ササノマリイ、次世代J-POPの仕掛け人――彼の魅力とは？

注目ポイント

ササノマリイの魅力はたくさんあるが、本記事では3つに絞って紹介する。

1. 美しいメロディー

まずはメロディーの良さ。耳に残りやすい美しいメロディーが楽曲の大きな特徴のひとつ。ボカロ出身のアーティストはロックに影響を受けていることが多いが、ササノマリイがルーツにあげるのはbermei.inazawaや新居昭乃といった、どちらかといえば耽美的で内省的なアーティスト。どことなくノスタルジーを感じさせる幻想的なメロディーは、彼らの音楽的なDNAを受け継いでいると言えそうだ。

2. 優しく包み込むような歌声と、切実で強烈な歌詞のギャップ

美しいメロディーを引き立たせるのが、ササノマリイの優しい歌声。彼の歌声には何かを押し付けるような強引さがまったくなく、透明感と、独特の温かみを感じさせる。
この声の魅力は米津玄師に通底するものがあるように思う。ざっくりと言えば、米津玄師の声にさらに温かみを足すとササノマリイになる、という感じ。

そしてこの優しい歌声は、彼の激しい歌詞によってさらに際立つ。
『戯言スピーカー』は、次のように歌いだされる。

詰め込んだ　感情を
ひとつ　ひとつ　殺して
生み出した　笑顔は
嫌い　嫌い　の　涙。
（ササノマリイ『戯言スピーカー』より）

「感情を」「殺して」「笑顔」を作りはするが、その「笑顔」は、繰り返されることで強調される「嫌い」という強い感情を反映したものであり、「涙」そのものである。

この歌詞が暗示するものはたくさんある。
心で泣いて顔で笑うという優しい性格、感情を殺さざるを得なかった悲しい状況、周囲への気遣い、世界への絶望、絶望を抱えながらも生きていく強さ、そうした絶望や強さをむき出しにはせず「嫌い嫌いの涙」と表現するキュートさ、などなど。こうした様々な感情が、シンプルな短い言葉に詰め込まれているわけだ。

ササノマリイ自身は、様々なメディアでこの『戯言スピーカー』を「あまり何も考えずに短時間で作った」と話している。無意識が自然に浮かび上がってきたのだろうか、この曲には彼の本質が表れているように思う。

そう仮定してササノマリイの楽曲を見ていくと、彼の歌声から感じる「優しさ」が単なるうわべだけの優しさだけでなく、幾層もの悲しみが積もった上での優しさであることに思い至るだろう。だからこそ彼の歌声は多くの人の心に刺さるのだ。

3. かわいくておしゃれなMV

ササノマリイのMVはいつもかわいくておしゃれ。
前述した『戯言スピーカー』のMVでは、手作りのオリジナルマッチ箱100個を使ったストップモーションやロストスコープによるアニメーションが話題になった。MVはチェコでの修行経験がある映像クリエイター・アニメーターの牧野淳が制作しており、チェコ雑貨の独特なかわいさが反映されている。
このマッチ箱、「閉じこもった心」を表現していて、それらが集まってひとつの世界を形成しているというもの。こうしたMVからは、ササノマリイというアーティストの、人々の孤独な心に対する限りない優しさと肯定が読み取れる。

また、『共感覚おばけ』のMVは海外からの評価も高く、動画サイトvimeoのstaff picks、アヌシー国際アニメーション映画祭 2016 委託作品部門（フランス）、Anifilm（チェコ）、Golden Kuker-Sofia（ブルガリア）など数々の映像・アニメーションfestivalで入賞している。

（ササノマリイ『共感覚おばけ』MV）

ササノマリイ『game of life』EP

さて、そんな魅力に溢れるササノマリイが、6/14に新EP『game of life』をリリースする。
リード曲には、ぼくのりりっくのぼうよみをフィーチャリングに迎えた『game of life feat. ぼくのりりっくのぼうよみ』。ササノマリイとぼくりり、どちらのファンにとっても待望のコラボが実現した。

（ササノマリイ『game of life feat. ぼくのりりっくのぼうよみ』MV）

この曲でぼくりりは、『戯言スピーカー』の歌詞「君の言葉が　私を殺すの」を引用するなど、改めてササノマリイへの敬意を表しており、二人の過去を知っていると胸が熱くなる。

まとめ

ぼくりりやDAOKOなど、新時代のJ-POPを担うアーティストの曲を手がけ、自身もクオリティの高い曲を連発しているササノマリイ。その切実な歌詞、美しいメロディー、優しい歌声は、多くのリスナーの心を掴みつつある。ぼくりりとのフィーチャリングをはじめとしたEPでさらに注目されること間違いなし。この次世代J-POPの仕掛け人、ササノマリイを、今のうちにチェックすべし。J-POPの未来がここにある。

2017年6月14日リリース『game of life EP』

初回生産限定盤[CD＋DVD]
￥1,500(tax out)　AICL-3344 ～ 3345
[CD]
M1 ゲイムオブライフ feat. ぼくのりりっくのぼうよみ
M2 歩道橋と走馬燈
M3 空と散歩
M4 ハローハローコンテニュー
M5 ゲイムオブライフ(To be, or not to be)
M6 ゲイムオブライフ ( ピアノ即興曲)
M7 歩道橋と走馬燈( ピアノ即興曲)
M8 ハローハローコンテニュー( ピアノ即興曲)
[DVD]
-ササノマリイLIVE with Slime Synthesizer-
M1 バイバイ
M2 タカラバコ
M3 透明なコメット