韻シストのフロントマンとして活躍するBASIが4月5日に約2年半ぶりとなるソロアルバム 『LOVEBUM』をリリースした。そして、6月3日にはリリースパーティ『BASI “LOVEBUM” Release Party! -OSAKA-』の開催が決定。19年という長いキャリアを経て、彼は“日常の愛”を歌いたくなったという。恋愛、友愛、家族愛、音楽愛、愛着と様々な愛を切り取った今作はどのような想いで生まれたのか聞いてきた。
Photography_HIROYUKI DOZONO
text_真貝聡
Edit_司馬ゆいか
音楽を聴く時に尖った言葉は要らないなって
――『LOVEBUM』があまりに良くて、何度も聴かせていただいてます!
BASI : ありがとうございます。
――タイトルの『LOVEBUM』はLOVE+ALBUMってことですか?
BASI : そうですね。LOVEとALBUMのライミングであったり、造語として面白いからつけたっていうのが1点。あとはBUM=お尻という意味で、「僕の場合は愛についてHIPに表現するよ」って意味でつけました。僕としては、そっちが一番伝えたいことですね。
BUMってお尻って意味がある。サッコンにはお尻についてのアルバム?って聞かれてそんなわけないって答えたけど(笑)、ようは言葉尻。言葉尻に愛を込めたのがLOVEBUM。MCとしてすごくいい名前を思いついたって思う。
— BASI (@BASIC_MUSIC_) 2017年4月26日
――どんなことをテーマにして、アルバムを作ったんでしょう?
BASI : 日常ですかね。日常が僕にとってのHIPHOPなので、そこは変わらず表現していこうと。あとはリリックを読み返したときに、“愛”ってワードが多かったんですよね。それは意識していたわけじゃなくて、自然に書いていたので愛が大きなコンセプトだったんだなって。このアルバムでは恋愛、友愛、音楽愛、愛着とか日常の中にある愛を歌っています。
――そもそも、HIPHOPは劣等感や権力に対して反発する音楽だったと思うんです。BASIさんも音楽でフラストレーションを表現していた時期はあったんですか?
BASI : 20年活動していく中で、10年以上はそういうフラストレーションや劣等感をぶつける感じやったと思いますけどね。ソロをやり始めた頃もそういう気持ちでいたし。
――そこから日常の愛を歌うようになったのはどうして?
BASI : 車に乗ってて楽しい会話をしている時に流れてきた、どぎついワードに「え?」ってなったりとか、ご飯を食べている時に箸が止まってたりして、気づいたんですよね……音楽を聴く時に尖った言葉は要らないなって。EVISBEATSと一緒に作った『あなたには』とか『Mellow』に入ってる『果てない』ぐらいから、なんとなく自分のそういう尖っているものというか、感情を置きたいなと思いましたね。
――フラストレーションを表現していた時期から、日常の愛を提示する音楽に変化させたことによって、BASIさん自身はどう変わりました?
BASI : 例えばKenKenと一緒のステージ立つとね、「俺ってこんな小さいことにこだわっていたのか?」って思うんですよね。KenKenの音楽に対する想いとか、プレイが自分の抱えている悩みや不安を一掃してくれるというか。Charaさんもそうですし、PUSHIMさんもそうですし、同じステージに立った時に「この感覚って何やろうな……」って、全然違う次元へ行ってるんですよね。間近でそういう経験をさせてもらったり、見させてもらって「こういう音楽が本当に素晴らしいし、必要や」って気づけるようになってきたって感じですかね、変わったことといえば。
Charaさんは愛という大きなテーマを何年もかけて挑み続けてる
――アルバムの制作中はCharaさんをずっと聴かれていたそうですね。
BASI : 普通にCharaさんが好きやし、ホンマにどこの国の音楽を聴いているのか分からなくなるというか、毎曲毎曲で同じものがないんですよね。何にも比べられへんし、声を出しただけで自分の部屋がちょっとオシャレに見えたり、言葉に出来ない部分が好きなんすよね。聴いているだけでワクワクしてきたり、リリックを書きたくなってきたり。
――衝動を掻き立てられるんですね。
BASI : そうなんすよ。昔、ジャッキー・チェンの映画を観た後に、自分も部屋で暴れまわってジャッキーになれた気分になる……みたいな。Charaさんの音楽にもそういうパワーをもらうことができるので、ずっと部屋でループして聴いてましたね。
――今作のインタビューで「最終的にラッパーとして愛の域まで辿り着きたい」と話してましたけど、あれはどういう意味ですか?
BASI : それはね、「こういうことです」って言えないし、そもそも到達してないというか。このアルバムを出したから、そうなれるんやろうなって最初から全然思ってなくて。というのも、Charaさんは愛という大きなテーマを何十年もかけて挑み続けてるわけじゃないですか。「愛とは、イコールこういうこと」って答えが無いと思うんですよ。ずっと挑戦していくし、ずっとやっていくものだと思うので。
――なるほど。
BASI : 僕もMCとして、愛について考えて発言する域に着手しただけで、何かを得られるまではまだまだ。会えてない人たちや、行けてない街もたくさんあるので、そこへ行ってから知るんやろうなって。求めてる答えと違うかもしれないですけど。
――その通りだと思いました。辿り着こうとしているんですもんね。
BASI : そうですね、これからが楽しみではあります。
キャリアを積んできたBASIが思う、本当に必要なものとは?
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