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星野源の原点と呼ばれるバンド「SAKEROCK」とは?
星野源が15年間、学校の同級生と共に活動していたSAKEROCK。ジャンル不明な上、複雑でタイトなリズム構成なのに、不思議と肩の力の抜けた雰囲気の音楽が魅力的です。浜野謙太のトロンボーンの音も、まるで歌声のよう。解散してからも、聴く人の心をひきつけてやまないバンドとなっています。
YOUTUBEに集まる「もっと早く出会いたかった」という声
「こんな素晴らしいバンドにもっと早く出会いたかった。」
「もっと早く知りたかった、というのは最近の星野源ファン的流行語大賞に輝く」
You Tubeに最後に投稿された公式動画、SAKEROCK / SAYONARA 【Music Video】のコメント欄にはその解散を惜しみながら、このような言葉が数多く寄せられています。その中には、ドラマでの活躍から星野源を知り、過去をさかのぼるようにして、SAKEROCKに行き着いたというファンの姿も見受けられます。
2015年の6月に解散し、現在はメンバーそれぞれが自らの活動に邁進しているSAKEROCK。あらためて、このバンドは一体どのような音楽を残したのか、彼らの残した足跡から辿ってみましょう。
肩の力が抜ける、優しい音楽の美学
SAKEROCKは器楽曲中心のインストゥルメンタルバンドです。メンバーは、星野源(ギター・マリンバ)、伊藤大地(ドラムス)、浜野謙太(トロンボーン、スキャット)、田中馨(ベース、2011年脱退)、野村卓史(キーボード、2002年脱退)の5人。リーダーである星野源が、自分の出身校である自由の森学園高等学校の卒業生からメンバーを集め、2000年に結成されました。
「JAZZやファンク、ロックやフィージョン、そこに昭和歌謡の雰囲気を取り入れたのがSAKEROCKだ」と言ったところで何の説明にもなりはしないでしょう。実際、彼らの音楽を一つのジャンルという枠に押し込めるのは難しく、意味がありません。ひとつ言えることがあるとすれば、SAKEROCKのつくりだす曲はそのどれもが、優しく、とても聴き心地のよいものばかりであることです。
そのことを実感しやすいのが『会社員と今の私』(アルバムでは『会社員』という曲単体で独立している)という曲。前半部は、マリンバとドラムのテンポの良いリズムが耳を打ち、トロンボーンの伸びやかな音がこちらを明るい気持ちにさせてくれます。しかし、曲の半ばから曲調は完全に変化。ギターやヴァイオリンといった弦楽器が前面に表れ、そこに哀愁漂うトロンボーンの音色が響きます。前半の曲調とは対象的に、優しくこちらを包むような柔らかさが表れ、曲全体に一層の深みが生まれているのです。PV内のドラマと重ね合わせると、さらに聴き応えのある楽曲であることを感じられるでしょう。
また、『ホニャララ』という楽曲からも、その良い意味での肩の力の抜けた雰囲気を味わうことができます。ギター、ベース、電子ピアノの軽快なリズムに、トロンボーンの力みを感じさせない音色が合わさって、ポップなのにまったりと聴けてしまう不思議さがあります。SAKEROCKの音楽は、その一曲を取り出してみても、とても複雑な構成のはずなのに、難解さを感じさせません。そこには、力を入れない、入れていたとしても表には出さないというSAKEROCK独自の美学を感じ取ることができるでしょう。
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