“みんな”が主役の夢の国。WANIMA式アミューズメントパーク
WANIMAが2018年4月21日と22日、ライブツアー『Everybody!! Tour』の幕張メッセ2days公演を開催した。本公演は、メジャー1stフルアルバム『Everybody!!』をともない2月からはじまった全国197公演(+ツアーファイナルのドーム2公演)のツアー。幕張メッセ2daysでは2日間で計4万5千人を動員。本記事では、22日のライブをレポートする。
Text_Sotaro Yamada
夢の国 ワニマーランドへようこそ!
満員の幕張メッセ。中心には360°見渡せるセンターステージと四方向に巨大モニターが設置。開演前には『アナと雪の女王』の挿入歌『雪だるまつくろう』などが流れ、メンバー登場時には運動会の音楽としておなじみの『クラシコ・ポスト』が流れる。遊び心満載の演出で、「とにかくみんなに楽しんでほしい!」というWANIMAの気持ちが伝わってくる。
KENTA(Vo. & Ba.)、KO-SHIN(Gt. & Cho.)、FUJI(Dr. & Cho.)の3人が登場すると、2万人以上のオーディエンスで埋まった大ホールに割れるような大歓声が鳴り響いた。オーディエンスの多さと一体感はサッカーの代表選を思わせる。現在の日本でこんなステージを実現できる若手バンドは他には中々いないだろう。
ライブは、『JUICE UP!!のテーマ』『OLE!!』といったアルバム『Everybody!!』の流れで“開催”された。「我々がキャスト、みなさんがゲスト、夢の国へようこそ!」というKENTAのMCに表れているように、WANIMAのライブは、非日常的なエンタメ空間を徹底的に演出している。もちろん楽曲は良い。しかも盛り上がりやすい楽曲が多い。しかしそれだけでなく、演奏しながら踊り(KENTA)、時に奇声をあげ(KO-SHIN)、モノマネまでやり(FUJI)、モニターに映されれば変顔をする(3人とも)。
MCはコントのようだし、隙あらば下ネタを挟み込む姿勢もWANIMAらしい。そしてかなり攻めた下ネタを連発させているのにまったくいやらしさがないのも良い。KENTAの下ネタには湿っぽさがなく、さわやかで明るい。幕張メッセでそのようなMCをして喜ぶロックバンドはもちろん他にいないわけだが、KENTAの手にかかると、きわどいフレーズもなぜか楽しさに直変換されてしまう。ディズニーランドならぬワニマーランド(WANIMA LAND)の中では、下ネタでさえ夢の国のアトラクションになるわけだ。魔法。
『CHEEKY』や『BIG UP』などで盛り上がると、FUJIがモノマネをしながら『アナと雪の女王』あらため『デブとヒゲの女王』をみんなでコール&レスポンスしてショー的な面白さも提供する。初の映画主題歌となる新曲『Drive』や、「幕張のテーマソング(by KENTA)」である『Japanese Pride』や『THANX』で大合唱を起こし、かと思えば、『雨あがり』や『ここから』をアコースティックな演奏で聴かせる。WANIMAの代名詞となった『ともに』、上空から粉雪が舞い、みんなのスマホがきらめく『SNOW』、虹色のレーザーが飛び交う『オドルヨル』、そして「好きにやって 駄目なら戻って来い」というメッセージが印象的な『シグナル』などを続け、大盛り上がりで本編は終わった。
WANIMA『シグナル』MV。ライブを観たことがない人も、このMVを見ると少し雰囲気がつかめるのでは
アンコールを誘発するオリジナルの音響とVTRのクオリティが、これまた非常に高い。VTRで、「エビって言ってるけど、エビの気持ちがわからねえええ」と悩むKO-SHINのために「エビの気持ち選手権」なる企画が開催され、エビぞり対決、利きエビ対決、バランス対決などバラエティ番組顔負けの企画で爆笑を引き起こす。アンコール前の時間でさえ、ワニマーランドのこだわりは徹底している。
アンコールではもう一つの新曲『りんどう』を披露。WANIMAの故郷・熊本に咲くりんどうの花の力強さにみんなの姿を重ねた新曲は、しっとりしたタイプの曲。またライブ恒例となったリクエストコーナーではフロアから2曲ものリクエストを受け付け、『HOPES』と『For you』を演奏。特大のキャノン砲から銀テープが発射され、キラキラと輝く星の下で、WANIMAとみんなのエビバデは終演となった。
WANIMAのライブはすば抜けて楽しい。その理由は?
シンプルな結論だが、WANIMAのライブは楽しい。おそらく日本の他のどのバンドと比べても楽しい。なぜか? 楽曲の良さ、演奏の良さ、演出や巨大なセット等の大道具にカメラワーク……などなど色々理由はあるだろうが、その第一の要因は、よく言われるように、やはりステージとフロアの近さにあるという気がする。
いまのWANIMAは、ものすごい勢いでスターへの階段を駆け上がっている。初ワンマンがさいたまスーパーアリーナ、紅白歌合戦初出場、メジャー1stフルアルバムは当然のようにオリコン1位を獲得、TVCMをはじめとした各種メディア出演と、全国各地あらゆる層にWANIMAの名前は浸透しつつある。
それほどの「有名人」になっても、彼らの姿勢はまったく変わらない。つまり、アーティスト:客という関係よりもむしろ、友達と喋っているようなスタンスでライブやMCをしている。オーディエンスはWANIMAのライブを観て、KENTA、KO-SHIN、FUJIの3人と一緒に遊んでいるような感覚になる。
ステージとフロアの心理的な境界が限りなくゼロに近い。WANIMAの言葉を借りると「離れるのは距離だけ(『THANX』)」で、心理的には「ともに」ということだろうか。
WANIMAはスターになっても全然カッコつけない。というかおそらく、スターになったつもりなど全然ないのだろう。「みんな」をふくめて始めてWANIMAはWANIMAになる。KENTAが常々口にするように、「我々とみなさんでWANIMA」なのだ。この距離感の近さは非常に現代的だし、ロックスターの新しいモデルと言えるかもしれない。
「国民的ロックバンド」WANIMAはロックに陽を取り戻す
近年の日本のロックシーンは、傾向として、どちらかと言えば「陰」の側面が目立っていたように思う。歌詞もサウンドも内省的なものが多かった。そうした流れからするとWANIMAはカウンターだ。WANIMAがロックに陽を取り戻す。彼らは常に笑っている。笑顔はWANIMAのトレードマークになった。しかし当たり前のことだが、WANIMAはノーテンキだから笑っているのではない。
この日のMCにあったように、WANIMAは「お客さんが3人くらいのライブハウスで育ってきた」のであり、ブレイクまでに10年ほどの下積みがあった。人生ではうまくいかないことの方が多い。しかも人はいつか死ぬ。だからこそ、「生きとるうちになんでも好きにやれよ!」とKENTAは言う。弾けるような笑顔で。
その笑顔の奥には、長い時間と努力の蓄積と、様々な後悔や悔しさや傷がある。だからKENTAの言葉は信用できる。
ツアーファイナルは8月25・26日!
本ツアーのファイナルは、8月25日と26日にメットライフドームで行われる。同会場初のアリーナスタンディングで2日間開催となる、WANIMA史上初のドームワンマン公演。このラスト2daysで7万人を動員する予定で、ツアー全体では20万人を動員する計算になる。
「国民的ロックバンド」という言葉がふさわしいバンドはしばらくいなかったが、破竹の勢いで人気を伸ばしつつあるWANIMAが、どうやら久々にその座に着きそうだ。
WANIMA Everybody!! Tour Final at メットライフドーム Trailer
セットリスト(『Everybody!! Tour』@幕張メッセ 2018年4月22日)
SE. JUICE UP!!のテーマ
1. OLE!!
2.いいから
3.花火
4. CHEEKY
5.つづくもの
6. BIG UP
7. Drive
8. Japanese Pride
9. THANX
10.雨あがり
11.昨日の歌
12.ここから
13.ともに
14.ANCHOR
15.SNOW
16.ヒューマン
17.オドルヨル
18.サブマリン
19.シグナル
20. Everybody!!
En 1.リベンジ
En 2. HOPES
En 3.りんどう
En 4. For you
WANIMA 公式サイト
SHARE
Written by