ビカビカに光る初代ゲームボーイとMac、PCDJ!TORIENAが格好良い
19時20分。大画面のスクリーンをフル活用、アニメーションと音楽の両面で会場を魅了したみみめめMIMIに次いでWWW会場に登場したのはチップチューン・アーティストのTORIENA!
(m7kenji × TORIENA/KANDI PIXEL Z MUSIC VIDEO)
ピンクに染め上げた髪と、GYFTとのコラボによって発表されたデビルCAP、NIKEのジャージ、スニーカーという服装が特徴的で、非常にファッショナブルで、何はともあれまずその出で立ちに目を奪われてしまった。
TraktorのPCDJ、MacBook、そして暗闇でも光るように、ボタンや画面が改造された二台の初代ゲームボーイを持ち込み、セッティング。
暗闇の中、ビカビカに光る初代ゲームボーイとMac、PCDJの組み合わせはヴィジュアルだけを取り上げても相当独特でフューチャー感がある。
ゲームボーイもまさか発売から何十年も経ってから、このような使われ方をするとは夢にも思っていなかっただろう。
余談だが、この日彼女が履いているNIKEのスニーカーは映画『Back to the Future』シリーズで主人公・マーティが履く自動靴紐調整シューズにそっくりだった。マイケル・J・フォックスも履いた、あの超レアなNIKE Magなんじゃないかと思うくらいだった。「ひょっとして、Back to the Future好きなんですか?」と何回聞きたくなったか分からなかったが、そんな時間は当然無かったし、そもそもたまたまカラーリングが似ているだけだったのかもしれない。話が完全に逸れてしまった。
高速BPMのハードコア・テクノを次々繰り出しつつも、曲中で更にBPMを上げたり中低音域を強調したり、逆に音量を下げたりというTORIENAのDJプレイにはともすればひたすらアゲてるだけに見えそうながらきちんとメリハリが存在している。曲を単にかけるのではなく細かくつまみを調整し、ゲームボーイによる演奏も行うことでループが中心の曲でも、そのループの中に多彩な表情が生まれて来る。
TORIENA自身もDJプレイを行いながら、曲の展開に合わせて次々と表情を変える。アップテンポで、ポップなシンセのフレーズに喜びに満ちたような表情を浮かべたかと思えば、ブレイクに合わせて顔つきを一変させて頭を振り、転調に合わせて決意を固めるような顔をする。人を圧倒するオーラを放ち、ピンクの髪を振回すTORIENAの姿はまるでコートニー・ラブのようだった。表情の変化と、曲の展開を合わせて目にすることで曲の中に豊かなストーリーを見出すことが出来るようでもある。
「ゲーム」の範疇から飛び出した、チップチューン
この日、特に会場を沸かせたのが『来来点心』、そして、Yunomi feat. TORIENAの『大江戸コントローラー』!
ゲームボーイの音とは思えないほど図太く、硬質でWWWの音響システムと良くマッチする豊かなテクノ・サウンドと、アンニュイなTORIENAのボーカルは相性が良く、『来来点心』ではガンガンに頭を振る客が続出。『大江戸コントローラー』のエキゾチックさを感じさせるイントロでは皆が揃って手を振り、会場に強い一体感が生まれた。
チップチューンと言うと、大抵の人は「ゲーム音楽」っぽいと感じるかもしれない。
しかし、TORIENAのパフォーマンスを見て感じたのはチップチューンは「ゲーム音楽」という枠を取り外して楽しむことが出来る、ガバやハッピーハードコアと同じ「テクノ」であるということだ。
チップチューンの普及に「ゲーム」が果たした役割は大きいが、いまやチップチューンは独自の進化をし、電子音楽の中の一ジャンルとして定着し始めている。
「ゲーム」の範疇から飛び出した、チップチューンの魅力をTORIENAのパフォーマンスを見ることで味わうことが出来た。
チップチューンにレトロなイメージを抱いている人が居たら、是非一度彼女の音楽を体験して欲しい。そのような印象が吹き飛ばされるはずだ。
「ミクストメディア」を名乗る、バンドじゃないもん!が主宰した『バンもん!Fes. Winter 2016~雪降る夜にフェスして~』東京公演。
ジャンルの枠に囚われないバンドじゃないもん!のフィロソフィーに共鳴するように、実験精神とポップネスに溢れたアーティストが集結した同イベントは、ジャンルの壁を破壊し、独自の発展を遂げる表現の可能性を感じさせる刺激的な一夜だった。
TEXT_KUJU ARATO
テンテンコ / 1990年8月27日生まれ。北海道出身。2016年にTOY’S FACTORY/MIYA TERRACEとマネージメント契約。2016年8月にファーストデジタルシングル『放課後シンパシー』をリリース。
TORIENA / チップチューンガール。MADMILKY RECORDS主宰。サウンド(作詞・作曲・編曲)&アート(イラスト・デザイン)を全てセルフプロデュースで行っている。
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