みんな!しばたに元気をあげて!!
チューニングの合間でなんとなく良いコードで良いアルペジオを弾いてしまい、それに合わせたかのようになんだかいいこと言いはじめそうなよいムードの照明が入り、この姿を見てはじめて、「ああ、ふつーにしているとほんと天才然としているんだなこやまさんは」と感じた。天才すぎて、でも天才が天才ぶってるのを恥ずかしいと思うタイプで、おもしろいことを天才的にやってしまう人なのだろうと勝手に思った。しかしどんなに雰囲気が良くてもMCのネタはない。「どうしよ・・・歌うわ。」このなにげない一言にしびれたファンは多いはず。「歌うわ」の一言に、彼が歌に込める気持ちや時間や考えすべてがこめられている気がした。
そうして「一番やさしいゆったりした曲」と紹介しながら「ひっこし!ひっこし!さっさとひっこし!」の懐かしいフレーズをぎゃんぎゃんばりばりぶち鳴らす激しいナンバー、『ZIKKA』を披露。
さらに雰囲気を祭りに変える9曲目『流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い』と続く。
と、しばたが卓越した躍動感を見せるも、途中で急にしゃがみこみ、演奏中止に!?
なんと、しばたがおなか痛くなってしまった!
みんな応援して!元気あげて!
との声かけに元気をあげようとしたら、しばた、2秒で復活。ズコーー。
10曲目は90s〜ゼロ年代のロックを感じさせる『ウェイウェイ大学生』。
鳥貴族でサワーで乾杯した後スポッチャでオールナイトってどこの大学生もそんな青春になりがち。そしてその思い出を一生引きずりがち。
しかしここにはそんなずっと騒いでるウェイウェイ大学生よりもリアルが充実しているアーティストと観客がいる!そしてこのライブの記憶も一生ひきずりがちになっていくのだろう。全員踊れ!
11曲目は『ネコ飼いたい』。
打首獄門同好会がこの曲に対抗してネコを飼ったあとネコ中心生活を生き甲斐にした感動的な曲を演奏したが、ネコを飼う前の「飼いたいな」というわくわく感もたまらない。「ネコ!ネコ!ネコ飼いたい!」と歌いながら、会場一同大暴れである。ネコ飼いたがってるエビの集まりである。グループ魂「有名になりたい」「アイス食べたい」「沖縄行きたい」みたいなストレートな要求を、喉を鳴らすようにギターをガシャガシャして歌い上げる。ネーコー飼ーいーたーい・・・の部分ではしっとりと大合唱。踊り狂っていた観客も片手を横に振りながらのる。曲のラストで「Yeah・・・」とつぶやくこやまに思わず笑いがこぼれる。
ここでMCタイム。
あいうえお作文で生計をたてていた(?)というしばたのお得意あいうえお作文を、ツアーファイナルにかけて「ファイナル」で作ってもらう。
ふ・・・風呂あがりにお香たいて
あ・・・暑いとこでも寒いとこでもお香たいて
い・・・いつでもどこでもお香たく
な・・・なんの話?
る・・・ルーティーン。ヤバイTシャツ屋さんのルーティーン。
即興で仕上げたにしてはスッと出てくるところがさすがはあいうえお作文で生計をたてていただけあるが、お香たきすぎである。
さあ、お楽しみ虹のゲートで『スプラッピ スプラッパ』の時間だよ!
NHKにきちんと申請してカヴァーしたというこの曲は、完売したタワレコ限定シングルにもきちんと収録されている。童心にかえった観客はハードにアレンジされたスプラッピ スプラッパにあわせて円をつくり、回る。アーチをつくり、周り、元通りになり、また曲の大事なところに入ると円をつくる。この連帯感は体育会系である。両足とも靴をなくした観客がいたり、回るスピードがとんでもなくてけんかしたりなきべそかいてる場合ではない虹のゲートはメンバーと観客の心を童心のままひとつにした。
最後の曲、『Tank-top of the world』は「バンドマンて、ライブ中、いけんのかー!ってよく言うけどどこいくん」という定番のせりふに、渋谷にちなんで109に「いけんのか」する我々。演奏の盛り上がりは最高潮。ダイブ客の人数をカウントしていたのだが、あまりに多くて、25人目をカウントしたあたりで人波のうねりは最高潮に達し、ぜんぜんわからなくなった。何人ものダイバーが脱落し、踊らずにいられないリズムで鍛えることを強制される。
(『Tank-top of The world』MV[インディーズ版])
『ヤバイT!シャツ屋さん!』
全員が退場したのち、アンコールまちの手拍子が独特であった。
だれからともなくはじまった、「ヤバイT!シャツ屋さん!」のコール。
短い人生のうち、アンコールの声かけで形容詞つき名詞をきけることがあるなんて…しかし会場のみんなは何かを共通して期待しだしているようで、全員の轟くばかりの「ヤバイT!シャツ屋さん!」コールに身を浸していると、だんだん「しゃ!しゃ!しゃ!」と聴こえてくるのだ。
ただの空耳だと思って片づけるのもいい。しかし彼らがこの後心から望んでいるものは、手に取るようにわかる。
アンコール1曲目は新曲、4月5日水曜日に発売予定の4thシングルより『ヤバみ』。
右手の人差し指をたててIKKOさんよりも倍速で振りながら「ヤバみ〜〜〜」と叫ぶことで、たとえヤバTがそのヤバさ故に幕府から弾圧されたとしても、ヤバTの舎弟「隠れヤバシタン(※筆者の思いつきの造語です)」であることがすぐにわかるイクトゥスとなりうるであろう。ヤバTらしいノリノリな曲調に観客はよどみなく流されていった。
そしてアンコール2曲目、『あつまれ!パーティーピーポー』!
(『あつまれ!パーティーピーポー』MV[インディーズ版]。オフィシャルサイトによれば、「音源に合わせてちょけてる動画」とのこと……)
先ほど「メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されている感じの曲」という曲があったが、どんなアーティストでもアルバムの3曲目というのは7曲目に次ぎやたらに心に響いたり売れてたりシングルカットされている曲が収録されがち。
2016年の11月2日にリリースされたヤバTの1stフルアルバム「We love Tank-top」の3曲目は、この『あつまれ!パーティーピーポー』だ。
ヤバイTシャツ屋さんてどんなひとたち?ときかれたらまずこれを聴かせればばっちりな1曲。
この曲、はじまりに聴き手の期待やあばれたい気持ちを最大限に喚起する「しゃ!しゃ!しゃしゃしゃ!」という声かけから爆発していくのである。
アンコール時の「シャツ屋さん!」が「しゃしゃしゃ!」に聴こえた気がしたのは、この曲を期待する気持ちだけが先に伝わってしまったからだったとでもいうのだろうか・・・!? ツアーファイナルの最後の最後を飾るのにふさわしいみんなでわいわい聴きたいハイテンションノリである。
小鳥でもわかる、ヤバTのすすめ
ところで、「しゃしゃしゃ!」とはshirtsのシャである。シャツ。
この「しゃ!しゃ!しゃしゃしゃ!」を自宅で初めて聴いたときに、筆者が飼っている小鳥がふだんはぼんやりしているくせにこれにだけ猛烈に反応し、しゃべる鳥ではないのに必死に真似して鳴いていた。
『あつまれ!パーティーピーポー』の良さのひとつは、鳥でもわかる入りやすさと乗らずにいられない絶妙なリズムなのである。
しかも「平日はちゃんと働いているパリピえらい」と肯定する包容力。
ウェイウェイは炎上してほしいけど(笑)きちんと働いたご褒美にパリピする、休暇をのびのび健康的に過ごすパリピにはますます頑張ってほしい!
そしてわれわれは応援されている気分になる。自分にひきつけて考えざるをえなくなる。自分と関連し自分を肯定してくれる存在は愛さずにはいられないのである。
わかりやすさで誘い込み、気づいたら渦の中枢にまで巻き込みつくされている。ヤバTのヤバみの核心はここにある。
この曲を聴いたらもうヤバTのことが忘れられなくなるであろう。そしてライブの喧噪のなかへ、ヤバイTシャツ屋さんのつくりだす「渦」のなかへ、俺も混ぜてくれ!とうっかり思ってしまうに違いない。
酒飲めへんでも、踊れへんくても、混ざらずにはいられない魅力があるから。
(ヤバイTシャツ屋さん1st full album『We love Tank-tp』トレーラー。ヤバイCDです!)
2017.1.31 ヤバイTシャツ屋さん『”We Love Tank-top” TOUR 2016-2017』@渋谷TSUTAYA O-WEST セットリスト
1. We love Tank-top
2. 貴志駅周辺なんもない
3. 無線LANばり便利
4. DQNの車のミラーのところによくぶら下がってる大麻の形したやつ
5. L・O・V・E タオル
6. 天王寺に住んでる女の子
7. メロコアバンドのアルバムの3曲目ぐらいによく収録されている感じの曲
8. ZIKKA
9. 流行りのバンドのボーカルの男みんな声高い
10. ウェイウェイ大学生
11. ネコ飼いたい
12. スプラッピ スプラッパ
13. Tank-top of the world
En1. ヤバみ(新曲)
En2. あつまれ!パーティーピーポー
Text_Yui Usui
Edit_Sotaro Yamada
Photo_Kaori Oike
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