映画『ONE PIECE FILM GOLD』の主題歌に大抜擢されるなど、広く注目を集めるGLIM SPANKY。GLIMとは「ケルト文化における暗く深い森を照らす灯火」、SPANKYとは「平手打ち」。幻想的な面と、音楽業界に一撃食らわせてやるという攻撃的な面を合わせ持つ2人組ユニットだ。
今回リリースする2ndアルバム『Next One』で松尾レミ(Vo, Gt)は、歌い手、作詞家としての大衆性を獲得し、亀本寛貴(Gt)は若手随一のギタリストぶりをいかんなく発揮。熱く語り倒してくれたこの新作インタビューから、ロックの未来を担う彼らの音楽が、人の心を動かす理由を感じてもらえればと思う。
インタビュー・文=秋摩竜太郎
音楽が好きだから、もう歌うしかない
ーー僕は最近のバンドに対して、演奏力は高いけどワクワクしないと感じることもあるんです。きっとそれは、売れるために曲を作るとか、音楽が目的ではなく手段になってしまっているように見えるから。もちろんプロである以上多くの人へ届ける意識は必要ですが、その前に、ただ好きなロックを鳴らしたいという欲求を見せてくれたほうがリスナーとして気持ち良い。で、GLIM SPANKYからはそういう欲求を感じるのですが、実際どうですか?
松尾:それはありますね。もうそれだけで生きてるというか。どうしようもなく好きなんだもんっていう(笑)。音楽が好きだから、もう歌うしかない。だから音楽がなくなったらどうしよう……?
亀本:マジでやばいよね。
松尾:私たちが売れたいと思うのも、例えばミック・ジャガーに憧れたからなんです。そういう人たちが10代の、ロックなんてあまり理解していなかった自分に希望を与えてくれた。ジャック・ホワイトがあんな強烈なギター・ソロを世に放った時、私はぶっ飛んだわけですよ。一気に恋に落ちて、「この人こんなバカなギター弾いてるけど、めちゃくちゃインテリで世界を変えようとしてんだな、じゃあ私もなんかやりたいな」と思った。小さな島国の何も分からない女の子に希望を与えてくれた、そんなロック・スターに私もなりたいと思った。彼らと同じように、どこかの国の小さな女の子に夢や希望を与えたいって思いますよね。それが一番。だから有名になりたい。だから届けたいんです。
亀本:僕はファッションとかあまり興味ないですけど、とりあえずノエル・ギャラガーみたいな服を着たいとか、そういうのだけで服を選んでます。あとはジョー・ペリーの弾き姿カッコ良いなあ、自分もギターの位置下げよう、みたいな。そういう、純粋な憧れだけでやってるところはありますね。
松尾:好きだから続けていられる。それに本気で好きだからこそ、その本気が伝わると思うんです。
ーーなるほど。近況を振り返ると、最近少しずつフェスに出だしていますが、気づいたことは何ですか?
松尾:フェスはお客さんとして観に行ったことが一切なかったので、こうやって楽しむんだってことを知ったという感じですね(笑)。
亀本:マジか、そこまでじゃないでしょ?(笑)
松尾:本当に行ったことないもん。フェスありきのバンドにはなりたくないというのがありますけど、その中でもフェスでどこを重点的に観せたほうがいいのかとか、気付いたことは多いです。私が観れた中で、特にすごいと思ったのはTOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAです。大阪のMETROCKで自分たちが準備している時、反対側でやってたんですけど……。
亀本:それ観たって言わないよ!
ーー聴こえた?(笑)
松尾:そう(笑)、リードボーカルがいるわけじゃないし、どういう風にフェスで盛り上がるのか分からなかったんですけど、めちゃくちゃ熱くて、言葉がなくても音だけで情熱が伝わるライブをされていて。合間のMCだったり、お客さんの煽り方だったり、そういうものがすごく音楽的でとても感動しました。
ーーあと今年6月にドレスコーズと2マン公演を開催しましたが、こちらも学んだことが多かったのではないですか?
松尾:アンコールで志磨(遼平)さんたちと一緒に「ジャーニー」をセッションしたんですけど、この曲は2008年、毛皮のマリーズが世間をロックンロールでひっくり返すんじゃないかとじわじわ来ていた時にリリースされた曲で、歌詞も「今に見てろよ!」という圧があって。彼らは少なからず日本のロックを動かしたと思うんですよ。で、今GLIM SPANKYもそういう目標を持ってやっていて。ロックで時代を変えるという同じ志を持つ私たちが共演するというのが、とても熱い気持ちになりました。あと志磨さんは私と違ってギターを持っていないので、自分とは違うからこそ勉強になりました。どこでお客さんを睨むとか(笑)、どこでマイクを回すとか。ひとつひとつの動きに、憧れのロック・スターの姿が重なるんですよね。これがロックを理解している表現者なんだ、と。
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