初めてRude-αを観たのは今年の夏。小さなライブハウスのステージの上で、バンドを従えた彼は力強くこちらを見据え、マイクを握り「絶対に武道館に立ちたい」と語った。
その瞬間「あ、それはきっと叶う」と確信に似た思いを抱いた。
おそらくその夢は形になるだろう。スターダムを駆け上がり、そして8千人を前にしても、きっと彼は、次の大きなヴィジョンを語っているだろう。そういう真っ直ぐな熱さが、Rude-αというアーティストの何よりの魅力だ。
沖縄出身、1997年生まれの21歳。高校1年生の時からストリートダンスを始め、高校2年生の時にはじめたラップをきっかけに音楽活動を開始。翌年「高校生ラップ選手権」に出場し準優勝したことで脚光を浴びる。
そういうバイオグラフィーから、今は彼のことを「ラッパー」という肩書きで紹介するメディアがほとんどだろう。フリースタイルのMCバトルのイメージを持っている人もいるかもしれない。しかし僕は、その枠組みの中にはおさまりきらない音楽的なポテンシャル、言ってしまえばロックスターとしての可能性を、Rude-αの音楽の中に感じる。
というより、ドレイクやチャンス・ザ・ラッパーが象徴するように、海外のポップ・ミュージックにおいてラップと歌の境界線は急速になくなってきている。歌うようにラップし、ラップするように歌うラッパーやシンガーが当たり前にヒットチャートを賑わせている。さらには、ポスト・マローンや急逝したXXXテンタシオンを筆頭に、ロックの精神性とエモーションをルーツに持つラッパーがブレイクし脚光を浴びるようになっている。
Rude-αを一目観て感じたのは、そういう「ドレイク以降」「ポスト・マローン以降」のロックスターが、いよいよ日本から登場しつつある、という予感だった。
当サイトに掲載された記事でも、彼は韻シストやSTUTSなど日本のヒップホップ・アーティスト、アース・ウィンド&ファイアーやスティーヴィー・ワンダーや、ディアンジェロなど海外のブラック・ミュージックのレジェンドに並び、自身のルーツにUAやTHE BLUE HEARTSを挙げている。特にTHE BLUE HEARTSについては「青春の歌」「僕にとってのヒーロー」と語っている。
その思いは作品の中にも表れている。2018年2月にリリースされたEP『20』の収録曲「Train」の歌詞には、THE BLUE HEARTSへのオマージュを込めた《Train Train 未来は僕の手の中》というラインもある。
Rude-α “Train” (live ver)
時代やスタイルは違うけれど、かつて80年代にTHE BLUE HEARTSが見せてくれたようなロマンと似たような匂いを、今のRude-αに感じるのだ。
そしてそれは、彼の地元の先輩であるORANGE RANGEが00年代に彼に見せたロマンとも共通したものだろう。つまりは、誰かの思い、誰かの憧れを受け止める器としての「ヒーロー」を引き受ける覚悟と才能を持ったアーティストの系譜を受け継ぐ存在、ということだ。
2016年に沖縄から東京に活動拠点を移し、プロデューサーや新たな仲間との出会いを刺激に音楽性の幅を広げてきたRude‐α。2017年からはバンド編成でのライブ活動をスタートし、自主企画ライブイベント「TEEDA」を立ち上げて幅広いジャンルのアーティストとステージを共にしてきた。
そして2018年は、彼にとってそうした経験がいよいよ実を結びつつあるタイミングとなった。2月には上京後初のEP『20』をリリース。9月には配信シングル「Take me back」をリリースし、10月24日には初ワンマンライブ「1st ONE MAN LIVE“21”」を開催した。
Rude-α “Boy Meets Girl” (Official Music Video)
そのライブでも披露されたのが、11月28日に配信リリースされた新曲「Boy Meets Girl」。軽快なブレイクビーツとホーンセクションが印象的なポップソングだ。一聴して感じるのはニュー・ジャック・スイングのテイスト。近年ブルーノ・マーズがリバイバルさせたことで再び脚光を浴びた80年代後半から90年代初頭にかけてのブラック・ミュージックのスタイルで、ファンクのグルーヴとソウルフルなヴォーカル、そしてヒップホップの流儀が同居するスタイルを踏襲している。
「Boy Meets Girl」ジャケット写真
ただ、曲の中間部で横ノリのグルーヴが切り替わり、トリプレット(三連符)のフロウとビートが飛び込んでくるところなどは、2018年の今のポップ・ミュージックのモードを絶妙に取り入れたセンスと言えるだろう。
歌詞で描かれるのは、混雑する山手線、忙しなく人が行き交う渋谷駅の情景。その喧騒から二人だけの世界に抜け出す恋人たちが主人公の曲だ。9月にリリースされた「Take Me Back」は別れた女性への後悔を歌う失恋ソングだったが、こちらはいわば運命の出会いをモチーフにしたラブソング。こうした類の曲は彼のディスコグラフィーの中ではあまりなかったが、この先はこうしたポップで軽妙なフィーリングも大きな武器になっていくだろう。
ただ、やはりRude-αの魅力の本筋は、彼の「熱量」にあると思う。10月のワンマンライブでは、この曲を披露したあと、本編ラストの「Train」を前に、彼はこんな風に告げていた。
「お前らの夢も希望も、俺が武道館まで持っていくから」
SNSが普及し、誰でも情報発信することが可能になった反面、誰もが「自分がどう見られているか」を先回りして察するようになった今の時代。だからこそ、Rude‐αというアーティストが持っている愚直なまでの真っ直ぐさはとても貴重だ。彼は武道館に立つことを目標に公言している。ただ、それは単に売れたいとか成功したいという欲というよりも、目の前にいる誰かの憧れを本気で引き受けるヒーローになりたいという意気から生まれた願いなのだろう。
今の時代、それはとても輝かしいものだと思う。
Rude-α presents TEEDA vol.5
2019年3月3日(日)
会場:渋谷WWW X
開場/開演 17:15/18:00
2019年3月23日(土)
会場:阿倍野ROCKTOWN
開場/開演 17:30/18:00
※ゲストアーティスト近日発表予定
Rude-α Official Site
Rude-α Instagram
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