フリースタイルバトラーからリリースアーティストへの脱却
R-指定は『UMB』を2連覇した後の2014年に、1stアルバム『セカンドオピニオン』を発表。そこにはMCバトルで見せる攻撃性やカリスマ性とは真逆の、内向的で卑屈なひとりの青年の苦悩が綴られていた。R-指定は常々、自らに誇れる「バックボーン」や「パーソナリティ」がない故の劣等感を口にしていた。それらはアルバムに収録されている『I’m a liar』や『ルサンチマン』などの曲に如実に現れている。
R-指定 – R.I.P. / I’m a liar –
(R-指定『R.I.P / I’m a liar』MV。絶対王者として追われる立場の葛藤や苦悩がリリックから感じられる)
また、ターンテーブリスト&トラックメイカーのDJ松永とのユニットCreepy Nuts名義で2015年にリリースされた1stシングル『刹那』では、R-指定が抱える「ルサンチマン精神」が頂点に達している。
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / 刹那 【Lyric Video】
(Creepy Nuts『刹那』MV。「この椅子が欲しけりゃくれてやる」というR-指定しか吐けないリリックの重み)
しかし、Creepy Nutsとして翌2016年に発売された1stミニアルバム『たりないふたり』は、それまでリスナーが描いていたR-指定像を裏切る快作だった。『みんなちがって、みんないい。』という曲の中で、某HIPHOPまがいのグループをパロディしつつ、リリックの最後でR-指定はこう声を上げる。
メンドクセー
マジ どーだってイイ
人は人 俺は俺
他人のあら探しばかりしてるヤツはダサい
くだらない みんな同じじゃつまらない
まーまー 要するに
みんなちがって、みんないい!!
そこにはMCバトルの王者としての重圧や、自身の劣等感から解放された「等身大」のR-指定がいた。
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / みんなちがって、みんないい。【MV】
(Creepy Nuts『みんなちがって、みんないい。』MV。MVに登場するファーストアルバムの名義は「クリ−ピーナッツベイビーズ」)
また、リード曲である『合法的トビ方ノススメ』は、2016年のYouTubeでの日本語ラップMV再生回数において第1位を獲得(3,600,000views)。また、Creepy Nutsの公式Twitterでタワーレコード渋谷店における2016年の日本語ラップCDで売上1位だったことが発表されるなど、リリースアーティストとしてもR-指定がリスナーの支持を得ていることが証明された。
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / 合法的トビ方ノススメ 【MV】 Clean Ver.
(Creepy Nuts『合法的トビ方ノススメ』MV。「溜めに溜めたフラストレーション!」から始まる開放感抜群の一曲)
さらに、R-指定はソロとしても2016年の話題をさらった。DJ RYOWが名古屋の帝王と呼ばれた故TOKONA-Xの名曲を復活させた『ビートモクソモネェカラキキナ 2016(Remix)』で、般若&漢 a.k.a GAMIと肩を並べて圧巻のラップを披露している。R-指定の先人たちへの尊敬の念や、日本語ラップへの深い愛が感じられる一曲だ。
DJ RYOW『ビートモクソモネェカラキキナ 2016 REMIX feat.般若, 漢 a.k.a. GAMI & R-指定』【Music Video】
(DJ RYOW『ビートモクソモネェカラキキナ 2016 REMIX feat.般若,漢a.k.a.GAMI &R-指定』MV。『フリースタイルダンジョン』の最強モンスター3人が集結)
苦悩や葛藤の末に、ネクストレベルへ進もうとしているR-指定。2017年の2月1日には、Creepy Nutsの2ndミニアルバム『助演男優賞』がリリースされる。すでに公開されている同タイトル曲のMVは、その批評性&パロディ性が業界内外で早くも高い評価を得ている。果たして彼らは「オリゴン1位」を獲得できるのか? これ以上R-指定に重圧を掛けるのは酷だが、それでも期待してしまう。R-指定はJ-POPのフィールドにも切り込んでいける可能性を持つ、数少ないラッパーなのだから。
Creepy Nuts(R-指定&DJ松永) / 助演男優賞【MV】
(Creepy Nuts『助演男優賞』MV。音楽業界や現代社会への風刺を、コンプラギリギリ(?)でぶちかます痛快作)
※Creepy Nuts:オフィシャルサイト
※DJ松永:オフィシャルTwitter
Text_yuji RASCAL nakamura(NaNo.works)
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