人の自分として活動できる場所が欲しいと思っていました。そんなことを考えているときに、やりたいことがあるか声をかけていただいたので、歌いたいですと思わず口にしてしまったんです。
LMYK : ボーカロイドは肉声に比べてどう違うんですか?
ササノ : ボーカロイドは録音された声を元に作られた合成音声なので、淡々としてて無機質な声に感じます。僕はそういう雰囲気が元々好きなので、自分で歌うときもその感情を抑えた表現の仕方をうまくを出せるようにしたいと思ってます。LMYKさんの「0(zero)」も歌声は肉声なんですが、僕が好きな雰囲気に近いので、とても大好きな曲なんです。
LMYK : ありがとうございます。確かに少し淡々した雰囲気になるようレコーディングをしました。だからこそライブでパフォーマンスするときは、感情的に表現をして、また違った雰囲気を魅せることができる曲になっています。
ササノ : 生で聴くのがいっそう楽しみになるような楽曲ですね。
音楽のもつ、暖かくて神秘的なエネルギーを共有したい
――LMYKさんは今年10月から「FM802 MINAMI WHEEL 2021」や「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2021」での出演を控えていて、そこが観客の前での初めてのパフォーマンスとなります。いまの心境はどうですか?
LMYK : とても楽しみです。リハを終えたばかりなのですが、早くみなさんの前で歌いたいと思っています。ニューヨークで音楽をしているときは、人前で弾き語りなどをして演奏していたんですけど、LMYKとしては初めてのライブになりますね。
――ライブやフェスなど、誰かの前で曲を演奏するときに、お2人は何を感じていますか?
LMYK : 同じ場所、同じ空気のなかで多くの人と1つになることは、神秘的でどこか暖かい場所のように感じます。その場にいる人全員で音楽の持つエネルギーを共有するのが、今から楽しみです。
ササノ : 僕はソロでワンマンライブやフェスに参加したことはまだないのですが、見てくれている人たちとその場を共有する感覚はすごく楽しくて、大好きですね。
――これからお2人の音楽がさらに多くの人に届くことを楽しみにしています。最後にこの記事を読んでいる読者に向けてメッセージをお願いします。
ササノ : 「空と虚」はヴァニタスの手記から影響を受けて制作したミニアルバムなんですが、原作を知らない方にも聞いていただけると嬉しいです。そして、曲が好きだなと思っていただけたら、原作も絶対に好きになると思うので、僕の曲を通じてそちらも興味を持ってくれたらなと思います。
LMYK : ヴァニタスの手記は、”人間性”や”1人であること”という、誰もが共感するテーマが根底にある作品です。このテーマはわたしが音楽活動をしていくうえでも大事にしていて、エンディング曲の「0(zero)」には特にその部分を取り入れて制作しました。曲の世界観と原作の世界観のつながりを感じていただけると嬉しいです。
LMYK
オフィシャルサイト
https://www.lmyk.jp/
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https://www.instagram.com/lmykmusic/
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<リリース情報>
『0 (zero)』
2021年8月11日(水)
ダウンロード&ストリーミングはこちら:https://erj.lnk.to/XgFc4QWN
2011年8月27日(金)
リミックスEP
ダウンロード&ストリーミングはこちら:https://erj.lnk.to/LGwnbU
2021年9月8日(水)
CD(期間限定生産盤)リリース
価格:1,200円(税抜価格)
仕様:アニメ描き下ろしトールサイズデジパック【期間生産限定盤】
収録曲:
M1. 0 (zero) [TVアニメ「ヴァニタスの手記」エンディングテーマ]
M2. 0 (zero) -English version
M3. Unity [映画「羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来」日本語吹替版主題歌]
CD(期間限定生産盤)予約はこちら:https://erj.lnk.to/WmbTQM
ササノマリイ
オフィシャルサイト
https://sasanomaly.com/
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